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コハク、遊び人Lv1 初めての大きな依頼に緊張シマス
じゅうさん。『魚の一種なんですか? まだ竜の仲間って言う方が納得しますけど』──雪だるまに潰されたケルピーちゃんは縮んでタツノオトシゴに
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🦈
「魚の一種なんですか? まだ、竜の仲間って言う方が納得しますけど」
そもそも、上半身馬だったのはどうなったんだろう……
「この魚は、東海では、海馬と言われているんだ。海の馬とね」
「じゃ、やっぱりケルピーちゃんなんですか?」
私の手のひらでくったりしている青味がかった黒いお魚──小粒のドラゴンみたいだけどお魚らしい──が、さっきまでサラマンダーと対等に戦っていたお馬さんだなんて……
「はっ! お魚に戻っちゃったなら、お水が要るんじゃ…… ああ、海のお魚なら、海水かな。どこにどうすれば」
〈妖精だから、大丈夫にゃ! コハがお水を少しあげたらよくなるにゃ〉
チットちゃんの言う通りに、サッシェからクリスに買ってもらったガラス瓶を出して、ケルピーちゃんを入れ、水筒を出そうとしたら、雪だるまさんが粉ほど小さく軽い氷の粒を分けてくれる。
〈それを一緒に入れて、瓶を両手で温めてやってくれ。召喚主の魔力霊気が効くだろう〉
言われた通りに両手で瓶を包むようにしてケルピーちゃんが元気になりますようにと願うと、氷で〆ちゃうんじゃないかと心配したけどちゃんと溶けてお水になり、沈んていたケルピーちゃんがぷかりと浮いてくる。
中のお水が少しだけ光ってるなと思ったら、ケルピーちゃんは背ビレをピラピラさせて泳ぎだした。
「よかった! 気がついた?」
〈仮主の手を煩わせてしまい申し訳ない〉
「これくらいいいよぅ。あの暴走サラマンダーと戦ってくれたんだもの。みんなちゃんと怪我もなく助かったわ」
元気になるまで、喚び出した者として責任を持って、このまま瓶の中で飼う事にした。
〈おいおい飼い魚じゃないぞ?〉
「わかってるよ、とってもカッコイイ鱗と鬣が綺麗なケルピーちゃんは妖精さんだもんね」
〈そういう事じゃないんだが……〉
〈……ぷちゅっ〉
目の前で、さっきまで済まなそうだったのに今は微笑ましそうに、私達のやりとりを眺めていた雪だるまさんが、可愛いくしゃみをした。
「たいへん、風邪引いちゃった? 寝てたのに起こしてごめんなさい?」
〈妖精だから風邪は引かないが、首元がスースーするのぅ。ここ、少し欠けてしまったみたいでな、霊気が漏れてしまうんじゃよ〉
言われてみれば、首……はないけど胴体と頭の接合面に近い肩の辺りに、雪がひと塊分欠けたようなところがあって、氷室のような冷気は、そこから漏れているようだった。
「冷気(霊気)が漏れつづけたら、大変な事になるんじゃないの?」
〈そうさのぅ、ワシはまだまだ平気じゃが、一所に居続けたら、そこの気候が変わってしまって、色々生態系とか天候とか困るかもしれんの〉
「それは、結構問題なのでは?」
精霊術士のターレンさんが、少し焦ったように訊ねる。
教会で読んだご本にも、環境や生態系と人の暮らしの問題提起がテーマの難しいものもあったので、なんとなく大変なことだというのは解る。
〈寒さに弱い動植物は困るじゃろな〉
「これ、使ってください。……作りかけで、房飾りが片側にしかついてないけど、首に巻くのはできると思います」
首がスースーするというので思いついたのが、冬に向けて、アレフやクリス達に編み始めていたマフラーである。
練習も兼ねて、長く模様編みをところどころ入れて(ちょい歪な所もあるけどきっとエドガーは気にしない)一番長く編んだエドガー用の黄色い羊毛フェルト100%の手編みマフラーである。
お兄ちゃんが毛刈りをして、お父さんが煮たり洗ったりして、お母さんが紡いだ天然のフェルト糸である。暖かいぞぉ♪
草木染めは毎年、家族・親戚総出でやる事になっている。
〈おお、温かいぞ、霊気の漏れも治まったようじゃ…… すまんの。海馬といい、この霊布といい、迷惑かけたな〉
──礼に、困った事があればいつでも頼ってくれ。どこに居ても、恩返しに行くからのぉ
そう言って、雪だるまさんは正六角形の、綺麗な氷の結晶をくれた。
「魚の一種なんですか? まだ、竜の仲間って言う方が納得しますけど」
そもそも、上半身馬だったのはどうなったんだろう……
「この魚は、東海では、海馬と言われているんだ。海の馬とね」
「じゃ、やっぱりケルピーちゃんなんですか?」
私の手のひらでくったりしている青味がかった黒いお魚──小粒のドラゴンみたいだけどお魚らしい──が、さっきまでサラマンダーと対等に戦っていたお馬さんだなんて……
「はっ! お魚に戻っちゃったなら、お水が要るんじゃ…… ああ、海のお魚なら、海水かな。どこにどうすれば」
〈妖精だから、大丈夫にゃ! コハがお水を少しあげたらよくなるにゃ〉
チットちゃんの言う通りに、サッシェからクリスに買ってもらったガラス瓶を出して、ケルピーちゃんを入れ、水筒を出そうとしたら、雪だるまさんが粉ほど小さく軽い氷の粒を分けてくれる。
〈それを一緒に入れて、瓶を両手で温めてやってくれ。召喚主の魔力霊気が効くだろう〉
言われた通りに両手で瓶を包むようにしてケルピーちゃんが元気になりますようにと願うと、氷で〆ちゃうんじゃないかと心配したけどちゃんと溶けてお水になり、沈んていたケルピーちゃんがぷかりと浮いてくる。
中のお水が少しだけ光ってるなと思ったら、ケルピーちゃんは背ビレをピラピラさせて泳ぎだした。
「よかった! 気がついた?」
〈仮主の手を煩わせてしまい申し訳ない〉
「これくらいいいよぅ。あの暴走サラマンダーと戦ってくれたんだもの。みんなちゃんと怪我もなく助かったわ」
元気になるまで、喚び出した者として責任を持って、このまま瓶の中で飼う事にした。
〈おいおい飼い魚じゃないぞ?〉
「わかってるよ、とってもカッコイイ鱗と鬣が綺麗なケルピーちゃんは妖精さんだもんね」
〈そういう事じゃないんだが……〉
〈……ぷちゅっ〉
目の前で、さっきまで済まなそうだったのに今は微笑ましそうに、私達のやりとりを眺めていた雪だるまさんが、可愛いくしゃみをした。
「たいへん、風邪引いちゃった? 寝てたのに起こしてごめんなさい?」
〈妖精だから風邪は引かないが、首元がスースーするのぅ。ここ、少し欠けてしまったみたいでな、霊気が漏れてしまうんじゃよ〉
言われてみれば、首……はないけど胴体と頭の接合面に近い肩の辺りに、雪がひと塊分欠けたようなところがあって、氷室のような冷気は、そこから漏れているようだった。
「冷気(霊気)が漏れつづけたら、大変な事になるんじゃないの?」
〈そうさのぅ、ワシはまだまだ平気じゃが、一所に居続けたら、そこの気候が変わってしまって、色々生態系とか天候とか困るかもしれんの〉
「それは、結構問題なのでは?」
精霊術士のターレンさんが、少し焦ったように訊ねる。
教会で読んだご本にも、環境や生態系と人の暮らしの問題提起がテーマの難しいものもあったので、なんとなく大変なことだというのは解る。
〈寒さに弱い動植物は困るじゃろな〉
「これ、使ってください。……作りかけで、房飾りが片側にしかついてないけど、首に巻くのはできると思います」
首がスースーするというので思いついたのが、冬に向けて、アレフやクリス達に編み始めていたマフラーである。
練習も兼ねて、長く模様編みをところどころ入れて(ちょい歪な所もあるけどきっとエドガーは気にしない)一番長く編んだエドガー用の黄色い羊毛フェルト100%の手編みマフラーである。
お兄ちゃんが毛刈りをして、お父さんが煮たり洗ったりして、お母さんが紡いだ天然のフェルト糸である。暖かいぞぉ♪
草木染めは毎年、家族・親戚総出でやる事になっている。
〈おお、温かいぞ、霊気の漏れも治まったようじゃ…… すまんの。海馬といい、この霊布といい、迷惑かけたな〉
──礼に、困った事があればいつでも頼ってくれ。どこに居ても、恩返しに行くからのぉ
そう言って、雪だるまさんは正六角形の、綺麗な氷の結晶をくれた。
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