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冥くて昏い地の底に眠るモノ
じゅう。『私は、二年前の秋に、田舎町からクリステルパルスシティに出て来て、初心者冒険者として登録をした』──支援スキルしかない田舎娘です
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👿
私は、二年前の秋に、羊の方が人口より多い田舎町からクリステルパルスシティに出て来て、初心者冒険者として登録をした。
つまり、あとひと月、この夏を越せば晴れて、二年目から三年目に突入するわけだ。
殆ど新米冒険者に毛が生えた程度な上に、戦闘スキルを持たず、ちょっとアットホームで微妙な支援スキルしかない未成年の田舎娘である。
縁あって勇者候補として名高いパーティに迎えられ、自己研鑽を怠って飄々と冒険を楽しんでたツケの精算が来たのか、パーティを外され。
薬草取りや街人のお手伝いからソロ活動を始めたら、わずか数日で、ギルドきってのSランクパーティの皆さんと、妖精族との架け橋として連れ出され。
──なんの因果か、火山の奥底で古代神冥府の王と対峙してます。
て、いやいや、ありえないでしょう!? 基礎Lv1の戦闘技能なしの未成年田舎娘のやる冒険じゃないよね!?
その基礎Lvだって、せめて戦闘職か魔法職ならともかく、支援役割の荷物係で、しかも聞き覚えの悪い【遊び人】ですから。
支援職と思ってるけど本当は何職なのか判らない。他に同じ【遊び人】を見たことないから。
Lv1だからか、職種由来のスキルもなし。
どうせなら、せめて実家の生業【羊飼い】でも持ってれば、派生スキルで【動物使い】や【生物知識】とか【魔物使い】とか覚えてたかもしれないのに……
目の前には、暗くて底の見えない大穴から、黒くてピカピカの鉱石っぽいもの──生きた魔石が冥気を漂わせながら浮いている。
見た目は、黒瑪瑙や黒金剛石をもっとツヤツヤに研いたような──生命を宿した大輪の花の光をほんの僅かに透過してるので黒水晶の方が近いのかしら? ここが火山であるとこを思うと、ガラス質の黒曜石かもしれない。
黒くてツヤピカの鉱石の球体に見えるけど、鑑定単眼鏡で視ると、種族:神(古代種) 属性:冥・昏ってあるので、冥府の王か、それに准じるモノと思われる。
「コハクちゃんの見立ては?」
「えっと、ごめんなさい、鑑定単眼鏡でも看破不能ってありまして、スキルもステータスも何も……
辛うじてわかるのが、冥・昏属性の古代神で、魔力と運気が∞という事しか」
ギレウォッタさんの質問に答えられる結果がなくて申し訳ないけれど、むしろ正確に知れば、絶望的な状況だと再確認するだけなのでは?
「短い人生だったなあ」
「ちょっとラジエ。やってみないうちから諦めないでよ」
「だって、俺達が歯が立たなかったサラマンダーが、命がいくつあっても足りないって沈黙しちまったんだぜ?」
「アレの霊圧が強すぎて、私の精霊達はみんな逃げてしまった…… 精霊がいなければ、私はただの非力なハーフエルフでしかない」
「狂って暴走されるよりかは、逃げてくれたほうがまだ良かったんじゃない? 味方に攻撃されるなんてゾッとしないもの」
みんなは、途轍もない強大な敵に、無謀なくらいヤル気になってる人と、人生を諦めムードの人に分かれてるみたいだけど、不思議と私は、怖くなくなってきた。
みんなの軽口のおかげかもしれない。
──お祖母ちゃんの魔法の道具で、なんとかならないかな?
私は、二年前の秋に、羊の方が人口より多い田舎町からクリステルパルスシティに出て来て、初心者冒険者として登録をした。
つまり、あとひと月、この夏を越せば晴れて、二年目から三年目に突入するわけだ。
殆ど新米冒険者に毛が生えた程度な上に、戦闘スキルを持たず、ちょっとアットホームで微妙な支援スキルしかない未成年の田舎娘である。
縁あって勇者候補として名高いパーティに迎えられ、自己研鑽を怠って飄々と冒険を楽しんでたツケの精算が来たのか、パーティを外され。
薬草取りや街人のお手伝いからソロ活動を始めたら、わずか数日で、ギルドきってのSランクパーティの皆さんと、妖精族との架け橋として連れ出され。
──なんの因果か、火山の奥底で古代神冥府の王と対峙してます。
て、いやいや、ありえないでしょう!? 基礎Lv1の戦闘技能なしの未成年田舎娘のやる冒険じゃないよね!?
その基礎Lvだって、せめて戦闘職か魔法職ならともかく、支援役割の荷物係で、しかも聞き覚えの悪い【遊び人】ですから。
支援職と思ってるけど本当は何職なのか判らない。他に同じ【遊び人】を見たことないから。
Lv1だからか、職種由来のスキルもなし。
どうせなら、せめて実家の生業【羊飼い】でも持ってれば、派生スキルで【動物使い】や【生物知識】とか【魔物使い】とか覚えてたかもしれないのに……
目の前には、暗くて底の見えない大穴から、黒くてピカピカの鉱石っぽいもの──生きた魔石が冥気を漂わせながら浮いている。
見た目は、黒瑪瑙や黒金剛石をもっとツヤツヤに研いたような──生命を宿した大輪の花の光をほんの僅かに透過してるので黒水晶の方が近いのかしら? ここが火山であるとこを思うと、ガラス質の黒曜石かもしれない。
黒くてツヤピカの鉱石の球体に見えるけど、鑑定単眼鏡で視ると、種族:神(古代種) 属性:冥・昏ってあるので、冥府の王か、それに准じるモノと思われる。
「コハクちゃんの見立ては?」
「えっと、ごめんなさい、鑑定単眼鏡でも看破不能ってありまして、スキルもステータスも何も……
辛うじてわかるのが、冥・昏属性の古代神で、魔力と運気が∞という事しか」
ギレウォッタさんの質問に答えられる結果がなくて申し訳ないけれど、むしろ正確に知れば、絶望的な状況だと再確認するだけなのでは?
「短い人生だったなあ」
「ちょっとラジエ。やってみないうちから諦めないでよ」
「だって、俺達が歯が立たなかったサラマンダーが、命がいくつあっても足りないって沈黙しちまったんだぜ?」
「アレの霊圧が強すぎて、私の精霊達はみんな逃げてしまった…… 精霊がいなければ、私はただの非力なハーフエルフでしかない」
「狂って暴走されるよりかは、逃げてくれたほうがまだ良かったんじゃない? 味方に攻撃されるなんてゾッとしないもの」
みんなは、途轍もない強大な敵に、無謀なくらいヤル気になってる人と、人生を諦めムードの人に分かれてるみたいだけど、不思議と私は、怖くなくなってきた。
みんなの軽口のおかげかもしれない。
──お祖母ちゃんの魔法の道具で、なんとかならないかな?
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