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コハク、遊び人Lv1 初めての大きな依頼に緊張シマス

じゅーいち。『黒いビロードのような毛並みに金の鬣。馬の上半身と青黒い鱗のお魚の下半身』──荒ぶる水棲妖精ケルピーちゃんが来てくれました!

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     🐴

 黒いビロードのような毛並みにサラサラの金髪のたてがみ
 力強い前脚には奇蹄類のヒヅメ、逞しい筋骨隆々の上半身はお馬さん。
 腰から先の後ろは、刺々しい背ビレと尾ヒレのついた、青黒いつやつや鱗のお魚さん。後脚はなくて、水を叩きつける大きな腹ビレ。

 ──どうやって立ってるんだろう

 またしても、妖精なんだから物理法則は無視すればいいのに、変なとこ気になって集中力が途切れる。

「こりゃまた、随分と気性の荒いのが来たもんだな」

 テイマーのラジエさんは、口笛を吹いて感激?していた。

 ケルピーちゃんは、ブルルン鼻を鳴らし、ドカドカ前脚を踏み鳴らし、さっきまではなかったと思うけど今は足元にある水溜りの飛沫を上げながら、サラマンダーを睨んている。

〈暗い……正気がナイ、話は出来ぬ。殺るしかナイナ〉

 魔獣ではなくて妖精さんなので、ちゃんと意志の疏通は出来るみたい。よかった。

「よかった、ちゃんとカッコいいのが来てくれて」
「「「そこ!?」」」

 まわりの先輩方のツッコミが入る。

〈ウィヒヒーン。仮主のお気に召したようでナニヨリ。ここは水辺ではないからな、さくさくイカセテもらう〉

 前脚で水溜りを踏み鳴らすと、波打ち、せり上がった水が、鋭い刃物のようになって飛んでいく。

 サラマンダーは空中にいるけど器用に躱し、水塊は炎に触れたところは蒸発しながら、背後の木に当たってなぎ倒していた。

〈む? イカン、妖精郷が傷んでシマウマ〉

 謎のダジャレを飛ばして、ケルピーちゃんは、姿勢を変えた。前脚を上げて上半身を高く上げ、その場で前脚を、宙を蹴るようにかき回す。

 繰り出す前脚の蹄から、水の塊が、勢い良くサラマンダーに向かって飛んでいく。
 その数がどんどん増えていき、サラマンダーも躱しきれなくなっていく。

 水蒸気が立ち昇り、まわりの気温も湿度も上がってサウナのようになっていくと、次第に私達の体力が搾られ始める。(HP 57/69)←ちょっとだけ基礎体力上がってる

〈ニャゥニャウ〉

 チットちゃんが、跳ねて行き、ケルピーの頭に乗ると、ケルピーの繰り出す水塊の狙いが外れなくなる。さすが【豪運】ラック無限大

 ズシーン ズシーン と、地響きがどこからともなく響いてくる。

「なんだ? サラマンダーも倒せてないのに、新手か?」

 精霊であるサラマンダーが、正気を失って暴走しているためか、まわりの精霊も安定せず、アネッタさんの魔術も精度・威力共に落ち、ターレンさんは精霊術そのものがうまく発動しない。
 この地の精霊の霊力値プレッシャーが高過ぎて魔獣も寄ってこないので、魔獣使いのラジエさんも見守るだけである。

 キールさんは、自身の愛剣──妖精銀ミスリル製の刃に魔力を載せて叩きつけることで牽制にはなっているが、斃せるほどの効果ではない。
 フィルタさんの魔剣はそこそこ傷つける事は出来たけれど、サラマンダーもさすが精霊だけあって、妖精郷に内包するマナを吸収して、せっかく攻撃が入ったのに素早く回復してしまうので、文字通り焼け(蜥蜴)に水状態である。妖精郷の外ならばまた、違ったのかもしれない。

 そんな、全員が決め手を出せない状況で、だんだん近づいてくる不気味な地響き。
 そろそろ、私は転びそうになるほどの揺れで、地面が跳ねている。

 どごーん

 ケルピーとサラマンダーの戦いを見守っていた私達の目の前で、両者の上に白い大きな塊が落ちてきて、ふたりはぺしゃんこになってしまった。

 いったい、なんなの~?









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