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コハク、遊び人Lv1 初めての大きな依頼に緊張シマス
さん。『気楽に進めたのは、最初の1時間だけでした』──出るわ出るわ、野生動物のオンパレードです
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🐗
気楽に進めたのは、最初の1時間だけでした。
馬車を停めた森の入り口も、街道も、見えなくなってしばらくすると、突然チルちゃんの警戒アラームが鳴き響いた。
〈ニャニャーン!! ギャニャニャー!!〉
チルちゃんが鳴くのとほぼ同時に、動物や魔物を使役する調教師のラジエさんが、やや遅れて探索家のギレウォッタさんが周りを警戒する。
魔剣士のフィルタさんも異変は感じたらしく、愛刀(反りの入った片刃刀)の鯉口を切った。
キールさんはすでに、物理防御力をあげる魔法を自身にかけていた。
「みなにも、物理防御を強化しましょう」
なんだか、身体がほかほか温かくなる。よく目に見えない膜を張るという表現を聞くけど、目に見えた。
私の『癒しの夜光石の杖』を発動させた時と似た淡い薄緑の光が、まるで私の身の内から湧き出るかのように発光していた。
「その通りだよ。君たちの防御力を、妖精たちの使う魔法で底上げするんだ。その光は、君の生命力と森のマナが活性化したものだ」
おお、これが妖精魔法。クリスの神聖魔法は真珠のような色合いの純粋な光だったけど、かけられた対象の私達への効果は視覚化しなかった。
全員に防御力をあげる魔法がかかった時、タイミングよく、進行方向から砂煙が立ち上り、左手の茂みからも茶色い巨大な塊が飛び出してきた。
「ワイルドボア?」
ひとことで言えば、野生の豚さんである。
ただ、家畜としての手入れはないので長く硬い牙があるし、食肉用に育てられたわけでもないのでボサボサの毛皮が、魔力を吸収して鎧のように硬くなっているのである。
まだ冒険を始めた頃のアレフは、魔力を通せないただの剣で刃を通せなくて、クリスの鎚鉾とエドガーの槍斧の方が効果が高かったっけ。
トドメをさしたのは、剣が役に立たなかったアレフの火炎球である。
レベルの低い冒険者にはなかなか強敵である。
進行方向から立ち上った土煙も、興奮したワイルドボアが走って来てその地を蹴る勢いで立ったものだった。
猪突猛進、なんて言葉があるけれど、実際には、走りながら曲がれるし障害物があれば停止できる。
あの時は、猪突猛進なんて誰が言ったんだと、みんな慌ててたっけ……
一つ所に固まって立っていても戦いにくいので、適度に散らばる。
〈ニャニャーン〉
「うん、わかるよ。あれは、チットちゃん達の【威嚇】も効かないんでしょ? 効いてても知らん顔で走り続けそうだしね」
申し訳なさそうに、チットちゃんが跳ね寄って来て私の肩にとまる。
茂みから飛び出してきたボアは、調教師ラジエさんの飛び出す風呂敷に驚いて、急停止、そのまま驚いているのか、彼と睨み合う。
あれ、どうやって広げてるのかな。手元でたたまれた風呂敷が、手を伸ばしたら投網のように広がって、ボアの視界を遮って、意識を逸らしたみたい。
突進してきたボアは、半身で避けただけのフィルタさんがすれ違い様に振り下ろした刀──軽く振り下ろしただけに見えた──で首を落とされ、そのまま数m走り抜けて倒れた。
「わぁっ フィルタさんカッコいい!」
びっくりした顔でこちらを見て、私と目が合うと目の下を赤くして、ついとそっぽを向いた。わあ、アレフよりもシャイなお兄さんだ。
気楽に進めたのは、最初の1時間だけでした。
馬車を停めた森の入り口も、街道も、見えなくなってしばらくすると、突然チルちゃんの警戒アラームが鳴き響いた。
〈ニャニャーン!! ギャニャニャー!!〉
チルちゃんが鳴くのとほぼ同時に、動物や魔物を使役する調教師のラジエさんが、やや遅れて探索家のギレウォッタさんが周りを警戒する。
魔剣士のフィルタさんも異変は感じたらしく、愛刀(反りの入った片刃刀)の鯉口を切った。
キールさんはすでに、物理防御力をあげる魔法を自身にかけていた。
「みなにも、物理防御を強化しましょう」
なんだか、身体がほかほか温かくなる。よく目に見えない膜を張るという表現を聞くけど、目に見えた。
私の『癒しの夜光石の杖』を発動させた時と似た淡い薄緑の光が、まるで私の身の内から湧き出るかのように発光していた。
「その通りだよ。君たちの防御力を、妖精たちの使う魔法で底上げするんだ。その光は、君の生命力と森のマナが活性化したものだ」
おお、これが妖精魔法。クリスの神聖魔法は真珠のような色合いの純粋な光だったけど、かけられた対象の私達への効果は視覚化しなかった。
全員に防御力をあげる魔法がかかった時、タイミングよく、進行方向から砂煙が立ち上り、左手の茂みからも茶色い巨大な塊が飛び出してきた。
「ワイルドボア?」
ひとことで言えば、野生の豚さんである。
ただ、家畜としての手入れはないので長く硬い牙があるし、食肉用に育てられたわけでもないのでボサボサの毛皮が、魔力を吸収して鎧のように硬くなっているのである。
まだ冒険を始めた頃のアレフは、魔力を通せないただの剣で刃を通せなくて、クリスの鎚鉾とエドガーの槍斧の方が効果が高かったっけ。
トドメをさしたのは、剣が役に立たなかったアレフの火炎球である。
レベルの低い冒険者にはなかなか強敵である。
進行方向から立ち上った土煙も、興奮したワイルドボアが走って来てその地を蹴る勢いで立ったものだった。
猪突猛進、なんて言葉があるけれど、実際には、走りながら曲がれるし障害物があれば停止できる。
あの時は、猪突猛進なんて誰が言ったんだと、みんな慌ててたっけ……
一つ所に固まって立っていても戦いにくいので、適度に散らばる。
〈ニャニャーン〉
「うん、わかるよ。あれは、チットちゃん達の【威嚇】も効かないんでしょ? 効いてても知らん顔で走り続けそうだしね」
申し訳なさそうに、チットちゃんが跳ね寄って来て私の肩にとまる。
茂みから飛び出してきたボアは、調教師ラジエさんの飛び出す風呂敷に驚いて、急停止、そのまま驚いているのか、彼と睨み合う。
あれ、どうやって広げてるのかな。手元でたたまれた風呂敷が、手を伸ばしたら投網のように広がって、ボアの視界を遮って、意識を逸らしたみたい。
突進してきたボアは、半身で避けただけのフィルタさんがすれ違い様に振り下ろした刀──軽く振り下ろしただけに見えた──で首を落とされ、そのまま数m走り抜けて倒れた。
「わぁっ フィルタさんカッコいい!」
びっくりした顔でこちらを見て、私と目が合うと目の下を赤くして、ついとそっぽを向いた。わあ、アレフよりもシャイなお兄さんだ。
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