245 / 276
チーム再び!!──コハクちゃんを中心に
じゅうよん。『まばらに生えていた木が増えてきて、林に差し掛かった頃、呼び止められた』──こちらは無断で私有地に侵入しているのだから当然か
しおりを挟む
🛂
まばらに生えていた木が増えてきて、林に差し掛かった頃、呼び止められた。
まあ、許可なく私有地に入ってるのだから、当然と言えば当然か。
「そこの馬車、止まりなさい! 誰の許しを得て入って来ているのか。ここは伯爵様の直轄地だぞ」
騎士にしては洗練さがなく一兵士にしては落ち着いた感じの、金属製の軽鎧を身に着けた男が、騎馬で近寄る。長剣を佩き、手には長槍を構えている。
「ああ、ハリオルト。わたしだ。済まないね。急いでいて、今は直接向かわせてもらえないかな。伯爵には、後で何があったかは報告させてもらうから」
「カイルロッド様でしたか。お話は伺っております。伯爵様もカイルロッド様はお通ししていいと。ただ、公爵家の馬車ではなかったので気がつきませんでした」
「いいよ。こちらも礼を欠いているのは重々承知だよ」
カイルロッドが幌の外へ顔を出し二言三言会話して、すぐに開放される。
「馬車が伯爵領に入った時点で、伯爵には一筆送っておいたんだよ」
「え? いつの間に?」
幌の内側で、カイルロッドとアネッタと共にいたのだ。いつそんな暇があったというのか。
「これだよ」
さすがは公爵家の、というべきか。魔道書間(風)を見せてくれた。
風霊に感染させた特殊な紙に文書を書きつけて、書紙につけられた小妖精が書いた人の想う相手に届けるという、妖精魔法の一つだ。ちなみに、宛先に届けたら、契約は完了なので、その場で妖精は妖精界に還ってしまう。使い捨てだ。他に(水)や(地)がある。
そして、そんなに安くはない。それを短時間に2枚使い、まだ予備があるという。
「関所はなくても一応領地を跨ぐからね、ヒッコリス領に入ってすぐに一度、伯爵家の敷地内に入りそうだと思った時にもう一度、送ってあったんだよ」
アネッタの方へ視線を送ると、頷いた。
確かに、領地をまたぐ瞬間と、この草原へと続く道を進み橋を渡る前に、一度幌から顔を出して、状況を確認していた。その時か。
「チルちゃんが何も言わないって事は、不穏なものではないんだろうって、放っておいたの。一応、行き先はどちらも伯爵邸だったわ」
「いやぁ、行き先まで把握されてたのか。ははは」
「当然でしょう? 疑うようで悪いですけれど、カイルロッド様がご本人である事は間違いなさそうですけれど、あちら側でないという確証はございませんの。内容までは存じ上げませんけれど、宛先は確認させていただきましたわ」
そうだったのか。私は、魔導ゴーグルがなければ、魔法はわからないからな。そのゴーグルをもってしても、現在チル殿が追っている魔道の痕跡は、私には見えない。
〈どうやら林から奥ハ、向こう側の・テリトリーみたいダネ。結界に似た魔道的なセンサー・ニ、馬車が引っかかったヨ。とりあえず、魔法障壁は張ったカラ、物理攻撃来たら頼むヨ?〉
まばらに生えていた木が増えてきて、林に差し掛かった頃、呼び止められた。
まあ、許可なく私有地に入ってるのだから、当然と言えば当然か。
「そこの馬車、止まりなさい! 誰の許しを得て入って来ているのか。ここは伯爵様の直轄地だぞ」
騎士にしては洗練さがなく一兵士にしては落ち着いた感じの、金属製の軽鎧を身に着けた男が、騎馬で近寄る。長剣を佩き、手には長槍を構えている。
「ああ、ハリオルト。わたしだ。済まないね。急いでいて、今は直接向かわせてもらえないかな。伯爵には、後で何があったかは報告させてもらうから」
「カイルロッド様でしたか。お話は伺っております。伯爵様もカイルロッド様はお通ししていいと。ただ、公爵家の馬車ではなかったので気がつきませんでした」
「いいよ。こちらも礼を欠いているのは重々承知だよ」
カイルロッドが幌の外へ顔を出し二言三言会話して、すぐに開放される。
「馬車が伯爵領に入った時点で、伯爵には一筆送っておいたんだよ」
「え? いつの間に?」
幌の内側で、カイルロッドとアネッタと共にいたのだ。いつそんな暇があったというのか。
「これだよ」
さすがは公爵家の、というべきか。魔道書間(風)を見せてくれた。
風霊に感染させた特殊な紙に文書を書きつけて、書紙につけられた小妖精が書いた人の想う相手に届けるという、妖精魔法の一つだ。ちなみに、宛先に届けたら、契約は完了なので、その場で妖精は妖精界に還ってしまう。使い捨てだ。他に(水)や(地)がある。
そして、そんなに安くはない。それを短時間に2枚使い、まだ予備があるという。
「関所はなくても一応領地を跨ぐからね、ヒッコリス領に入ってすぐに一度、伯爵家の敷地内に入りそうだと思った時にもう一度、送ってあったんだよ」
アネッタの方へ視線を送ると、頷いた。
確かに、領地をまたぐ瞬間と、この草原へと続く道を進み橋を渡る前に、一度幌から顔を出して、状況を確認していた。その時か。
「チルちゃんが何も言わないって事は、不穏なものではないんだろうって、放っておいたの。一応、行き先はどちらも伯爵邸だったわ」
「いやぁ、行き先まで把握されてたのか。ははは」
「当然でしょう? 疑うようで悪いですけれど、カイルロッド様がご本人である事は間違いなさそうですけれど、あちら側でないという確証はございませんの。内容までは存じ上げませんけれど、宛先は確認させていただきましたわ」
そうだったのか。私は、魔導ゴーグルがなければ、魔法はわからないからな。そのゴーグルをもってしても、現在チル殿が追っている魔道の痕跡は、私には見えない。
〈どうやら林から奥ハ、向こう側の・テリトリーみたいダネ。結界に似た魔道的なセンサー・ニ、馬車が引っかかったヨ。とりあえず、魔法障壁は張ったカラ、物理攻撃来たら頼むヨ?〉
0
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる