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不思議なダンジョンの奥には

ろく。『とんでもなくすばしっこい。見た目がテンやオコジョっぽいだけある』──動きが早く体捌きもキレッキレでこちらの攻撃が入りません

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     🦦

 とんでもなくすばしっこい。見た目がテンやオコジョっぽいだけある。
 (尾を数えなければ)お尻までだけでも七~八頭身はある長い胴体が器用に降り曲がったり捻ったりしながら、壁と言わず天井と言わず、あらゆる所を走り蹴り、飛び回るのだ。
 しかも、尾をプロペラのように振り回して少しの間なら滑空もする。
 ネコ科の多くの動物が、滑走中やジャンプ中に尾を振ってバランスを取るので、この子もそうなのだろう。

「なかなか捕まえられないな⋯⋯」

 捕獲という意味ではなく、太刀筋をあてられないという意味で、カイルロッド様が呟く。
 フィルタさんはそれなりに当ててはいるけれど、効果は少ない。

 滑らかで高級毛皮の代表のようなその毛並みは、柔らかそうなのにボアのように魔力を帯びて防御力が高いらしく、アネッタさんの魔法も、フィルタさんの剣を振り下ろす衝撃波も撥ね返し、物理的に斬りつけても刃が立たず、攻撃は表面を上滑りしている。

「確かに、斃すことに一種の罪悪感のようなものは涌くな。女性ばかりのパーティだとツラそうだ」
「男性だって動物好きは多いと思いますよ? ラジエさんも生物を手懐ける専門家じゃないですか。アレフやクリスも、可愛い生き物は好きですよ」
「そうなのか? あの、いつも冷静に取り澄ましたクリスが、可愛い物好き⋯⋯」

 なぜか、クリスが可愛いもの好きな事を漏らしてしまったら、カイルロッド様の琴線に触れたらしい。肩で笑いながら、大きなオコジョさんと戦っている。
 後で「バラしたな」ってクリスに怒られるかな。

 とりあえず、私に出来ること、やってみようかな。

 イチゴのポシェットから、『妖精王の杖エルフィールスタッフ』を取り出して、構えた。



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