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廃鉱山の中は、アンデッドだらけ?

さんじゅう。『小刻みな横揺れの地震は、どんどん間隔を縮め、いよいよ心配になるレベルだった』──こんな状況でも落ち着いた頼りになる先輩冒険者達

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 小刻みな横揺れの地震は、どんどん間隔を縮め、いよいよ心配になるレベルだった。
 当然、揺れも大きくなる。

 休んでいたギレウォッタさんも天幕から出てきたので、ベッドと共に収納しちゃう。邪魔になるしね。

「コハクちゃん、本当にありがとう。こんなところで、ベッドで休めるなんて思っても見なかったわ」
「キャルに感謝ですね。元々はキャルの持ちものなんです。
 アレフの空間拡張収納袋ストップドワイドインベントリに入れると容量の殆どを使っちゃうし、クリスの拡張ワイド収納袋インベントリには入らないし。だから持ったままなんだけど、返しに行ったほうがいいかな」
「いいんじゃねぇか? どうせ、キャロラインたちは持って歩けねぇんだろ? 使っとけ使っとけ。慰謝料だ」

 ラジエさんの後頭部を、ギレウォッタさんがスパーンと殴りつける。
「同意見だが、一言多い」

 キールさん以外の、ギルドメンバーであるみんなは、特にギルマスのパーティメンバーだったラジエさんは、ギルド内の幹部と言ってもいいくらい、内部に精通した上層の人たちだ。
 私が、アレフ達のパーティから外された事は知っているのだろう。

「ま、まあ、アレだ。今回、コハクちゃんも役に立つ子だって証明できたんだし、しばらくソロでやるんだろう? 近場のクエストとかコハクちゃんも参加できそうな時は、一緒に行こうよ。私達には、回復や補助の技能スキル持ったメンバーがいないんだよね」

 確かに。魔剣士のフィルタさん、魔導士のアネッタさん、考古学者で探検家のギレウォッタさん。回復士ヒーラーが居ないんですね。
 それだけ、必要ないほど腕が立つ人達なんだ。そんな人たちが回復を必要とする時は、私の『癒しの夜光石の杖ヒーリング・ルミナスストーンロッド』では間に合わないんじゃないかな。

「コハクちゃんのお料理は回復の追加効果があるし、チルちゃんの状態異常解除能力や探索サーチ能力、ふたりの妖精魔法は、人間では扱えない特殊で素晴らしいものだし、他にもどんなものがあるのか見てみたい」
「ギレウォッタは、最後の見てみたいが本音でしょ」
「否定はしないが、前半の、コハクちゃん自身の価値も嘘じゃないよ」
 優しい目をして、頭を撫でてくれる。

「俺もほぼソロでやってっから、いつだって一緒に行ってやるからな」

 ラジエさんは、ギルマスが引退したとき現役として残ったけれど、誰ともパーティは組まず、依頼内容に応じて一時組みする、スポット参加しかせずに殆どソロで活動している。申し出はありがたいけど、レベルも能力値ステータスも違いすぎて足引っ張んないかな。

「選りどり見どりだな」

 フィルタさんは小さな変化で表情を変えているのだと、だんだんわかってきた。今は、目を細めることで微笑んでくれてるんだ。

 このパーティと出会わせてくれたギルマスに感謝しよう。
 最初は、なんで私みたいな初心者レベルがこんな凄いメンバーと!?って思ったけど、職業『遊び人ハイブロウ』こそレベルは上がらないものの、身体的な能力値ステータスはわずかながら上がってきてる。
 今回の冒険中に起きたことは、彼らでなければ乗り越えられなかっただろう。
 ロックストーヴ山の火口付近での魔物や不死者アンデッドの大量発生。作業場で私が足を滑らしたことや床の崩落。
 アレフのパーティでは、早々に魔力切れ体力消耗で力尽きてただろうし、大穴で踏み外したとき、とっさに私を拾えなかったかもしれない。床が抜けたときも、どこにもつかまれずに全員で落下しただろう。
 みんな、このメンバーだから、誰も欠けずにここまでこれたのだ。





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