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暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?
にじゅうろく。『その事は、誰にも言ったらだめだ』──親切なオジサンは怖いギルマスに変身しました
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「その事は、誰にも言ったらだめだ」
優しい親切なオジサンは、怖いギルマスに変身した。
「え? おばあさんの素晴らしさを自慢しちゃだめなの? もういないのに。身体を置いて、たくさんの妖精さんと旅に出ちゃったの。もう、迷惑はかからないと思うけど」
「そ、そうか。亡くなってるのか、残念だな。それでも、だ。おばあさんのためじゃない。コハク。君のためだ」
「私?」
「君のそのおばあさんの魔法の小袋は、お金には変えられないものだ」
「形見だもの」
「そうじゃない。いいかい、よく聴くんだ。マジックバッグって言って、空間拡張魔法がかかってる、見た目よりたくさん物が入る袋は、世の中には幾つかある」
ただし、拡張してたくさん入る、というだけだ。なんでも全部、無限に入る訳じゃない。俺も冒険者として結構渡り歩いたが、無限収納は初めて見た。
それが欲しいと、君を騙して買い取ろうとする人もいるだろうし、断ったら殺してでも奪おうとする奴も出てくるだろう。
「殺されちゃうの?」
「かもしれないね。手放すまで虐められたり、死んだ方がましな目に合うかもしれない」
ギルマスは、畳み掛けるように威してくる。
その、癒しの杖も、聖職者が厳しい奉仕活動の末にやっと神から与えられる神聖術や、精霊術士が研究と訓練を重ねてやっと身につける回復魔法が、その杖を振るだけで使えるんだ。薬草のように消耗もしない。便利だね?
便利だからこそ、みんな欲しいと思うんだよ。
だから、誰が悪い人で誰がいい人かわからない内は、秘密にして、全部話しちゃだめだ。いいね?
「……ギルドマスターは? 欲しいと思うのですか?」
「欲しいね。その鑑定単眼鏡と無限収納袋は、冒険者でなくても、どんな場面でも役に立つ。杖もあれば凄いし、それで人を治療して稼ぐことも出来るね。俺はそんな商売はする気はないし、今は旅にも出ないからなくても良いが、あれば心豊かに暮らせる」
だから、人に凄いものを持ってると、ひけらかしたらだめだよ。
私は、強く頷いた。まあ、その後、すぐにアレフ達には一部喋っちゃったけど。
「解りました。信頼できる人に会えるまで、それとなく隠していきます」
「そうしろ。それから」
「まだ何か?」
「アイテムだけでなく、君自身の価値、と言っただろう?」
「私? なんの技能もない、田舎でも役立たずだったけれど」
「適材適所と言う言葉があるだろう。田舎の町で、普通に暮らすには効果の薄い技能だと言うだけだよ」
「そうでしょうか」
鑑定単眼鏡をつけて自分を鑑定してみても、特に目立った能力はない。
「薬草学だって、著名な薬草を幾つか知ってて、育てた事がある、見間違わないってくらいで、お薬に調合できる訳じゃないです」
「素地があるんだから、いい薬師に師事すれば、調剤や製薬が開花するかもしれないね」
「薬師……大変だけど、人の役に立つ仕事ですね」
お金が貯まったら冒険者をやめて、落ち着く頃に習う職業として候補に入れておこう。本来のどん臭ささが仇にならなきゃいいけれど。
「薬草学は、まあ、そんなに珍しい技能じゃないよ」
「え? じゃあ?」
「まずは、そのラックがMaxなのは常に隠しておきなさい」
「常に、ですか? 依頼主と交渉する時に、こんな能力ありますって見せるんでしょう?」
「だが、身体能力値でもっとも上がりにくいのが、このラックなんだ」
筋力や俊敏さは、身体を鍛えれば上がるだろう。知力や精神力もそれなりの訓練法と言うものがある。
だが、運だけは、人の力では鍛えられないんだ。
よほど幸運に恵まれた人でも、100~250あれば強運だと言われている。
しかし、君は、人のステータスとしては最高値だ。それ以上は上がらない。
君のおばあさんといい、君を取り巻く環境は、とてつもなく強い運で繋がっているんだろうね。
それは、人に見せてはいけないよ。
そう言って、ギルドカードの、人に見せたくない部分を隠す機能の使い方を教えてもらった。
「その事は、誰にも言ったらだめだ」
優しい親切なオジサンは、怖いギルマスに変身した。
「え? おばあさんの素晴らしさを自慢しちゃだめなの? もういないのに。身体を置いて、たくさんの妖精さんと旅に出ちゃったの。もう、迷惑はかからないと思うけど」
「そ、そうか。亡くなってるのか、残念だな。それでも、だ。おばあさんのためじゃない。コハク。君のためだ」
「私?」
「君のそのおばあさんの魔法の小袋は、お金には変えられないものだ」
「形見だもの」
「そうじゃない。いいかい、よく聴くんだ。マジックバッグって言って、空間拡張魔法がかかってる、見た目よりたくさん物が入る袋は、世の中には幾つかある」
ただし、拡張してたくさん入る、というだけだ。なんでも全部、無限に入る訳じゃない。俺も冒険者として結構渡り歩いたが、無限収納は初めて見た。
それが欲しいと、君を騙して買い取ろうとする人もいるだろうし、断ったら殺してでも奪おうとする奴も出てくるだろう。
「殺されちゃうの?」
「かもしれないね。手放すまで虐められたり、死んだ方がましな目に合うかもしれない」
ギルマスは、畳み掛けるように威してくる。
その、癒しの杖も、聖職者が厳しい奉仕活動の末にやっと神から与えられる神聖術や、精霊術士が研究と訓練を重ねてやっと身につける回復魔法が、その杖を振るだけで使えるんだ。薬草のように消耗もしない。便利だね?
便利だからこそ、みんな欲しいと思うんだよ。
だから、誰が悪い人で誰がいい人かわからない内は、秘密にして、全部話しちゃだめだ。いいね?
「……ギルドマスターは? 欲しいと思うのですか?」
「欲しいね。その鑑定単眼鏡と無限収納袋は、冒険者でなくても、どんな場面でも役に立つ。杖もあれば凄いし、それで人を治療して稼ぐことも出来るね。俺はそんな商売はする気はないし、今は旅にも出ないからなくても良いが、あれば心豊かに暮らせる」
だから、人に凄いものを持ってると、ひけらかしたらだめだよ。
私は、強く頷いた。まあ、その後、すぐにアレフ達には一部喋っちゃったけど。
「解りました。信頼できる人に会えるまで、それとなく隠していきます」
「そうしろ。それから」
「まだ何か?」
「アイテムだけでなく、君自身の価値、と言っただろう?」
「私? なんの技能もない、田舎でも役立たずだったけれど」
「適材適所と言う言葉があるだろう。田舎の町で、普通に暮らすには効果の薄い技能だと言うだけだよ」
「そうでしょうか」
鑑定単眼鏡をつけて自分を鑑定してみても、特に目立った能力はない。
「薬草学だって、著名な薬草を幾つか知ってて、育てた事がある、見間違わないってくらいで、お薬に調合できる訳じゃないです」
「素地があるんだから、いい薬師に師事すれば、調剤や製薬が開花するかもしれないね」
「薬師……大変だけど、人の役に立つ仕事ですね」
お金が貯まったら冒険者をやめて、落ち着く頃に習う職業として候補に入れておこう。本来のどん臭ささが仇にならなきゃいいけれど。
「薬草学は、まあ、そんなに珍しい技能じゃないよ」
「え? じゃあ?」
「まずは、そのラックがMaxなのは常に隠しておきなさい」
「常に、ですか? 依頼主と交渉する時に、こんな能力ありますって見せるんでしょう?」
「だが、身体能力値でもっとも上がりにくいのが、このラックなんだ」
筋力や俊敏さは、身体を鍛えれば上がるだろう。知力や精神力もそれなりの訓練法と言うものがある。
だが、運だけは、人の力では鍛えられないんだ。
よほど幸運に恵まれた人でも、100~250あれば強運だと言われている。
しかし、君は、人のステータスとしては最高値だ。それ以上は上がらない。
君のおばあさんといい、君を取り巻く環境は、とてつもなく強い運で繋がっているんだろうね。
それは、人に見せてはいけないよ。
そう言って、ギルドカードの、人に見せたくない部分を隠す機能の使い方を教えてもらった。
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