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奇跡の少女 ── ギレウォッタ
きゅう。『コハクの杖の魔法が効果的なのか、舞いが相乗効果をあげているのか、グラスハープのような音はうねるように鳴り響きその姿が突然崩れた』
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コハクの杖の魔法が効果的なのか、舞いが相乗効果をあげているのか、グラスハープのような音──古代神の声──は高く低くうねるように鳴り響き、その姿がブレるほどに激しく振動していたのが、突然崩れた。
黒い大小の粒子になって爆散するように飛び散り、パラパラと床に降り積もる。
「これで、終わり?」
アネッタが枯れた声で訊ねる。その言葉にキールは肩の力を抜いたが、フィルタは魔剣の鯉口を切った。ターレンもコハクに借りた杖を構える。
降り積もった黒い粒子の山は、ザザザと嫌な音を立てて集まり、中心から盛り上がる。
湯を張った金属の鍋で、グラスハープと同じ作業で縁をなでて鳴らす音のような共鳴音を響かせ、集まり盛り上がってゆく粒子はやがて溶けるようにまとまり、漆黒の彫像となる。王都の国立博物館にある、神々の姿を写し取ったと言われる彫刻像と似通っているが、こちらが遥かに細かく、均整のとれた美しさを持っていた。
これが、古代神の、本来の姿だろうか?
トーガをまとった美丈夫を模った黒い塊は、目を閉じたまま形の良い唇を開くと、冥と昏に染まった魔素を吐き出す。
ソレは数㎜ほどの黒い粒子であったが、魔道ゴーグルで拡大してみると粒ではなく、他人を呪う怨嗟の声と呪詛の咒紋の圧縮したものだった。
「その粒子は吸うな! 呪詛だ」
「ええっ? 無茶な⋯⋯」
アネッタは魔道士のローブの袖で口元を覆い、ターレンも数歩下がって口元を抑える。
〈コハ!! 防護領域・強化するのに範囲・狭めるカラ、下がる! みんなもっと寄っテ!!〉
コハクの頭の上にずっといる水色の妖精くんが焦った声で呼びかけた。
慌てて、みんなで肩が触れない程度に近寄る。固まりすぎても、とっさの動きに支障をきたすからだ。
キールが、床に倒れたままのラジエを担いで来る。
「あのままだと、呼吸時に吸い込んでしまうだろう?」
「ありがとう。だけど、これで、この範囲から動けなくなってしまったな⋯⋯」
ケルピーの張る霧の結界は、僅かに咒紋の圧縮粒子が浸透して来る。
神の吐き出す呪詛を妖魔で防げるとは思ってないが、こうしてはっきり見てしまうと、ああやはりなという気持ちと防げてない事への絶望感が、より焦りを強めてくる。
だが、ここで不安になったり絶望したり、負の感情を強めれば、敵の思うツボだ。この負の感情がより相手を強くするだろうから。
「チルちゃん、大丈夫? ケルピーちゃんも⋯⋯」
コハクが心配そうに訊ねるが、当人たちも余裕はないのだろう返事はない。
だが、範囲を狭めたからなのか、よほど彼らは優秀なのか、霧には咒紋は侵食してくるが、バリアより内には入って来ない。
その内、粒子がどんどん溜まり、積もって壁になり周りが見づらくなって来ると、ボッ、ポッと、あちこちでその咒紋の粒子が燃えだした。
コハクの杖の魔法が効果的なのか、舞いが相乗効果をあげているのか、グラスハープのような音──古代神の声──は高く低くうねるように鳴り響き、その姿がブレるほどに激しく振動していたのが、突然崩れた。
黒い大小の粒子になって爆散するように飛び散り、パラパラと床に降り積もる。
「これで、終わり?」
アネッタが枯れた声で訊ねる。その言葉にキールは肩の力を抜いたが、フィルタは魔剣の鯉口を切った。ターレンもコハクに借りた杖を構える。
降り積もった黒い粒子の山は、ザザザと嫌な音を立てて集まり、中心から盛り上がる。
湯を張った金属の鍋で、グラスハープと同じ作業で縁をなでて鳴らす音のような共鳴音を響かせ、集まり盛り上がってゆく粒子はやがて溶けるようにまとまり、漆黒の彫像となる。王都の国立博物館にある、神々の姿を写し取ったと言われる彫刻像と似通っているが、こちらが遥かに細かく、均整のとれた美しさを持っていた。
これが、古代神の、本来の姿だろうか?
トーガをまとった美丈夫を模った黒い塊は、目を閉じたまま形の良い唇を開くと、冥と昏に染まった魔素を吐き出す。
ソレは数㎜ほどの黒い粒子であったが、魔道ゴーグルで拡大してみると粒ではなく、他人を呪う怨嗟の声と呪詛の咒紋の圧縮したものだった。
「その粒子は吸うな! 呪詛だ」
「ええっ? 無茶な⋯⋯」
アネッタは魔道士のローブの袖で口元を覆い、ターレンも数歩下がって口元を抑える。
〈コハ!! 防護領域・強化するのに範囲・狭めるカラ、下がる! みんなもっと寄っテ!!〉
コハクの頭の上にずっといる水色の妖精くんが焦った声で呼びかけた。
慌てて、みんなで肩が触れない程度に近寄る。固まりすぎても、とっさの動きに支障をきたすからだ。
キールが、床に倒れたままのラジエを担いで来る。
「あのままだと、呼吸時に吸い込んでしまうだろう?」
「ありがとう。だけど、これで、この範囲から動けなくなってしまったな⋯⋯」
ケルピーの張る霧の結界は、僅かに咒紋の圧縮粒子が浸透して来る。
神の吐き出す呪詛を妖魔で防げるとは思ってないが、こうしてはっきり見てしまうと、ああやはりなという気持ちと防げてない事への絶望感が、より焦りを強めてくる。
だが、ここで不安になったり絶望したり、負の感情を強めれば、敵の思うツボだ。この負の感情がより相手を強くするだろうから。
「チルちゃん、大丈夫? ケルピーちゃんも⋯⋯」
コハクが心配そうに訊ねるが、当人たちも余裕はないのだろう返事はない。
だが、範囲を狭めたからなのか、よほど彼らは優秀なのか、霧には咒紋は侵食してくるが、バリアより内には入って来ない。
その内、粒子がどんどん溜まり、積もって壁になり周りが見づらくなって来ると、ボッ、ポッと、あちこちでその咒紋の粒子が燃えだした。
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