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琥珀・もうすぐ14歳・♀・遊び人Lv.1!
じゅうご。『ナーヴさんの話だと、何もない空間から突然血だらけの男性が現れたのだそうだ』──女性を護る騎士か、はたまた人拐いか?
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🕍
冒険者紹介調整士のナーヴさんの話だと──
ギルドの建物の外──入り口正面に、大きな魔力が発生し、何人かで確認に出た所、何もない空間に揺らぎが出来て、突然、泣いている女性を抱えた血だらけの男性が現れた。
「空間転移!? 鎧を着てるが、魔導師か?」
かなりの量を失血しているようで、真っ青というより灰色の顔をして、男性は建物の中に入って来て、ふらふらと進んで女性を丁寧に下ろすと、そのままばったり倒れてしまった──
「結局、何もわからん。突然、どこか別の場所から血だらけの男が現れてぶっ倒れた。女性も、恐らくは男を助けてくれと言ってるんだろうが、現状では、仲間なのかそうじゃないのか、彼女を護衛していたのか、はたまた拐ってきたのか…… どうにもこうにも言葉が通じないんじゃなぁ」
ギルマスは、後ろ頭をガリガリと掻きむしる。
「ターレンがエルフ語を試してみるが、反応は悪い。通じてないのか、彼氏がぶっ倒れて動揺してるのか、それも判らん」
ハーフエルフの精霊術士ターレンさんは、エルフ語が日常会話程度ならできるらしい。
それも虚しく、あまり通じてる風はないという。
「神殿の偉い人が来ると、もしかしたら入国管理局へ通達されたり、異教徒と見なして治療はしてもらえんかも知らんからな、コハクの、例のおばあさんの杖、試してみてくれるか?」
「はい。ずいぶん血だらけですけど、かなりの大怪我ですか? 鎧は外したほうが……」
「怪我の具合もわからん。触らせてもらえないからな」
それも大変だなぁ。
とりあえず、いつも肩から提げているイチゴのポーチから『癒しの夜光石の杖』を取り出して、ゆっくり驚かさないように、ふたりに近づく。
それでも、女性は怯えた感じに身を縮め、青ざめて私を見上げる。
「あっ ちょ、チットちゃん!?」
ぴょんこぴょんこ
チットちゃんがぽよぽよと身を震わせて、跳ねて二人に近づく。
ぶわっ
本当に「ぶわっ」って感じでチットちゃんが広がり、男性の顔から肩辺りを覆い尽くす。
窒息しないのだろうか?
「おわっ やっぱりソイツ、スライムだったのか?」
職員達に、どよめきが走る。
私は、手のひらサイズのおまんじゅうくらいだったチットちゃんが、あんなに広がった事に驚いた。
チットちゃんの中で、チリチリと火花のような光が散って、どんどん男性から血が消えていく。
「お、おお? 血を食ってるのか?」
それはそれで怖い。チットちゃん、血の味は覚えないでね。
冒険者紹介調整士のナーヴさんの話だと──
ギルドの建物の外──入り口正面に、大きな魔力が発生し、何人かで確認に出た所、何もない空間に揺らぎが出来て、突然、泣いている女性を抱えた血だらけの男性が現れた。
「空間転移!? 鎧を着てるが、魔導師か?」
かなりの量を失血しているようで、真っ青というより灰色の顔をして、男性は建物の中に入って来て、ふらふらと進んで女性を丁寧に下ろすと、そのままばったり倒れてしまった──
「結局、何もわからん。突然、どこか別の場所から血だらけの男が現れてぶっ倒れた。女性も、恐らくは男を助けてくれと言ってるんだろうが、現状では、仲間なのかそうじゃないのか、彼女を護衛していたのか、はたまた拐ってきたのか…… どうにもこうにも言葉が通じないんじゃなぁ」
ギルマスは、後ろ頭をガリガリと掻きむしる。
「ターレンがエルフ語を試してみるが、反応は悪い。通じてないのか、彼氏がぶっ倒れて動揺してるのか、それも判らん」
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それも虚しく、あまり通じてる風はないという。
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「はい。ずいぶん血だらけですけど、かなりの大怪我ですか? 鎧は外したほうが……」
「怪我の具合もわからん。触らせてもらえないからな」
それも大変だなぁ。
とりあえず、いつも肩から提げているイチゴのポーチから『癒しの夜光石の杖』を取り出して、ゆっくり驚かさないように、ふたりに近づく。
それでも、女性は怯えた感じに身を縮め、青ざめて私を見上げる。
「あっ ちょ、チットちゃん!?」
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チットちゃんがぽよぽよと身を震わせて、跳ねて二人に近づく。
ぶわっ
本当に「ぶわっ」って感じでチットちゃんが広がり、男性の顔から肩辺りを覆い尽くす。
窒息しないのだろうか?
「おわっ やっぱりソイツ、スライムだったのか?」
職員達に、どよめきが走る。
私は、手のひらサイズのおまんじゅうくらいだったチットちゃんが、あんなに広がった事に驚いた。
チットちゃんの中で、チリチリと火花のような光が散って、どんどん男性から血が消えていく。
「お、おお? 血を食ってるのか?」
それはそれで怖い。チットちゃん、血の味は覚えないでね。
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