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琥珀・もうすぐ14歳・♀・遊び人Lv.1!

いち。『アレフ達と別れて最初のお仕事は草原の植物採取です』──七つ葉のフィリシールという幸せの葉っぱです☘

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     🏞️


 アレフ達と別れて最初のお仕事は、街の外に出てすぐの草原にまばらに生えているはずの、七つ葉のフィリシールという植物を見つけてくる事。

 故郷の教会で、薬草や香草ハーブを育てていた事から取得した、私の三つしかない技能スキルのうち唯一冒険者ハンターとして役立ちそうなものが【薬草学ピュロニカル】である。Lv1だけど……

 たとえLv1でも、技能スキルを持たない人と違って、似た植物と間違えたり、扱いに失敗しにくい効果がある。

 フィリシールは、よく似たものにフィロシラという植物があって、その違いはわかりやすく言うと、レンゲ草(本当はゲンゲ。レンゲは『蓮華』ハスのことで誤認)とシロツメ草みたいな感じ?

 見た目はかなり似ている。

 フィロシラは、六つ葉だったり八つ葉だったり環境で変わるし、実際は葉っぱじゃなくてガクで、花の付け根部分である。

 フィリシールは、生長が悪くない限り七つ葉で、極々小さな白い花が咲く。

 フィロシラは、休耕中の畑に植えてると、地中に栄養が蓄えられて土が肥えるのでよくあちこちで見かける。特に葉(ガク)を食べる習慣はない。
 フィリシールは、その葉をスリコギで潰して汁を薬に混ぜたり、繊維質を織物に混ぜて使えば虫除けになる。

 でも、フィリシールの採取を依頼されるのは、違う意味がある。

 フィリシールの中でも、とりわけよく育ったものに、花が少し大きくて虹色のものがあり、名前の通り、幸運を呼ぶと言われ、お祝い事の生花や贈り物のリボン部分につけるコサージュ、プロポーズやお見舞いの花束などに混ぜるために、集められるのだ。

 困ったことに、フィロシラも、日のよく当たる場所で育つと、三割くらいの確率で虹色の花がつく。ただし小さいままだけど。
 別に験担ぎなだけならそれでもいいじゃないかと思われるけど、やはりプロポーズやお見舞いなら、ちゃんとしたものを使いたいのが人情というもの。

 ハーブ園で栽培されたフィリシールは、何故か虹色の花を咲かせないので、こうして冒険者ハンター協会ギルドへの依頼があるのである。



 街を出る時、門番の人が、あれ?って顔をした。

 いつもなら、アレフ達と居る私が、ひとりで街を出るのだ。譬え名前を憶えてなかったとしても、顔は判るだろうから(そうでないと門番は務まらない)不思議なのだろう。

「こんにちは」
「こ、こんにちは。いい天気だね。でも昼から出かけるのかい? ひとりで大丈夫かい?」

 私のギルドカードを確認しながら、顔色を覗うように挨拶にかこつけ、いろいろ訊いてくる門番のお兄さん。
 ギルドで、パーティ脱退を申告した後すぐに、様子見で、一人でできる依頼を受けてみたのだ。

「はい。私ひとりで、植物採取です」
「うん、薬草学があれば、安心だね」

 ──でも。本当にひとりで大丈夫かい?

 心配してくれてるのだろうけど。そのために、技能スキルは隠蔽しないで見せたのだ。Lv1だけど。

「この子達が一緒だから、大丈夫です」

 頭の上のチルちゃんと、肩でふるふると〈任せろー〉伸び縮みして主張しているチットちゃんをアピールして、大丈夫だと伝える。──伝わらないけど。

「そ、の子達…… スライムを調伏支配したのかい?」
「違いますよ。妖精さんです。スニャイムって種族です」
「スライムとどう違うの?」
「ブロブ(流動性不定形生物)じゃないので、触れても溶けたり痺れたりしませんし、生き物を捕食したりしませんよ? 可愛いでしょ?」

 同意は得られなかった。可愛いのに。






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