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琥珀・もうすぐ14歳・♀・遊び人Lv.1!
にじゅいち。『環境調査と、変異体の掃討及び原因を取り除き元の森に戻す作業の協力依頼。ということでいいのかな?』──何やら大変そうです
しおりを挟む「環境調査と、変異体の掃討及び原因を取り除き元の森に戻す作業の協力依頼。ということでいいのかな?」
「はい」
「してくれ、じゃなく?」
ちょっと意地悪そうに訊ねるギルマス。
「当然です。一族の存亡の危機に、他人の手を煩わせるのです。どうして高みの見物が出来ましょうか?」
「ま、もっともだわな。で? 一族の意志、と言ったな? 全員、納得してるのか? 他者を招き入れ、手を借りる事を」
「……満場一致で諸手を上げて、とは行きませんが、力及ばす一族が滅亡するよりかはいいと、わだかまりがある者も若干名いますが、それでも反対はありませんでした」
「よくあるのよね~。よそ者の手など借りぬ!とかって、非協力的な住民とかさ。大抵、何か問題起こすからさ、そういうの」
「それはないように、私も目を光らせますし、そう言っていられない状況ですから」
キールさんて、森人たちに、にらみが効く地位にいる人なのかな?
「それでも、誇りを捨てるなら、森とともに死ぬとかって、脳筋戦士系によく見られる傾向。そこんとこ、大丈夫なのか?」
「長とルーナ様の名の元に、一族の総意となれば、不満があれども従うでしょう。我々人間のように、一個人の感情で反発したり足の引き合いなどはないかと」
〈それをするようなら、妖精族たらず、森人たり得ないかと思います〉
良くはわからないけど、森や一族のためなら、感情を抑えられるという事なのかな?
「まあ、一応、それは信用する事にしよう。ていうか、そこが信用できない状況であれば、協力は出来ないからな」
「ごもっともです」
「キールさんは、人間なの?」
森人のお姫さまを護ってここまで来た騎士だけど、お耳や体も普通の人みたいだし、森人の言葉を話すけれど、私達の共用語も流暢に話しているので、ちょっとだけ、気になった。
第一「我々人間」って言った。から、人間なんだよね?
「ほぼ、人間です」
「ほぼ?」
森人に拾われて育てられた子供が大人になり、郷の若者と恋をして、キールさんが生まれたという。
「森人の特徴もなく、魔力も人間にしてはあるなという程度。精霊と交信はできるが郷の誰よりも下手で、妖精魔法は使えない」
それでも、母体──母親が森人ならもっと魔法も精霊術も特出したはずなのに、人間の母親ベースに生まれたゆえに、人間だけどちょっとだけ妖精寄りかな?っていう程度しか森人の力は受け継がなかったのだという。
それは、きっと大変な幼少期を過ごしたに違いない。
そして、森人の中で暮らし、森人であろうと敵わぬ努力を続けてきたキールさんだからこそ、女神の祝福を持たずに勇者にもっとも近いと言われたギルマスをリスペクトしているのだろう。自分の境遇を重ねていたのかもしれない。
「必要な手はなんだ? 精霊使いは森人にもいるんだろう?」
「もちろん、殆どの者が精霊と交信できますが、この物質世界に住まえども本来は妖精族。強い意志を保っていてもやがて、瘴気に感染して正気を失った精霊に引きずられてしまう。協調しすぎるのです」
「そ、それはヤバイな、一緒には行かないほうがいいかもしれん」
「ですから、妖精族のように、瘴気に引きずられない、環境の異変や魔属化した動植物の扱いに慣れた、人間の、冒険者の協力が必要なのです」
強い意志を宿した眼を、まっすぐにギルマスに向けるキールさん。
「魔属化した動植物や環境に造詣の深い、精霊を鎮める力のある者と、恐慌状態で暴れる魔獣に負けない強者。大勢で行って連携できずに二次災害になる恐れもあるし、出来れば少数精鋭で数名、手をお借りしたい」
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