29 / 276
暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?
にじゅうく。『あの時は、オウジサマがプロポーズして来た!と思ったんですよ』──私の思い出話に、ギルマスが香草茶を吹き出した
しおりを挟む「あの時は、オウジサマがプロポーズしてきた! と思ったんですよ。今なら笑い話ですけど、当時は、都会って凄い、こんな事があるんだと思いました」
ブフーッ
ギルマスが、飲みかけの香草茶を吹き出す。
「ちょ、マスターなんて事するんですか! 誰が掃除すると思うんです」
目を釣り上げて、アミナさんがギルマスを責める。
「あ、いや、すまん。まさか、そう来るとは思わなくてな…… ハハハ プロポーズ?」
「もちろん、私の聞き間違いですけど。アレフは、ギフトのおかげで、たまに鑑定技能が隠蔽魔法を上回るみたいで、私の運気999が見えちゃったらしいです」
「ほう? あの頃のアレフの鑑定能力はLv2、ギルドカードの隠蔽は無効化出来ないはずだがな?」
──さすがは、【英雄】の変数補正か。
ギルマスは、納得・感心して頷く。
「それで、私の能力値を見てしまったことを謝ってくれて、その上で、『私と共に生きないか?』って言われて」
「初対面で、いきなり一生をかけたプロポーズかよ」
「だから、私の聞き間違いですってば。共に行かないかって、冒険に誘ってくれてたんですよ!」
「ああ、行くね。うん。まあ、そんなとこだろうとは思うが…… ブフッ 共に生きようって……14のガキが、11の正真正銘のガキに、ぷふっ」
なんか、ツボに嵌まったのか、笑いが抑えられないらしいギルドマスター。
「もーぉ、そうやって馬鹿にしてぇ。私だって、よく考えたらありえないってわかりますよぅ。ただあの時は、衝撃的で」
「うんうん。人生初のプロポーズにときめいちゃったのね」
「金髪碧眼のきらきらオウジサマだったから、現実味がなさ過ぎて違和感をスルーしちゃったというか」
──❂チットが、技能を取得しました
突然、脳内ベルが鳴る。なんだろうと思ってみてると、テーブルの上のギルマスの吹き出した香草茶を、チットちゃんがうごうごと吸収していく。
「あら、この子、お茶を嗜むの?」
布巾を持ってきたアミナさんが、チットちゃんを軽くつつく。
【家事】Lv1(召喚主の身のまわりを整える)
吸収した香草茶は、お茶の成分と水分に分解され、水蒸気を噴出した後、お茶成分がちりちり光を放ちながら、消えていく。
「なんだか、家事スキルとして、飛び散ったお茶を処分してるみたい」
「偉いわねぇ」
辺りに飛び散ったお茶を、順番に片付けていくチットちゃん。
「それで、お返事はどうしたんだい?」
「その前に、まわりに冷やかされて、クリスに回収されました」
「ん? 冷やかされたの?」
「まわりにも、プロポーズに聴こえたのかしら?」
「? はい。なんか、掲示板の前で、他の見たい人の邪魔になってるのに突っ立ってるから、イチャイチャするなって……」
「う~ん、その場にいたかったなぁ」
「そんなに面白いですか?」
「そりゃあもう。ここ数年で聞いた中ではピカイチ面白かったぞ」
涙目で笑いをこらえるギルマス。意外に、笑いの沸点が低いらしい。
「それで! 離婚しましたので、しばらくソロでいきますって言いに来たんですよ、本当は!!」
「グフッ 離婚~!! ん? ソロ? 誰かとパーティ組まないのか?」
当てつけに、パーティメンバー登録解消を離婚と置き換えて言ったら、またウケた。涙目、ではなく、本当に涙がこぼれてる。
「まあ、すぐには別の人をって気にはなれないし」
「傷心のバツイチ娘」
「この子達もいますから、難易度の低い依頼ならなんとかなると思いますし……」
任せろと言いたげにチットちゃんが縦に伸び縮みし、楽しげにふるふるとチルちゃんが横に伸びて右へ、横に伸びて左へと、踊るように存在をアピールした。
「この子達を妖精だと信じて受け入れてくれる人じゃないと、一緒に行動できないと思うので、縁があって、共に冒険したいなってなるまで、ゆっくりひとりでやっていきます」
0
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる