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魔族の小瓶 ── 私の手にはおえそうにありません!?
きゅう。『冒険者協会の、案内カウンターに向かい、安価でセキュリティーのよい宿を紹介してもらう』──必要日数も判らないし機密保持から個室をとる
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🛏
冒険者協会の、依頼受付ではなく、雑多な案内カウンターに向かい、この辺りで安価でセキュリティーのよい宿を紹介して欲しいと頼むと、プラチナカードは信用度が高いのか、幾つか紹介してくれた。
ギルドの近くの冒険者達の定宿に使われるお宿と、街の商店などが多く立ち並ぶ繁華街のお宿。
もう一つ、貴族や大店の経営者など裕福な人達が住む区画の近くにワンルーム形式の小屋が複数立ち並ぶコテージ村のような宿。裏には森があって、キャンプみたいな事をして楽しむ人用なのだけど、個室で静かなところを希望する人は、利用するらしい。
呪術士と揉めたり、情報を纏めたりするのに、まわりと離れた宿がいいかもしれない。
そこの一つを借りることにして、お代金は、最初に一泊分、紹介料と一緒にギルドの預金から支払い、残りは滞在日数に応じて、引き払う時に、コテージ村の経営者に全額支払うことになった。
キールさんの謝礼金があるから当分は大丈夫そう。
「用は済んだのかい?」
「はい。では、行きましょう」
この瓶の中の令嬢は、侯爵家の三人の令息の誰の婚約者なのか。まずはそれを知りたい。
彼に見せればすぐに判るだろうけど、捕らえられた理由や経緯によっては、令嬢の経歴に傷となって破断になったり、お家に迷惑がかかるかもしれない。迂闊には見せられなかった。
「公爵様のお話では、カイルロッドさまはご長男で、先程の方は三男、ですよね。いつも領地に?」
「そうだね。わたしは領地を継ぐので王宮には出仕しなかったんだ。今は貴族学校に行っている弟は、卒業後、王宮にて仕事を持つことになるだろうね。君も会った下の弟は、まだマナーや一般常識などを勉強中だ。あの歳では遅いのだがね、騎士になると言って、鍛錬ばかりで勉強が進まなくてね」
そうは言っても可愛がってらっしゃるのだろう、悪い表情ではない。
「すでに領地運営に関わってらっしゃるとお聞きしてます。失礼ですが、奥様は? ご挨拶してませんでした」
「ふふ。それがね、貴族なのにお恥ずかしながら、まだ独身なんだよ」
「まあ、アレフもクリスもエドガーも、三人揃って婚約者もいなかったですけど⋯⋯」
彼らは、冒険者としての活動に重きを置いていた。
クリスは三男だから爵位を継ぐわけじゃないので、どうしても結婚したい相手でもできない限り婚約者を持つこともしないと言っていた。
お祖母様が先代王妹だと言うのもあって、血統問題を複雑にしたくないとも。アレフも。でも、アレフは公爵家の長男なのに⋯⋯いいのかな。
エドガーはいずれ冒険者をやめて騎士団に戻ったら、男爵家の跡取りとして結婚するって言ってた。話を聞いたときは、いつまでもあのままじゃいられないんだなと、寂しく思ったっけ。
「わたし⋯⋯僕もね、婚約者もいないんだよ。経済学や貴族法を学ぶのに忙しくてね。婚約しても、相手の令嬢を形だけ繕っておざなりにしておくのは忍びなくてね、ともに歩みたいと思う女性に出会えなかったのもあるかな?」
それでいいのか、公爵家嫡子の長男さま。
とにかく、瓶の中の令嬢は、カイルさまの婚約者ではない事は解った。
冒険者協会の、依頼受付ではなく、雑多な案内カウンターに向かい、この辺りで安価でセキュリティーのよい宿を紹介して欲しいと頼むと、プラチナカードは信用度が高いのか、幾つか紹介してくれた。
ギルドの近くの冒険者達の定宿に使われるお宿と、街の商店などが多く立ち並ぶ繁華街のお宿。
もう一つ、貴族や大店の経営者など裕福な人達が住む区画の近くにワンルーム形式の小屋が複数立ち並ぶコテージ村のような宿。裏には森があって、キャンプみたいな事をして楽しむ人用なのだけど、個室で静かなところを希望する人は、利用するらしい。
呪術士と揉めたり、情報を纏めたりするのに、まわりと離れた宿がいいかもしれない。
そこの一つを借りることにして、お代金は、最初に一泊分、紹介料と一緒にギルドの預金から支払い、残りは滞在日数に応じて、引き払う時に、コテージ村の経営者に全額支払うことになった。
キールさんの謝礼金があるから当分は大丈夫そう。
「用は済んだのかい?」
「はい。では、行きましょう」
この瓶の中の令嬢は、侯爵家の三人の令息の誰の婚約者なのか。まずはそれを知りたい。
彼に見せればすぐに判るだろうけど、捕らえられた理由や経緯によっては、令嬢の経歴に傷となって破断になったり、お家に迷惑がかかるかもしれない。迂闊には見せられなかった。
「公爵様のお話では、カイルロッドさまはご長男で、先程の方は三男、ですよね。いつも領地に?」
「そうだね。わたしは領地を継ぐので王宮には出仕しなかったんだ。今は貴族学校に行っている弟は、卒業後、王宮にて仕事を持つことになるだろうね。君も会った下の弟は、まだマナーや一般常識などを勉強中だ。あの歳では遅いのだがね、騎士になると言って、鍛錬ばかりで勉強が進まなくてね」
そうは言っても可愛がってらっしゃるのだろう、悪い表情ではない。
「すでに領地運営に関わってらっしゃるとお聞きしてます。失礼ですが、奥様は? ご挨拶してませんでした」
「ふふ。それがね、貴族なのにお恥ずかしながら、まだ独身なんだよ」
「まあ、アレフもクリスもエドガーも、三人揃って婚約者もいなかったですけど⋯⋯」
彼らは、冒険者としての活動に重きを置いていた。
クリスは三男だから爵位を継ぐわけじゃないので、どうしても結婚したい相手でもできない限り婚約者を持つこともしないと言っていた。
お祖母様が先代王妹だと言うのもあって、血統問題を複雑にしたくないとも。アレフも。でも、アレフは公爵家の長男なのに⋯⋯いいのかな。
エドガーはいずれ冒険者をやめて騎士団に戻ったら、男爵家の跡取りとして結婚するって言ってた。話を聞いたときは、いつまでもあのままじゃいられないんだなと、寂しく思ったっけ。
「わたし⋯⋯僕もね、婚約者もいないんだよ。経済学や貴族法を学ぶのに忙しくてね。婚約しても、相手の令嬢を形だけ繕っておざなりにしておくのは忍びなくてね、ともに歩みたいと思う女性に出会えなかったのもあるかな?」
それでいいのか、公爵家嫡子の長男さま。
とにかく、瓶の中の令嬢は、カイルさまの婚約者ではない事は解った。
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