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奇跡の少女 ── ギレウォッタ

しゅうよん。『えっと、あなたは、古代神様でいいんですよね?』──コハクは物怖じせずに訊ねていく

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「えっと、あなたは、古代神様でいいんですよね?」
〘人の子がそう呼ぶのは知っている。が、何を以てそう呼ぶのかは知らぬ。吾は冥府の番人インフェルニティルス。死者を眠らせ、さらな魂に導く者。生者と顔を合わす事はない〙

 やっぱり冥府の王インフェルヌスなのか。これは詰んだのか、打開出来たのか。

「その子、ずっと泣いてたみたいなの。あなたが核たる本体ってことは、その子はあなたの一部なの?」
〘そうだ。遥か昔に見失った、吾の苦悩〙
「苦悩?」

 コハクは、物怖じせずに訊ねていく。

 冥府の番人インフェルニティルスいわく、遥か昔に、自分の中で溜まってゆく死者の、他人を呪う気持ちや妬む気持ち、死んだ事に納得がいかず吐き続ける怨嗟に苦しみ、昇華することができなくて、切り離したものだという。

〘他の、感情を昇華させるのが得意な神に、処理を頼もうと思って、切り離したものの、見失ってしまったのだ〙

 以来、探していたが、まさかこんな真逆の環境、火山の奥にあるとは思わなかったと言う。
 冥府は氷と雪の極寒の地なのだとか。温度がないということは、絶対零度なのか? そこは零℃じゃないんだな。

「冥界も、暖かくしたら?」
〘暖かく?〙
「寒くて辛いから、いつまでも暗い気持ちでいるのよ。暖かくしてれば、楽しい事も思い出せるようになるでしょ?」
〘⋯⋯なるほど? 暖かく、か。やってみよう〙

 やってみるんかい!?

〘やはり、そのほうは面白いの。どうだ? 吾と冥府へ参らぬか? そのほうがおれば、退屈も鬱もなさそうだ〙
「⋯⋯」

 冥府がどんなところか、見てみたいとは思う。が、まだ死にたい訳じゃないしな⋯⋯
「よかったな、ギレウォッタ。神様にプロポーズされるなんて凄えじゃねえか?」
 うん、ラジエが起きてたらいいそうだな。⋯⋯て、え?

「らっラジエ、いつ起きた!?」
「ん~? 見失ってしまったのだ、くらいから?」
〘吾の一部が迷惑をかけた故、霊魂の傷は痕も消しておいた。ついでに、生気を奪う術を逆転してみたが、上手くいったようだな〙
「え~、俺、神様に治療してもらっちゃったの? すげー。ありがとうございまっす」

 死にかけても不死者アンデッドの仲間入りをしかけても、ラジエはラジエか。

〘まあ、死者になったらなったで、連れて行ってもよかったのだが「遠慮しますっ まだ、美味しいものたくさん食べたいので!」⋯⋯そうか、なら、そこの薄桃の髪の娘に感謝するのだな〙
「コハク?」
〘コハクが、そのほうの魂の傷を塞ぎ、魂魄が抜けるのを妨げ、この世に繋ぎ止めたのだ〙
「コハクちゃんには、何回も命を助けてもらったな、うん。恩人も恩人、大恩人だ」

〘吾がここにある吾が切り捨てた苦悩を見つけられたのも、コハクの歌と踊りゆえ。吾も感謝しよう。
 さて、この山とその周辺の歪みを直して、冥府へ帰ろうと思う。いつまでもいては、より歪んでしまうからな〙

 冥府の番人インフェルニティルスが、黒光りする球体を左手に収め、来た時と逆回しに床の裂け目に沈んでいく。

「ん~、じゃ、ひとつだけお願いしてもいいですか?」
「コハク!?」

 せっかくアレを持って帰ってくれるって言ってるのに、なんで引き止めるの~!?







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