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冥界に一番近い山──楽園と地獄の釜
じゅうご。『坑道のような洞窟ダンジョンはたいてい湿っていたり、夜行性の動物や昆虫がつきもの』──でも、乾燥していて暖かく生物はいませんでした
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🐛
こういう坑道のような、横穴式の洞窟ダンジョンはたいてい、地中の湿り気が岩肌から滲み出て湿っていたり、毒を持った夜行性の動物や昆虫などが多くいるものだけど、ここは火山の中だからか、空気は乾いていて、地熱が熱いほどに暖かく、そのくせ生き物は昆虫すらもいない。
ただ、闇と灰色の世界だった。
「コハクちゃんの妖精くんは、実に優秀だねぇ? ゴーグルで見るとわかるのだけど、まわりは冥気と火山性の有毒ガスが充満しているのに、全く感じないよ」
「本当に、コハク殿が一緒でなければ、調査どころか、初日で我々は手詰まりになっていた可能性もある。レベルが低くて不安だっただろうに、ありがたいよ」
凄いね、チットちゃん、チルちゃんが褒められてるよ。
「どうも緩やかに下り坂のようだね、進むほどに、わずかだが坑道内の気温が上がってる気がする⋯⋯」
ギレウォッタさんの見立てでは、大昔の、硫黄鉱山跡ではないかと言うことだった。
天然ゴムを加工したり色々使いみちはあるらしい。
「この辺に、人が住んでいたのか」
「この辺りに人間の集落があったとは聞いたことないけれど」
「多分、火山活動かなにかで、放棄したのではないかな」
「だったらどこかに昔の集落の遺跡とかあるのかな?」
「どうかな。森の中に沈んでしまっているか、火山活動で噴き出た溶岩に閉ざされてしまって地の底か⋯⋯」
そこまでギレウォッタさんが答えてくれたときだった。
地の底から響くような音が、足から伝わり、僅かな振動に、地震か?とみな不安になる。
「もし、地震や火山活動が再開されたとしたら、マズいな、我々は生き埋めになってしまうかもしれないぞ?」
「今のところ何もなさそうだし、一度帰りますか?」
「そうだね⋯⋯と、少し開けた場所に出れそうだよ」
私の掲げ持つ花の光が、十数m先を照らしているのだけど、私にはさっきまでと変わらない、灰色の坑道にしか見えなかったけど、ハーフエルフのターレンさんや半妖精のキールさんは夜目が利くのかな、先の方を眇めるように見つめ、魔護眼鏡で確認したギレウォッタさんが、広い場所があると言う。
「そこで一度休憩して、どうするか決めようか」
鉱山として使われていたころに、作業場として用意された場所なのだろう、かなり広い空間で、古びた木箱や手押し車、錆びてボロボロのツルハシやショベルなどがあった。
真ん中に大きな穴があって、天井から滑車でバケツのような物が二つ、交互に上げ下げできるようになっている。この下の階層と荷物の運搬や何かをやり取りする用なのかもしれない。
「かなり原始的な坑具ですね。魔道のちからは一切痕跡が見られない」
「こんな危険そうな場所で、魔法もなく採石してたってこと?」
「まあ、当時は魔物もいなくて、有毒ガスもなかったのだろう」
手近な、破損具合が比較的少ない木箱を椅子代わりに、散らばって個々に休憩を取る。
有毒ガスや瘴気を浄化してくれてるチットちゃんには大変だけど、海馬ちゃんとチルちゃんの結界を、魔物からの物理的なものを緩め、冥気を押しとどめる方向に全振りして、範囲を広げてもらう。
休憩まで密集してたくないもんね。
こういう坑道のような、横穴式の洞窟ダンジョンはたいてい、地中の湿り気が岩肌から滲み出て湿っていたり、毒を持った夜行性の動物や昆虫などが多くいるものだけど、ここは火山の中だからか、空気は乾いていて、地熱が熱いほどに暖かく、そのくせ生き物は昆虫すらもいない。
ただ、闇と灰色の世界だった。
「コハクちゃんの妖精くんは、実に優秀だねぇ? ゴーグルで見るとわかるのだけど、まわりは冥気と火山性の有毒ガスが充満しているのに、全く感じないよ」
「本当に、コハク殿が一緒でなければ、調査どころか、初日で我々は手詰まりになっていた可能性もある。レベルが低くて不安だっただろうに、ありがたいよ」
凄いね、チットちゃん、チルちゃんが褒められてるよ。
「どうも緩やかに下り坂のようだね、進むほどに、わずかだが坑道内の気温が上がってる気がする⋯⋯」
ギレウォッタさんの見立てでは、大昔の、硫黄鉱山跡ではないかと言うことだった。
天然ゴムを加工したり色々使いみちはあるらしい。
「この辺に、人が住んでいたのか」
「この辺りに人間の集落があったとは聞いたことないけれど」
「多分、火山活動かなにかで、放棄したのではないかな」
「だったらどこかに昔の集落の遺跡とかあるのかな?」
「どうかな。森の中に沈んでしまっているか、火山活動で噴き出た溶岩に閉ざされてしまって地の底か⋯⋯」
そこまでギレウォッタさんが答えてくれたときだった。
地の底から響くような音が、足から伝わり、僅かな振動に、地震か?とみな不安になる。
「もし、地震や火山活動が再開されたとしたら、マズいな、我々は生き埋めになってしまうかもしれないぞ?」
「今のところ何もなさそうだし、一度帰りますか?」
「そうだね⋯⋯と、少し開けた場所に出れそうだよ」
私の掲げ持つ花の光が、十数m先を照らしているのだけど、私にはさっきまでと変わらない、灰色の坑道にしか見えなかったけど、ハーフエルフのターレンさんや半妖精のキールさんは夜目が利くのかな、先の方を眇めるように見つめ、魔護眼鏡で確認したギレウォッタさんが、広い場所があると言う。
「そこで一度休憩して、どうするか決めようか」
鉱山として使われていたころに、作業場として用意された場所なのだろう、かなり広い空間で、古びた木箱や手押し車、錆びてボロボロのツルハシやショベルなどがあった。
真ん中に大きな穴があって、天井から滑車でバケツのような物が二つ、交互に上げ下げできるようになっている。この下の階層と荷物の運搬や何かをやり取りする用なのかもしれない。
「かなり原始的な坑具ですね。魔道のちからは一切痕跡が見られない」
「こんな危険そうな場所で、魔法もなく採石してたってこと?」
「まあ、当時は魔物もいなくて、有毒ガスもなかったのだろう」
手近な、破損具合が比較的少ない木箱を椅子代わりに、散らばって個々に休憩を取る。
有毒ガスや瘴気を浄化してくれてるチットちゃんには大変だけど、海馬ちゃんとチルちゃんの結界を、魔物からの物理的なものを緩め、冥気を押しとどめる方向に全振りして、範囲を広げてもらう。
休憩まで密集してたくないもんね。
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