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不思議なダンジョンの奥には

なな。『金属が軋み合う音と薄い金属板を無理矢理引き裂く音とが混じったような、耳と歯がゾワッとする爆音と共に辺りに雷が幾筋も落ちる』──誰?

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     🦊

 これはお祖母ちゃんの造ったものじゃなくて、夜店で買った(お代金払いそびれたから貰った?)『妖精王の杖エルフィールスタッフ』で、使う人の能力に合わせて、妖精を召喚するもの、だと思う。違う効果もあるのかもしれないけど、今の所、森人にひれ伏されたり妖精さんが出て来てくれたりするだけだ。

 ただ振るだけじゃダメかもしれないので、いつものように、くるくると回りながら、杖を振り回して踊る。

 踊る踊る踊る踊る。

「オコジョさんの天敵な人、来て欲しいかなっ」

 決まった呪文がある訳でなく(あるかもしれないけど)思った通りに願いを込める。

「コハクちゃん、それ、ヤバくない?」

「え? なんで?」

 と、思ったら、

 バリバリバリッ

 金属が軋み合う音と、薄い金属板を無理矢理引き裂く音とが混じったような、耳と歯がゾワッとするような爆音と共に辺りに雷が幾筋も落ちる。

「今度はなんだぁ?」

 白く輝く白金しろがねの毛。スッとした細面に緋色の宝玉のような双眸。顔を埋めたくなるようなツヤサラの毛並みは肩から胸の辺りにかけてフッサフサ。何より目をひくのは⋯⋯

「九尾、だと?」

 7つ⋯⋯8つ、9つあるふさふさの尻尾は、ここに居る幻獣達の誰よりも格上であるあかし

 暗いダンジョンの中で眩しいほどの綺麗な細いワンコ⋯⋯じゃなくて、キツネさんは、細くて上品な前脚をぺろりと舐めると、私と呆気にとられて動きを止めたオコジョとを見比べた。

われに何用か? 小さきものよ》

 直接私の頭の中に響く、落ち着いたやや低めの声は、女性と思うけれど男性のようでもある。

「え、と。私の『妖精王の杖エルフィールスタッフ』に応えて来てくれたのなら、あのオコジョさんを戦闘不能にするのを手伝ってくれないかなーって⋯⋯」

《ふむ。イタチの仲間かぇ。多少はやるようだがの》

 真っ白のおキツネさまは、にぃっと笑みを浮かべた。



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