幸運のスニャイムと遊び人Lv.1

不思議なダンジョンの奥には

じゅ。『大きな白いおキツネさま、三つ首の巨大蛇、大きな白いフクロウさんが睨み合っていた』──こういうも、三つ巴って言うのかな？

　　　　　🦉

　大きな白いおキツネさま、三つ首の巨大蛇、ロック鳥ほどではないにしても大きな白いフクロウさんが、睨み合っていた。

　ここのフロアボス、白い大きなオコジョさんは、おキツネさまに前脚で長い胴体を踏まれて動けなくなっている。

「コハクちゃんの魔道具マスター技能スキルも、こう言うときは困ったちゃんねぇ」
「ひとりだけって出来なかったのか？　幻獣クラスの魔獣が三体も、扱いきれないだろうに」

　いえ、そんな素敵技能スキルは持ち合わせてませんよ？
　それに、さんにんも喚んだ憶えはないんだけれど。

《じゃが、喚ばれた以上は、なんぞ契約履行せんと、帰れんぞぇ》
《そのイタチを手放せば、丸呑みしてしんぜようほどに、すぐにでも還るガノ》
《白面のが押さえた獲物を横取りしても面白ぅないわの。これ、小娘よ、何か新たに役目を振らんか》

　えー？　今は、そのオコジョさんを戦闘不能にしてくれたらそれでよかったんだけどな。

　とりあえず、オコジョさんを止めて、押さえてくれたのは後の二人が『白面の』と呼んでいるおキツネさまなので早い者勝ちと言うことで、おキツネさまに先の取り引きどおり、オコジョさんを止めるのに使ったエネルギーと、私が焼いたお菓子をあげることにする。

　お菓子をぺろりと口に入れ、丁寧に咀嚼する。

《ふむ。美味いの。人の菓子が美味いとはおかしな話じゃの？　そなた、菓子を作るとき、何かしたんかぇ？》
「別に？　いつも通りだよ」
《じゃが、先日そこの三つ首とやり合った時の創が僅かに残っておったに、今ので消え失せたわぇ》

「コハクちゃんのお菓子は、回復薬にもなるのよ」

　アネッタさんの言葉に、にいっと口が裂けるほど笑って、おキツネさまは、残りのお菓子を胸のふさふさの中にしまった。

《ならば、また何か怪我を負ったときのために、残りは取っておくとするかの》

　そう言って、今度は私のほっぺをぺろりと舐める。

　私の身長より大きなお顔が近づいてきて、一瞬、契約無視して食べられちゃうのかとビックリしたのは内緒ね。

《そなたのエナジー、舐め取らせて貰ったんぇ》

「ああ。そういう約束だもんね」
《実に、いいお味じゃ。また、喚んでたもれ》

　来た時と同じように、バリバリと雷を放ってシュンと姿を消した。