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奇跡の少女 ── ギレウォッタ

じゅうさん。『踊っていたコハクも私達も、全員その場に膝をつく。揺れがひどくて、立っていられないのだ』──来ましたよ、御本尊が!!

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 踊っていたコハクも私達も、全員その場に膝をつく。揺れがひどくて、立っていられないのだ。

 古代神は、輪郭をブレされていたが、やがて形を崩し、黒い怨嗟と咒紋の圧縮した無数の粒に戻り、一箇所で纏まろうと飛び回るが、一つの個体にはなれず、蚊球のように集まって飛んでいる。

 グラスハープのような嘆く声は、いよいよ大きくなり、この空間の床のあちこちから噴き出す冥気がどんどん濃く溜まっていき、古代神の解けた粒子を包み込む。

「あれ、強化するんじゃないよな?」
「足りない力を増強してるの?」
「何に足りないっていうんだ。今でも敵わないのに」

 そう。フィルタもキールも、勿論、黙ってみているだけな訳ではなく、幾度となく剣を振るって衝撃波を飛ばしている。闘気や魔力も載せている。それでも傷一つつかないのだ。
 そんなとこだけ神様でなくていいんだけどね。

 冥気ヘルノが濃くなったものは、やがて形を取り始め、大きな左手の手首から先になった。

 手のひらの上で、怨嗟と咒紋の圧縮した粒子はなんとかまとまり、元の黒光りする球体に戻った。

 辺りに溜まっていた冥気ヘルノもすべて球体と左手に吸収され、空気は正常な状態になる。不思議な事に、瘴気も綺麗になくなった。

〘迷惑をかけた⋯⋯〙

 綺麗なバリトンで、誰かが謝るのが聴こえる。はて。
 フィルタとキールの声ではない。ラジエは倒れているしもっと高い。しかも、耳から聴こえて来るのではなく、頭に直接響いてくるのだ。
 すわ怪奇現象!? ではなく、この左手の声ヽヽヽヽだろう。そして、皆にも届いているようである。

「オニイサン、誰? その子の家族?」

 コハクが左手に訊ねている。本当に物怖じしない子だな。

〘家族、と言うより、本体、核と言うべきか〙

 本体!? ホンモノの冥府の王イルフェルヌス!?

 左手だけでこの大きさ? マジか! こんなものどうしたら⋯⋯

〘そのほうが代表者であるか?〙
「リーダーではないが、年長者ではあるな」

 短い人の人生の中で、祀る神に神聖術を教わる聖職者や神の声を聴く神子以外で、直接神に話しかけられる者が何人いるのか。まさか、自分がそのひとりになるとは。人生何があるかわからんな。

〘そのほうは面白い思考回路をしておるな。興味深いが、吾がいつまでもここにいると世界に歪みができる故、まずは優先事項から行こうか〙
「は、はは。ソウデスネ」

〘まずは謝罪させてもらおう。此度は、吾の一部が迷惑をかけて済まなんだ。責任を持って、この山の歪みは直させてもらおう〙
「あ、いや、このロックストーヴ山もだけど、一番困ってるのはふもと西濤にしなみの森一帯で、波濤はとうの郷にも人的被害も出ているのだが⋯⋯ですが」

 だめだ、頭が回らなくて、神に向かって言葉遣いが⋯⋯
 謙譲語、せめて敬語を使わねばと思うのに、素が出る。

〘構わぬ。表面だけ取り繕っても仕方あるまい。こちらが人の子に迷惑をかけたのは事実。神に対して畏れや崇める気持ちがあるかないかは、思考に触れればわかる。今この場は良い〙







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