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奇跡の少女 ── ギレウォッタ
じゅうろく。『突然、お前達がここに落ちてきた時は驚いたぞ?』──そう言って、ギルドマスターはソファで足を組み直す。余裕があったのはここまで
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🕎
「突然、お前達がここに落ちてきた時は驚いたぞ?」
そう言って、ギルドマスターはソファで足を組み直す。
「しかも、それぞれが仮眠室の寝台にきちんと寝かされる形でな。何かの儀式かと思ったわ。はははは」
「はぁ」
「お前たちは意識がなかったからな、知らんだろうが、キールがギルド前に突然現れたのと同じように、この部屋に空間の強烈な歪みの発生と、闇属性なのに神聖術という謎の強大魔法だ。魔神か何かが攻めてきたのかと焦ったぜ」
「はぁ」
「しかもギルドカードのログを確認したら、ラジエは一度死んでるって出てるし、何かのバグか?」
「まあ」
「なんだ、反応悪いなあ?」
「まあ、魔神ではありませんが、古代神に送っていただいたので⋯⋯ ラジエも確かに死にましたし」
「は?」
ギルドマスターが、戯けた表情だったのが、一度固まって、無表情になり、眉根を寄せて不審なもの、理解の出来ないものを見る目になる。
冥府の王が使う魔術だから闇属性だが、古代神の扱う術だから神聖術なんだろう。
ラジエも刈り取る者に斬られた時に、一度死亡判定が出てるんだろう。バグでも何でもない、事実だ。
ギルドに送ってもらって、人心地ついた所で、冥府の王と念話で繋がった時に送られた記憶なのだろう、だんだん頭の中の整理がついてきた。
「西濤の森が冥気に侵され、精霊が狂い、波濤の郷に被害が出た理由は、ロックストーヴ山の奥底に眠る、冥府の王の欠片が原因でした」
「ギレウォッタさん? もう一度、いいかな?」
「何度聞いても同じです。西濤の森全体が、瘴気に満たされ、冥の気も溜まり、動物達も精霊も、暴走していました。
瘴気と冥気が最も濃い特異地点を感知したのはロックストーヴ山の火口で、荒野の火山地だったのに大密林でした。不死者は無限増殖するし、生態系も狂っていましたが、冥府の王が歪みを正すと請け負ってくれましたので、順次平常に戻るはずです」
「ギ、ギレウォッタさんよ? 気のせいかな? さっきから、冥府の王とかって、何度も言ってるけど⋯⋯」
「気のせいでも私達の見込み違いでもありませんよ。本人と話しましたから。ロックストーヴ山の火口付近に、打ち捨てられた廃鉱を見つけました。中は魔法もトーチもランタンも灯りは無効化し、火山性有毒ガスと冥気と瘴気で、人間は立ち入れませんでした」
「いや、それでどうやって解決したの。聖職者0パーティでしょ? しかも人間は立ち入れないって、それじゃおかしいでしょ?」
ギルドマスターが、前のめりで訊いてくる。
まあ、私も体験しなければ、ここで聞くだけなら、鼻で笑っていただろう。それでどうやって解決したの、と。
「コハクが魔導道具で押し通しました」
「ああ⋯⋯」
「ギレウォッタさん!? なんか言い方おかしくないですか? ギルマスもなんで納得するんです!?」
ソファに深く座り直し、うんうんと頷くギルドマスター。
なんだ? もしかして、常識で理解出来ない不思議体験は『コハクがやりました』だけで通る、とか?
「突然、お前達がここに落ちてきた時は驚いたぞ?」
そう言って、ギルドマスターはソファで足を組み直す。
「しかも、それぞれが仮眠室の寝台にきちんと寝かされる形でな。何かの儀式かと思ったわ。はははは」
「はぁ」
「お前たちは意識がなかったからな、知らんだろうが、キールがギルド前に突然現れたのと同じように、この部屋に空間の強烈な歪みの発生と、闇属性なのに神聖術という謎の強大魔法だ。魔神か何かが攻めてきたのかと焦ったぜ」
「はぁ」
「しかもギルドカードのログを確認したら、ラジエは一度死んでるって出てるし、何かのバグか?」
「まあ」
「なんだ、反応悪いなあ?」
「まあ、魔神ではありませんが、古代神に送っていただいたので⋯⋯ ラジエも確かに死にましたし」
「は?」
ギルドマスターが、戯けた表情だったのが、一度固まって、無表情になり、眉根を寄せて不審なもの、理解の出来ないものを見る目になる。
冥府の王が使う魔術だから闇属性だが、古代神の扱う術だから神聖術なんだろう。
ラジエも刈り取る者に斬られた時に、一度死亡判定が出てるんだろう。バグでも何でもない、事実だ。
ギルドに送ってもらって、人心地ついた所で、冥府の王と念話で繋がった時に送られた記憶なのだろう、だんだん頭の中の整理がついてきた。
「西濤の森が冥気に侵され、精霊が狂い、波濤の郷に被害が出た理由は、ロックストーヴ山の奥底に眠る、冥府の王の欠片が原因でした」
「ギレウォッタさん? もう一度、いいかな?」
「何度聞いても同じです。西濤の森全体が、瘴気に満たされ、冥の気も溜まり、動物達も精霊も、暴走していました。
瘴気と冥気が最も濃い特異地点を感知したのはロックストーヴ山の火口で、荒野の火山地だったのに大密林でした。不死者は無限増殖するし、生態系も狂っていましたが、冥府の王が歪みを正すと請け負ってくれましたので、順次平常に戻るはずです」
「ギ、ギレウォッタさんよ? 気のせいかな? さっきから、冥府の王とかって、何度も言ってるけど⋯⋯」
「気のせいでも私達の見込み違いでもありませんよ。本人と話しましたから。ロックストーヴ山の火口付近に、打ち捨てられた廃鉱を見つけました。中は魔法もトーチもランタンも灯りは無効化し、火山性有毒ガスと冥気と瘴気で、人間は立ち入れませんでした」
「いや、それでどうやって解決したの。聖職者0パーティでしょ? しかも人間は立ち入れないって、それじゃおかしいでしょ?」
ギルドマスターが、前のめりで訊いてくる。
まあ、私も体験しなければ、ここで聞くだけなら、鼻で笑っていただろう。それでどうやって解決したの、と。
「コハクが魔導道具で押し通しました」
「ああ⋯⋯」
「ギレウォッタさん!? なんか言い方おかしくないですか? ギルマスもなんで納得するんです!?」
ソファに深く座り直し、うんうんと頷くギルドマスター。
なんだ? もしかして、常識で理解出来ない不思議体験は『コハクがやりました』だけで通る、とか?
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