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奇跡の少女 ── ギレウォッタ
はち。『星空のような瑠璃の玉が揺れるたびに黄金色の煌めきを放ち、輝く塊となって黒光りする古代神たる球体へと一直線に飛んでいった』
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三日月型のチャームトップから下がる、金の筋の入った、星空のような瑠璃の玉が揺れるたびに、黄金色の煌めきを放ち、コハクのまわりに溜まると、輝く塊となって、黒光りする球体へと一直線に飛んでいった。
ぅわんわんわんわんゎんゎんわん⋯⋯
グラスハープにも似たやや低めの透き通った音が鳴り響き、球体は激しく振動を続ける。
皆は緊張して警戒したが、新たな不死者が召喚される様子はなかった。
魔道ゴーグルで色を視ても、球体は喜んでいるように思われた。
古代神と思しき球体はそのレベルもステータスも我々とはかけ離れて強大過ぎて、私の鑑定能力では、ゴーグルに映る色での属性と簡単な状態が視えるのみで、何も知る事はできない。すべての欄が???である。
コハクの鑑定単眼鏡では、階位が古代神である事と属性が冥と昏である事、魔力と運気が∞だとは見えたらしいが、なんの安心材料にもならない情報だ。むしろ、不安しかない。
過去の例からも、信仰を失い、存在意義の希薄になった神の行く末は、祟り神や、存在値が解けて自然に還る際に天災となる事が多く、その力も強く大災害となることが殆どだ。
こんな誰も知らない場所に人知れず埋まっている古代神など、その最たるものなのではないのか⋯⋯
コハクが杖を振るって発生させた聖属性の煌めきは、球体のまわりに蟠っていた冥気を祓い、何も纏わぬ姿を曝していた。
ぅおんおんおんぉんぉんぅおんおんおん
この地下空間全体に響く音が大きくなり、球体の振動は目に見えて大きく、形がブレていくほどになる。
「効いてる⋯⋯みたい?」
「そうだな。何かしらの影響は出ているようだが、状態が鑑定できない以上、油断も楽観もできない。ただ、感情は見えるのだが、あれは、哀しみに満たされていて、それをコハクの聖属性の魔法が少しづつ喜びに塗り替えていっているように思う」
アネッタが明るい声で訊いてくるのを、気を抜くのは早いと引き締めさせておく。
「少しでも効いてるのなら、もう少し繰り返して頑張ってみますね?」
コハクは、左手に灯り代わりの花をしっかり握りしめて胸元に固定し、右手で『女教皇の安らぎを与える杖』を高く掲げ、チャームトップ部分が宙で弧を描くようにまわしていく。
彼女の珍しい、薄桃色がかった金髪が花の光を受けてきらきらと舞い、杖の瑠璃玉の金を含んだ煌めきが夜空を思わせ、その姿に力に喜び震える黒光りする古代神たる球体。
彼女の舞いは、正しく、神に捧げる巫子の奉納舞であった。
三日月型のチャームトップから下がる、金の筋の入った、星空のような瑠璃の玉が揺れるたびに、黄金色の煌めきを放ち、コハクのまわりに溜まると、輝く塊となって、黒光りする球体へと一直線に飛んでいった。
ぅわんわんわんわんゎんゎんわん⋯⋯
グラスハープにも似たやや低めの透き通った音が鳴り響き、球体は激しく振動を続ける。
皆は緊張して警戒したが、新たな不死者が召喚される様子はなかった。
魔道ゴーグルで色を視ても、球体は喜んでいるように思われた。
古代神と思しき球体はそのレベルもステータスも我々とはかけ離れて強大過ぎて、私の鑑定能力では、ゴーグルに映る色での属性と簡単な状態が視えるのみで、何も知る事はできない。すべての欄が???である。
コハクの鑑定単眼鏡では、階位が古代神である事と属性が冥と昏である事、魔力と運気が∞だとは見えたらしいが、なんの安心材料にもならない情報だ。むしろ、不安しかない。
過去の例からも、信仰を失い、存在意義の希薄になった神の行く末は、祟り神や、存在値が解けて自然に還る際に天災となる事が多く、その力も強く大災害となることが殆どだ。
こんな誰も知らない場所に人知れず埋まっている古代神など、その最たるものなのではないのか⋯⋯
コハクが杖を振るって発生させた聖属性の煌めきは、球体のまわりに蟠っていた冥気を祓い、何も纏わぬ姿を曝していた。
ぅおんおんおんぉんぉんぅおんおんおん
この地下空間全体に響く音が大きくなり、球体の振動は目に見えて大きく、形がブレていくほどになる。
「効いてる⋯⋯みたい?」
「そうだな。何かしらの影響は出ているようだが、状態が鑑定できない以上、油断も楽観もできない。ただ、感情は見えるのだが、あれは、哀しみに満たされていて、それをコハクの聖属性の魔法が少しづつ喜びに塗り替えていっているように思う」
アネッタが明るい声で訊いてくるのを、気を抜くのは早いと引き締めさせておく。
「少しでも効いてるのなら、もう少し繰り返して頑張ってみますね?」
コハクは、左手に灯り代わりの花をしっかり握りしめて胸元に固定し、右手で『女教皇の安らぎを与える杖』を高く掲げ、チャームトップ部分が宙で弧を描くようにまわしていく。
彼女の珍しい、薄桃色がかった金髪が花の光を受けてきらきらと舞い、杖の瑠璃玉の金を含んだ煌めきが夜空を思わせ、その姿に力に喜び震える黒光りする古代神たる球体。
彼女の舞いは、正しく、神に捧げる巫子の奉納舞であった。
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