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冥くて昏い地の底に眠るモノ
じゅうご。『コハ!! 右に2歩動いテ!』──チルちゃんの警告に反射的に飛び退くも、隣に立つラジエさんのうめき声があがる
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👻
〈コハ!! 右に2歩動いテ!〉
チルちゃんとチットちゃんの警告に、反射的に右に2歩幅跳びしてしまう。なんで? とかは後から来た。とにかく言われた事に無心で反応しただけ。
ザビュッ
厚手の布をナイフで裂くような音の後、男性のくぐもった声がする。私の隣に立っていたラジエさんのうめき声だ。
突然背後から現れた刈り取る者と呼ばれる、大鎌を持った死霊のような魔物に背を切られたのだ。
そんなものが近づいてきて、チルちゃん達の【探知】や、アネッタさんの防御壁魔法に引っかからないはずがない。突然、そこに出現したのだ。
「あわわゎゎ…… ら、ラジエさん、大丈夫ですか?」
とてもじゃないけど、大丈夫ではなかった。
リーパーに斬られた傷口から、ゆらりとなんか白っぽい半透明の、靄とも煙ともつかない何かが立ち上っていく。
「白い何かが出て来……だ、大丈夫で」
「……な訳あるか! 刈り取る者に斬られたんだぞ? リーパーが刈る物は、魂だ!」
ギレウォッタさんが慌てて、空間拡張収納袋である腰の革鞄から小瓶を出して、中身の液体をラジエさんの背中にぶっかける。
俯せに倒れたラジエさんは大きく痙攣した。
「たっ……ましいが抜けちゃたたら大変なんじゃ」
「大変なんてもんじゃない! あのまま昇天したら儲けもの、呪われて死霊になる。身体も呪いを受けたら動く死体の仲間入りだ!!」
「えええぇぇぇ!?」
「仲間をヤるのはさすがに気が進まないわね」
アネッタさん、そういう問題では……
「とりあえず咄嗟にだが聖水はかけた。呪いがかかるまでの時間稼ぎにしかならんが」
「やはり回復士か聖職者がひとりは必要ですねぇ」
小刻みに痙攣するラジエさんの様子がとても怖い。怖すぎる。
「ラジエさん、ラジエさんしっかりしてください」
何がなんでも唯一の灯りの『生命を宿した大輪の花』は手放さないように気をつけながらも、『癒しの夜光石の杖』を出して、ラジエさんの背中に向けて振り下ろしまくる。何度も何度も。
ぶつけないように気をつけてはいたものの、焦っていたことと、大輪の花を持っていたことで、どうしてもコントロールは甘くなる。
リーパーに斬られて、白目をむいて痙攣しているラジエさんの背中の切り口に当ててしまった。
「ぐわぁあああぁぁあ!!」
「っきゃー!! ごめんなさい、当てるつもりは」
「いや、この状況では当ててしまっても仕方ないと思うぞ?」
私に慰めの言葉をくれるフィルタさんも、暇なわけではない。
新たに出現した屍喰鬼や屍喰鬼を寄って来れないよう細切れにするのに忙しいのだ。
ターレンさんは、安らぎの花を使うのを躊躇っていた。
「間違って、ラジエの魂に安らぎを与えちゃって浄化してしまったら、死が確定しそうで……」
〈コハ!! 右に2歩動いテ!〉
チルちゃんとチットちゃんの警告に、反射的に右に2歩幅跳びしてしまう。なんで? とかは後から来た。とにかく言われた事に無心で反応しただけ。
ザビュッ
厚手の布をナイフで裂くような音の後、男性のくぐもった声がする。私の隣に立っていたラジエさんのうめき声だ。
突然背後から現れた刈り取る者と呼ばれる、大鎌を持った死霊のような魔物に背を切られたのだ。
そんなものが近づいてきて、チルちゃん達の【探知】や、アネッタさんの防御壁魔法に引っかからないはずがない。突然、そこに出現したのだ。
「あわわゎゎ…… ら、ラジエさん、大丈夫ですか?」
とてもじゃないけど、大丈夫ではなかった。
リーパーに斬られた傷口から、ゆらりとなんか白っぽい半透明の、靄とも煙ともつかない何かが立ち上っていく。
「白い何かが出て来……だ、大丈夫で」
「……な訳あるか! 刈り取る者に斬られたんだぞ? リーパーが刈る物は、魂だ!」
ギレウォッタさんが慌てて、空間拡張収納袋である腰の革鞄から小瓶を出して、中身の液体をラジエさんの背中にぶっかける。
俯せに倒れたラジエさんは大きく痙攣した。
「たっ……ましいが抜けちゃたたら大変なんじゃ」
「大変なんてもんじゃない! あのまま昇天したら儲けもの、呪われて死霊になる。身体も呪いを受けたら動く死体の仲間入りだ!!」
「えええぇぇぇ!?」
「仲間をヤるのはさすがに気が進まないわね」
アネッタさん、そういう問題では……
「とりあえず咄嗟にだが聖水はかけた。呪いがかかるまでの時間稼ぎにしかならんが」
「やはり回復士か聖職者がひとりは必要ですねぇ」
小刻みに痙攣するラジエさんの様子がとても怖い。怖すぎる。
「ラジエさん、ラジエさんしっかりしてください」
何がなんでも唯一の灯りの『生命を宿した大輪の花』は手放さないように気をつけながらも、『癒しの夜光石の杖』を出して、ラジエさんの背中に向けて振り下ろしまくる。何度も何度も。
ぶつけないように気をつけてはいたものの、焦っていたことと、大輪の花を持っていたことで、どうしてもコントロールは甘くなる。
リーパーに斬られて、白目をむいて痙攣しているラジエさんの背中の切り口に当ててしまった。
「ぐわぁあああぁぁあ!!」
「っきゃー!! ごめんなさい、当てるつもりは」
「いや、この状況では当ててしまっても仕方ないと思うぞ?」
私に慰めの言葉をくれるフィルタさんも、暇なわけではない。
新たに出現した屍喰鬼や屍喰鬼を寄って来れないよう細切れにするのに忙しいのだ。
ターレンさんは、安らぎの花を使うのを躊躇っていた。
「間違って、ラジエの魂に安らぎを与えちゃって浄化してしまったら、死が確定しそうで……」
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