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冥くて昏い地の底に眠るモノ

きゅう。『魔力や霊気が吸い込まれるように流れ込んでいる地点を中心に広くひび割れが走り、床の一部が崩落していく』──もの凄い霊圧の何かが来た!

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     ☣

 さっきちっちゃな海馬ケルピーちゃんが、魔力や霊気が吸い込まれるように流れ込んでいると言っていた地点を中心に広くヒビ割れが走り、地震が激しくなるにつれてヒビは裂けて地割れとなり、床の一部が崩れてどんどん崩落していく。

 やがて、ポッカリと大きな穴になる。
 
 元々の大きさのケルピーちゃんもすっぽり填まる暗い穴から、目に見えるおどろおどろしい気配が湧き上がってくる。
 黒や黒に近いチャコールグレー、月のない夜空の深い深い青黒さ。
 そういったあまりいい感情の持てない、けどどこか和らぎも感じるという相反した印象の色が混ざり合ったごく微細の靄のような、煙よりも重そうな、例えるなら、綺麗な水を汲んだばかりの筆洗に一滴落としてしまった墨が広がるような光景が、目の前にその穴から立ち上って来るのだ。

「なんか威圧感半端ない凄えのが見えるんだけど、気のせいじゃないよな? あれ、闇の精霊? 冥の気が濃い過ぎて視覚化してるとかじゃないよな?」
「ラジエ、解ってんなら訊くな」

 どうやら、魔素を色で見分けるゴーグルをしているギレウォッタさんや、チルちゃんの探知機能とリンクしている私以外の人にも、ちゃんと見えているらしい。

 地震が少しづつ収まると、黒点のような穴から噴き出す冥気ヘルノは勢いを増し、そこから感じる霊圧プレッシャーも、魔法を使えない私にもわかるくらい強烈なものとなっていた。

「不謹慎なんだが、逃げ出したい気持ちがあって、それ以上に、なんとも言えない高揚感もあるんだが……」
「奇遇だな。私もだ。フィルタだけではないよ」

 これは、頼もしい台詞と捉えていいのかしら?
 フィルタさんもキールさんも、血の気の引いた顔色なのに、ずっと欲しかったおもちゃを見せられた子供のように、目を輝かせていた。

「あんた達、おかしいんじゃないの? 普通に考えて無理でしょ?」

 アネッタさんが呆れながら、何かの呪文を予備詠唱プレキャストしている。二人の事は言えないんじゃないのかなぁ?

「いやいや、君たち、普通じゃないって」

 ラジエさんは、立っているのもやっとくらいに足が震えていた。

 フィルタさんやアネッタさんの戦闘力を信じているのだろうギレウォッタさんは、ゴーグルのツマミを調節して観察する事に余念がない。
 私はと言えば、あまりの大物に現実味がなさすぎて、ただソレが浮き出て来るのを見ていた。

 チルちゃんの【探知】では詳細は解らない。
 鑑定単眼鏡アプレィズモノクルを出して来て見ても、結果は同じだった。

❈種族❈
 神(古代種)Lv?????
 属性:ヘルノクルム
❈称号❈
【昏き者】Lv?????
【嘆く者】Lv?????
【求む者】Lv?????
❈能力値❈
HP:???????
MP:??????????
膂力:????
体力:???????
魔力:∞
精気: ????????
気力: ???????
運気:∞(無限大:何者にも侵されない領域)
❈技能❈ 
 看破不能

 これじゃなんにもわからないよ……

 種族:神? ステータスはなんにも読めない。かろうじて読めるのが、魔力と運気が無限大とか、ソロ活動始めてLv1のまま初めてのスポット参加探索のラスボスが、冥府の王インフェルヌスとか、勘弁してください!!






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