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暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?

にじゅうひち。『君の価値は、それだけじゃない』──ギルマスは、興奮気味に教えてくれた

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「君の価値は、それだけじゃない」

 ギルマスは、興奮気味に教えてくれた。私の、冒険者ハンターとしての職業クラスの事。

「遊び人…… なんだか、だらけた怠け者みたい」
「違う! そうじゃないんだ。コハク。恥じることは無い。それは、とても稀有な職なんだよ」

 誰も、なろうとしてなれるものではない、特別な職業だと言う。


「俺もお目にかかったのは初めてだ。もしかしたら、亡くなった君のおばあさんも同じだったかもしれないね?」
「おばあさんは、遊び人じゃないです! とても勤勉で、お家の事も、お針子仕事も、羊の世話だって、なんでも出来る人でした!」
「わかってるよ、コハク。素晴らしい魔導具作家アーティファクターなのは、君のサッシェや鑑定単眼鏡アプレィズモノクルを見ればわかる」

 ──現代公用語に直すと『遊び人』と言う響きが印象悪いが、本当はそうじゃないんだ。

「でも、大抵の人は、私と同じ感想を持ちますよね?」
「……そうかも知れない。各ギルドマスターや魔法に長けた国の王家、国家の魔導師協会の賢者くらいしか、知らないかもしれない、いや、彼らもよくは解ってないかもしれない」
「誰も知らないんなら、やはり遊んでる人のイメージが先行したまんまなんじゃ……」
「悪いが、そうかもしれないな。だが、本当に、【遊び人ハイブロウ】は、大昔の勇者のパーティにいたそうだし、何百年か前までは、上位貴族には数人いたんだ」
「勇者さまや偉いお貴族さまに多い職業なんですか?」

 うまく説明できないのがもどかしいらしく、ギルドマスターは、頭を掻きむしったり、両手を組んでもじもじしたり、ちょっとイライラしてるみたい。

「そうだね。賢者と呼ばれる知識の収集家の世捨て人や、金銭面でも精神的にも生活に余裕のある上位貴族に得られるクラスだと言う事はわかっているんだ」
「……世捨て人と裕福な貴族ではなんだか両極端で、共通項が見つけにくいですね。そして、どちらも私から縁遠そう……」

 人間より羊の方が多く住んでる田舎から出てきた、なにも出来ない、特筆するような技能スキルも持っていない、11歳の庶民の小娘。全然、接点は見当たりません。

「どちらにしても、印象が悪ければ信用が得られないかもしれませんし、かと言って開示してもうまく説明もできないので、とりあえず隠します」
「すまない、しばらくはそうしてくれ」

 教えてもらった通りに、ギルドガードの表記内容を隠していく。
 隠しすぎて、何も残らない気がしないでもない。

「ま、まあ、職業を隠しても、その無限収納袋をただのマジックバッグで登録して、役割ロールで運搬・補佐系の職だと思われるだろう」
「力持ちじゃなくても、マジックバッグで、荷物係が出来るんですね?」
「そうだ。何も【豪腕】がなければサポーターが出来ないわけじゃない」

 戦闘職や魔術師は、あまり荷物を持ちすぎると、イザという時に戦えないと困るので、荷物管理を担当したり、身の回りの下仕事をしながら、戦闘補助をする縁の下の力持ちな人も少なくないという。

「戦闘職や魔術師が派手に目立つのは仕方ないが、サポーターも大切な役割だよ」







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