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不思議なダンジョンの奥には

いち。『六匹のカーバンクルちゃん達は、私の頭の上や肩、腕に陣取って、額の紅い宝石を輝かせ、尻尾を膨らませていた』──可愛いけど威嚇してるの?

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     🐿

 六匹のカーバンクルちゃん達は、私の頭の上や肩、腕に陣取って、額のルビーかスピネル、ガーネットなどに似た(それぞれ個体差はある)紅い宝石を輝かせ、尻尾を膨らませていた。

「コハクちゃんのために飛んで来たのなら、健気ねぇ。勝算はあるのかしら?」

 この子達は、名前をつけてもアイテム化しなかったから契約関係がある訳じゃないし、主従関係でも飼い主とペットでもないけれど、私の魔力だか霊気だかを好んで舐めて育っているので、愛着はあるし懐いてくれてると思う。

 それでも何らかの絆はあるようで、この子達の噴き出す火や風などの強い魔力は、私には何ら悪い影響はない。熱くもないし、冷たくもない。
 その辺は、チルちゃんやチットちゃんと同じである。

 私の体のあちこちに陣取ってベヒモスを威嚇しながら、火焰カエンちゃんは焱を吹き上げ、フウちゃんは小さなつむじ風を幾つも発生させ、ルクちゃんはランタンよりも明るく光り、マナちゃんのまわりに石礫が幾つも発生して滞空し、スイちゃんはまわりの気温を下げて氷雪を作り出し、ノクスちゃんは黒い陽炎や光りすら飲み込む闇の塊を生み出す。

 それらをどうするのか。たぶん、あのベヒモスにぶつけるつもりなんだろうけど、同じ幻獣同士、多少は効果あるのかな?

 みんなの意識がベヒモスの眉間の辺りに集中しているのが解る。

 私の背後直ぐの空間で、チリチリパリパリと、嫌な音がして空間の歪みから電撃が飛び出す。

 カーバンクルお母さんだ。

 お母さんが甲高い声で鳴くと、六匹の子供達は一斉に、それぞれの魔力が生み出したモノを、ベヒモスの眉間に向けて放った。

 サッと避けられたり跳ね返されたり、魔力として吸収してしまう事も心配したけれど、お母さんの叫び声にはスタン(硬直、失神、麻痺する事)効果があるみたいで、ベヒモスは身動ぐことなく真面まともに、チビちゃん達の焱・真空刃・石礫の雨・光の槍、闇の槍が眉間に突き刺さる。
 渦潮のような水流が次第に凍ってフウちゃんとスイちゃんの合わせ技の風雪に替わり、カエンちゃんの焱がフウちゃんの風に煽られて炎の竜巻になり、マナちゃんの石礫を含んでスイちゃんの水流と混ざり合い土石流となってベヒモスに押し寄せる。

 止めは、お母さんの雷撃が何本もベヒモスの角と眉間と鬣に落ち、天鵞絨ビロードのような牛革の巨大は燃え上がった。



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