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廃鉱山の中は、アンデッドだらけ?
にじゅうく。『何時間経ったかな⋯⋯』──目を覚ますと、そこには⋯⋯!? きゃーっイヤン♡ やらかしちゃいました?
しおりを挟む何時間経ったかな⋯⋯
目を覚ますと、フィルタさんが片膝を立てて愛剣を抱え、床に座ったまま眠っている。
その肩に凭れるようにして眠っているのが、私であった。
──所属ギルド一のSランク冒険者を枕にしてしまった!
あわわ、大先輩になんて事を⋯⋯!! 今回、私はフィルタさんに迷惑をかけっぱなしではないか。穴から落ちたり、せっかく助けてもらったのに海馬ちゃんを拾おうとしてもっぺん一緒に落ちたり。縦穴から落ちた後も、抱っこで着地してくれたり。
アレフに対しても、ずっとこうだったのかな、私。
彼らの重荷にしかなってなかったのかな。だから、棄てられたんだよね。ダンジョンの中で。
ぽろっ
キャルにゴミが入りやすそうな無駄にでっかい、と言われていた目の縁から、雫が、ふるふるしながらかなり頑張っていたのだけど、ついに耐えきれずに零れてしまった。
「怖いのか? 夢を見たのか?」
フィルタさんの低い素っ気ないようで気遣う声が、頭の上から降ってくる。
ポタッ
優しいその声でさらにもうひと雫膝に落ちて、サーモンピンクのゆるっとパンツに、濃いオレンジのシミができる。
さらにもう一滴、とはならなかった。温かくて少し硬い指が拾ってくれたので、膝の上にシミは増えなかった。
「こんなところで、いい夢は見れねぇよな。でも、ま、俺らがいるんだ、怖くはないだろ?」
「無愛想なオジサンだけど、枕にでも布団にでもハンカチにでもしたらいいよ。口数少ない分、文句も言わないから」
ラジエさんが、ニカッと微笑みかけてくれる。
ギレウォッタさんが、フィルタさんをわざとオジサンと言い、私を笑わせてくれる。
ふふふ。シンジュお兄ちゃんよりもいくらか年上だけど、オジサンじゃないよ。フィルタさん。ステキなお兄さんだよね。
「おやおや、14歳のコハクちゃんからしたら、26のフィルタは一回りも違うオジサンだろう? フィルよかったな、おニーサンだってさ」
「俺がオジサンなら、ギレウォッタはオバアサンだな」
「フィル? もう一度、言ってごらん?」
フィルタさん、26なのかぁ。シンジュお兄ちゃんより9つも大人なんだね。⋯⋯ギレウォッタさんはいくつなんだろう。
ラジエさんの笑い声が、緊張感のあるこの場を和ませてくれた。
その声で、天幕の中から、アネッタさんとターレンさんも起き出してきた。
「ずいぶんゆっくり休ませてもらったわ」
「マジカリティサイコスも、ほぼ全快したかも」
「よかったな。気力体力は充実してるにこしたことはない」
「交代するわ、ギレウォッタも休んで」
「こんな贅沢していいのかねぇ⋯⋯ 今回のクエストが終わったら、元の冒険者稼業に戻れなくなりそうだよ」
そう言って、天幕の内に入るギレウォッタさん。
「そのお花も、コハクちゃんの代わりになれたらいいのだけど。お祖母様の血筋とか持ち主判定があるとか、何かの条件でもあるのかしらね」
「大丈夫ですよ。ぬいぐるみとかと同じです。抱っこしたまま座って眠れますから」
「そうそう、フィルタオジサマのベッドもあるしね」
「いや、枕、布団はともかく、ベッドは失礼ですよ。下敷きになんて出来ません」
「ぷぷッ 枕、布団はともかくなんだ。可愛い女の子を乗せて寝るんだ、フィルタも光栄だよなあ?」
「⋯⋯ラジエ? それ、セクハラオヤジ発言よ。コハクちゃん気にしちゃだめよ、フィルはそんな事思ってないから、安心して凭れかかって、支えにして寝なさい。身体を休めることのほうが今は大事よ」
アネッタさんが、キツい視線をラジエさんへ向ける。
ラジエさんは肩をすくめて、片眉を上げただけで何も言わず、地面に直接置いた背負い袋を枕に寝始めた。
フィルタさんと同じ姿勢、片膝を立てたあぐらのような座り方で、ロングソードを抱え頭を寄せて、キールさんも目を閉じた。
クラクラクラ
また、小さく横揺れの地震が起こる。やな感じだな。
フィルタさんの肩や腕は、シンジュお兄ちゃんより硬くて厚みがあって、温かい頼りになる枕だった。
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