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婚約破棄宣言
8.従兄ユーロフィルス
しおりを挟むローゼはその名の由来ともなった、薄紅色の特徴のある金髪であったが、ユーロフィルスは明るい場では黄金色に、暗い場所では金茶に見える濃い色の金髪だ。
瞳の色は揃いで淡い菫色である。
顔立ちはさほど似てはいないが、ローゼは父親であるルーベルト侯爵の母親に似て、ユーロフィルスはローゼの母親の姉である自身の母に似ているので、共通点は真珠のように白い肌と明るい菫色の瞳くらいである。
並んでも、すぐには従兄妹同士であるとは気がつかないかもしれない。
「申し訳ありません、わたくしのパートナーを買って出て頂いたせいで、どなたとも交流しないままお帰りになる事に…… もし、なんでしたら、後で馬車を寄越しますから、会場に戻られては」
「おお、なんと悲しいことを言うのかな、我が従妹姫は」
一度大袈裟に両手を広げ、片手で顔を覆って嘆くポーズをとったあと、ローゼに並んで立ち、肩を抱き寄せてエントランスへと促した。
「君には、この従兄が、非道な婚約者に、多くの高位貴族が見守る中で、これまでの努力を理解されずに侮辱され、更には婚約を破棄された、傷心の従妹姫をひとりで帰らせて、自分は夜会を楽しむような男だと言うのかい? 全く騎士道に反するね」
「ごめんなさい、お従兄さま。わたくしが浅慮でしたわ」
「解っているよ。私が、自分のために夜会を楽しむことなく去らねばならないと気を使ってくれているのだろう? 心配ないよ。どうせ今日は、アレの噂話で実のある内容は聞けないだろうし、アレの辱めに傷ついた心麗しき従兄妹という体でいた方が、何かとやりやすい」
その何か、とは、アレに対する何かだろうと見当をつけて、ローゼはため息をついた。
「わざわざ策を講じる価値もない小物ですわ。お手柔らかにお願いしますね、お従兄さま」
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