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奇跡の少女 ── ギレウォッタ

さん。『イチゴの形をしたポシェットに手を突っ込んでゴソゴソしている、小柄で一見どこにでもいそうな少女』──コハクは斜め上を行く奇跡の少女?

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     ⚰️

 この古代神に使えるものがないか探しているのだろう、空間拡張ストップドワイド収納袋インベントリでイチゴの形をしたポシェットに手を突っ込んでゴソゴソしている、小柄で一見どこにでもいそうな少女──

「コハクちゃん?」
「はい」
「さっきのアレ⋯⋯ ラジエにした事は、なんて技なんだい?」

 魂を摑み取りして、抜けた身体に戻すなんて荒業、聞いたこともない。

「技?」
「あんな凄いの初めてみたよ。抜けた霊魂を摑んで、身体に戻すなんて」
「ああ。──なんとなく?」

 なんとなく? なんて言って小首を傾げるコハク。

 いやいやいやいやいや!? なんとなくって何!? 意味わからないんですけど!?
 同じ事を思ったのだろう、アネッタが、全く同じ言葉を叫んだ。恐らく他の三人もそう変わらない気持ちだろう。

「なんとなくって何!? 意味わからないんですけど!?」
「だって、サラピーちゃんが、精霊なのに摑めたから、きっと霊体は摑めるんだな、と。だったら霊魂も根性で摑めるかなって⋯⋯」
「「「どんな根性!?」」」
「ええ!? あ、あの⋯⋯」

 思わず詰め寄るアネッタの気迫に、後ずさるコハク。

「前に、お祖母ちゃんが、大僧正様が大金ふっかけておいて投げ出した、瀕死のお兄ちゃんにおんなじ事してたの見たことあったし」
「あなたのお祖母様、本っ当に何者!?」
「ただのどこにでも居るお婆ちゃんだよ」
「「「絶対に、違うから!!」」」

 そうか、お祖母様仕込みなのか⋯⋯
 コハクのお祖母様は、伝説の聖女か何かなんだろうか。
 (残念、ギレウォッタ。仕込んでないし、聖女でもないぞ)

「アネッタさんみたいに大魔法が使えるわけでもないし、フィルタさんみたいに凄い剣戟も振るえないよ。クリスみたいに、神様に神聖術を教えてもらって使えるってわけでもないし。お裁縫と小物作りが大好きな、たまにお料理失敗しちゃういたって普通のお祖母ちゃんだよ」

 う~ん、幼い頃から見て来て、コハクにとって、それが普通なんだな。
 彼女とパーティ組んでた勇者候補くん達は、今までよく平気で旅してきたな。それとも、勇者候補たる公爵子息とやらも、こんなに非常識な特殊能力を持っているのだろうか? 確か、女神の祝福ギフトを持ってるって聞いてるしな⋯⋯

 それにしても、神聖術を使えないのに、瀕死の孫息子を完全再生さ パーフェクトリカバリー せるなんて、どんな力なんだ?
 コハクちゃんもそうだけど、彼女のお祖母様の話は、聞けば聞くほど謎が深まるばかりであった。







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