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冥界に一番近い山──楽園と地獄の釜
にぃ。『地獄の釜の蓋が開く と言う言葉がある』──西濤の森を囲む山々のうち、最も魔素の濃い山を探索します
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地獄の釜の蓋が開く と言う言葉がある。
この、西濤の森のある高原は、いくつかの高い山に囲まれ、王都からは、山を迂回してくる街道は私達が通った道しかなく、馬車ではるばる三日かけてきた。
森を取り囲む山の中でも、特に街道から見て一番遠い位置にある──北東の草木も生えない、常に煙を吐いている岩山ロックストーヴ(岩の大釜)山は、数百年に一度小規模の噴火を繰り返すと言われていて、地熱が高く、動植物が育つのに不適合であり、特殊な環境下においても活動できる生物──火属性の、魔獣や妖精族などが数種類棲息するのみだという。
「……というのが、魔獣や妖精族を研究している魔属生物研究所の見解なんだが」
魔獣使いのラジエさんが、一通り一般的なロックストーヴ山の認識を披露してくれる。
「これはどうしたものかな」
地熱の高い、乾いた岩肌を見せるロックストーヴ山の裾野から森が広がり、西濤の森へと続いている。──はずだった。
「ここ、本当にロックストーヴ山なの? 森の道を見失うという幻惑魔法が効いてて、南北の別の山に来たんじゃないの?」
呆れ顔で、腰に手を当てて、汗を拭いながらアネッタさんがグチる。
「その可能性もゼロではないが、地熱の高さと、太陽の位置から予測される方角、邪妖精や魔獣の多さから言っても、ロックストーヴ山で間違いはないはずだが……」
チットちゃんの【威嚇】が効きにくい魔獣や、チルちゃんの【結界】を上回る感知能力を見せる魔物が多く、戦闘なしにはなかなか進めない。
「……まあ、一つ言えるのは、説得が大変だったけど、波濤一族の者を連れてこなくて正解だったって事かな?」
周りを視認していたギレウォッタさんが、魔道具のゴーグルを外して額に上げながら、空間拡張収納袋から水筒を出して口にする。
「凄い魔素の量だよ。地精や光精も多いけど、闇精や属性のない純粋な魔素が多くて、更には冥気かなりが漂ってるので、ここが問題の地で間違いないと思うが……」
ギレウォッタさんのゴーグルは、精霊や魔素の属性が色で視えるという便利アイテムらしい。
魔道に明るくない私でも、そのゴーグルがあれば視ることが出来た。
いいなぁ、あれ。
「何言ってんの、コハクちゃんの方が、すごいアイテム持ってるでしょ。お祖母様がご存命なら、このゴーグルに似たアイテムくらいチョチョイのパで作ってくださっただろうけどね? これは魔道省の研究所か大きな街の魔道具商店に行けば、高価だけど入手は可能な物だよ」
そうなの? お金が貯まったら、どこかいい工房を案内してもらおう。
今朝から波濤一族が困っている、冥府の瘴気に侵された精霊が増える原因を突き止めるべく森の中を散策していて、今はもうお昼。
西濤の森の中では、どこも慢性的に冥気が漂っていて、発生源を特定する事は出来なくて。
みんな困っていた時に、昨日のサラマンダーとの戦闘で疲弊し、身体を癒やすために首から提げて、私の魔力や霊気を分けている海馬ちゃんが、嫌な気配と冥気が湧いてる場所なら、北東の山に行けって教えてくれたので、こうしてみんなでやってきたのだ。けど……
「ロックストーヴの名の由来である、草木の生えない涸れた岩山……には見えないわね?」
アネッタさんが言うとおり、目の前には、ちょっとおかしな植生の密林が広がっていた──
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地獄の釜の蓋が開く と言う言葉がある。
この、西濤の森のある高原は、いくつかの高い山に囲まれ、王都からは、山を迂回してくる街道は私達が通った道しかなく、馬車ではるばる三日かけてきた。
森を取り囲む山の中でも、特に街道から見て一番遠い位置にある──北東の草木も生えない、常に煙を吐いている岩山ロックストーヴ(岩の大釜)山は、数百年に一度小規模の噴火を繰り返すと言われていて、地熱が高く、動植物が育つのに不適合であり、特殊な環境下においても活動できる生物──火属性の、魔獣や妖精族などが数種類棲息するのみだという。
「……というのが、魔獣や妖精族を研究している魔属生物研究所の見解なんだが」
魔獣使いのラジエさんが、一通り一般的なロックストーヴ山の認識を披露してくれる。
「これはどうしたものかな」
地熱の高い、乾いた岩肌を見せるロックストーヴ山の裾野から森が広がり、西濤の森へと続いている。──はずだった。
「ここ、本当にロックストーヴ山なの? 森の道を見失うという幻惑魔法が効いてて、南北の別の山に来たんじゃないの?」
呆れ顔で、腰に手を当てて、汗を拭いながらアネッタさんがグチる。
「その可能性もゼロではないが、地熱の高さと、太陽の位置から予測される方角、邪妖精や魔獣の多さから言っても、ロックストーヴ山で間違いはないはずだが……」
チットちゃんの【威嚇】が効きにくい魔獣や、チルちゃんの【結界】を上回る感知能力を見せる魔物が多く、戦闘なしにはなかなか進めない。
「……まあ、一つ言えるのは、説得が大変だったけど、波濤一族の者を連れてこなくて正解だったって事かな?」
周りを視認していたギレウォッタさんが、魔道具のゴーグルを外して額に上げながら、空間拡張収納袋から水筒を出して口にする。
「凄い魔素の量だよ。地精や光精も多いけど、闇精や属性のない純粋な魔素が多くて、更には冥気かなりが漂ってるので、ここが問題の地で間違いないと思うが……」
ギレウォッタさんのゴーグルは、精霊や魔素の属性が色で視えるという便利アイテムらしい。
魔道に明るくない私でも、そのゴーグルがあれば視ることが出来た。
いいなぁ、あれ。
「何言ってんの、コハクちゃんの方が、すごいアイテム持ってるでしょ。お祖母様がご存命なら、このゴーグルに似たアイテムくらいチョチョイのパで作ってくださっただろうけどね? これは魔道省の研究所か大きな街の魔道具商店に行けば、高価だけど入手は可能な物だよ」
そうなの? お金が貯まったら、どこかいい工房を案内してもらおう。
今朝から波濤一族が困っている、冥府の瘴気に侵された精霊が増える原因を突き止めるべく森の中を散策していて、今はもうお昼。
西濤の森の中では、どこも慢性的に冥気が漂っていて、発生源を特定する事は出来なくて。
みんな困っていた時に、昨日のサラマンダーとの戦闘で疲弊し、身体を癒やすために首から提げて、私の魔力や霊気を分けている海馬ちゃんが、嫌な気配と冥気が湧いてる場所なら、北東の山に行けって教えてくれたので、こうしてみんなでやってきたのだ。けど……
「ロックストーヴの名の由来である、草木の生えない涸れた岩山……には見えないわね?」
アネッタさんが言うとおり、目の前には、ちょっとおかしな植生の密林が広がっていた──
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