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冥界に一番近い山──楽園と地獄の釜
じゅうはち。『大穴の縁から覗くチルちゃんが寂しそうに見える』──足元から闇が侵食するし、底の見えない穴にぶら下がって、これって絶体絶命?
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☣️
大穴の縁から覗く、チルちゃんが寂しそうに見える。
〈コハ、届かない⋯⋯ 防護領域も薄くなるよ〉
私から離れると、効果を保てなくなるとかあるのだろうか?
それとも、横には範囲を広げられても、下には広げられないのかな?
「床に接していないと状態を保てないタイプなのかもな。霧で被っているだろう? 床がないと落ちていくんじゃないか?」
苦しげながら、答えてくれるフィルタさん。
なるほど、霧は水だから空気より重いし、床に接地していないと、底が抜けてしまうのか⋯⋯ 納得です。
「くっ⋯⋯! アネ⋯⋯タ、ギレ、オタ、まだか?」
キールさんが、額は血の気が引いて青く、歯を食いしばり頰は真っ赤にして訊ねる。
「⋯⋯っ 魔術の効きが悪いのよ! 物体浮遊がうまく働かなくて」
「縄なりなんなりで引き上げるにしても、柱があるでなし、固定する事ができないんだ」
私を抱えるフィルタさんと、私達を掴まえているキールさん。最も筋力のある男性ふたりが動けず、ラジエさんもそこまで力自慢でもない。
第一、柱や壁に手すりやフックなど、私達を引き上げるときにみんなをこの場に固定するものがないのだ。
元々冥気に侵されて精霊がうまく働かないという話だったけど、私達を浮かせようとアネッタさんやターレンさんが頑張っているが、効果がないという。
〈みんな、しばらく耐える、イイ? コハの花が光ってる間、冥気急には押し寄せナイ。デモ、防護領域解除したラ、瘴気はクル。耐えるイイ?〉
「い、いい! なんでもいいからやってくれ!」
キールさんが苦しげに、ラジエさんが焦ったように、了承を叫ぶと、チルちゃんは防護領域を解除したらしい。
まわりが一段階暗くなり、呼吸はできるものの、ゾワゾワと体の芯が冷えるような、手足が重く感覚がなくなるような、恐怖が押し寄せてくる。
これが、瘴気?
〈妖精魔法、其の壱!『重力不干渉』〉
〈妖精魔法、其の弐!『夜間夢飛行』〉
チットちゃんとチルちゃんが、浄化魔法と防護領域を解き、精霊を使った魔術ではなく、彼らの妖精魔法を発動させる。
キールさんが掴んでいなくても、私達はふわふわと浮き、キールさんの限界が来たのか、手は離される。
やがて高度を上げて、天井から下がるつるべを掠めて作業場まで上ると、今度は横にスライドするように移動して、無事、作業場に着地した。
大穴の縁から覗く、チルちゃんが寂しそうに見える。
〈コハ、届かない⋯⋯ 防護領域も薄くなるよ〉
私から離れると、効果を保てなくなるとかあるのだろうか?
それとも、横には範囲を広げられても、下には広げられないのかな?
「床に接していないと状態を保てないタイプなのかもな。霧で被っているだろう? 床がないと落ちていくんじゃないか?」
苦しげながら、答えてくれるフィルタさん。
なるほど、霧は水だから空気より重いし、床に接地していないと、底が抜けてしまうのか⋯⋯ 納得です。
「くっ⋯⋯! アネ⋯⋯タ、ギレ、オタ、まだか?」
キールさんが、額は血の気が引いて青く、歯を食いしばり頰は真っ赤にして訊ねる。
「⋯⋯っ 魔術の効きが悪いのよ! 物体浮遊がうまく働かなくて」
「縄なりなんなりで引き上げるにしても、柱があるでなし、固定する事ができないんだ」
私を抱えるフィルタさんと、私達を掴まえているキールさん。最も筋力のある男性ふたりが動けず、ラジエさんもそこまで力自慢でもない。
第一、柱や壁に手すりやフックなど、私達を引き上げるときにみんなをこの場に固定するものがないのだ。
元々冥気に侵されて精霊がうまく働かないという話だったけど、私達を浮かせようとアネッタさんやターレンさんが頑張っているが、効果がないという。
〈みんな、しばらく耐える、イイ? コハの花が光ってる間、冥気急には押し寄せナイ。デモ、防護領域解除したラ、瘴気はクル。耐えるイイ?〉
「い、いい! なんでもいいからやってくれ!」
キールさんが苦しげに、ラジエさんが焦ったように、了承を叫ぶと、チルちゃんは防護領域を解除したらしい。
まわりが一段階暗くなり、呼吸はできるものの、ゾワゾワと体の芯が冷えるような、手足が重く感覚がなくなるような、恐怖が押し寄せてくる。
これが、瘴気?
〈妖精魔法、其の壱!『重力不干渉』〉
〈妖精魔法、其の弐!『夜間夢飛行』〉
チットちゃんとチルちゃんが、浄化魔法と防護領域を解き、精霊を使った魔術ではなく、彼らの妖精魔法を発動させる。
キールさんが掴んでいなくても、私達はふわふわと浮き、キールさんの限界が来たのか、手は離される。
やがて高度を上げて、天井から下がるつるべを掠めて作業場まで上ると、今度は横にスライドするように移動して、無事、作業場に着地した。
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