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暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?

にじゅうさん。『何事もなく街まで戻れたので冒険者ギルドにパーティから抜けたことを報告』──ちょっと寂しいけどひとりじゃない

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 何事もなく街まで戻れたので、冒険者ハンター協会ギルドに、アレフのパーティから抜けたことを報告しなきゃ。寂しいけど。

 その代わりと言ってはなんだけど、この子達がいるもんね。



「すみません、契約内容の変更をお願いしたいんですけど……」

 街に戻ってまっすぐ一番に、冒険者ハンター協会ギルドに立ち寄る。
 カウンターには、いつもの、私達の受付をしてくれる担当のお姉さんが暇そうにしていた。

 まだお昼だもん、帰ってくる協会会員ギルドメンバーは少ないよね。

「あら、コハクちゃん、どうしたの? みんなと宵風の森に行ったんじゃなかったの」
「うん。それで、契約内容変更届を出しに来ました」
「変更? 何か問題でも?」
「私、アレフのパーティから抜けたので、しばらくソロで……」
「工ェェエエ工工!!」

 び、びっくりした。

 談話室と同じで、カウンターの各受付口には、左右に遮蔽板があって、遮音の魔法がかけられており、お姉さんの叫びは、後ろの冒険者たちには聴こえない。
 依頼内容や依頼主、ダンジョンやマジックアイテムなどの秘密を話す事になる場合もあるので、受付担当員とメンバー、当事者同士しか会話できないシステムなのだ。

「ちょ、ちょっと待って?」
「はい。急ぎませんので、ごゆっくり」

 お姉さん、青い顔して、ステータス異常『恐慌パニック』軽微 の表記とともに奥へ。具合悪くなったのかな? 大丈夫かな。事務所内の職員たちも、少し動揺しているみたい。

 私の頭にチルちゃんは載ったままで、他の冒険者たちもガン見してる。可愛いでしょ?

「いや、可愛いかどうかじゃねぇだろ、頭、溶けねぇのか?」
「溶けないよ。この子達、スライムじゃないもん」
「いや、どう見てもスライムだろ」

 もー、どうしてそんなこと言うの? そりゃ私も最初はジェリーの仲間かと思ったけど…… あ、ゴメン、チットちゃんが〈スライムじゃないもん〉と主張してる。

「お前、スライムの言うことが解るのか?」
「だから、スライムじゃないもん。可愛いでしょ? 妖精さんだよ」
「妖精……それが?」

 みんな信じてくれないのか、チットちゃんをつついてみる人もいた。

「一口に妖精と言っても、いろんなのがいるだろ。代表的なのはピクシーだが、トレントやコボルドみたいに植物や動物の姿をしてるのや、建物や岩だってあるじゃねぇか。スライムに似てるなんざ、見た目も大きさも可愛いほうだろうがよ」

「あ、マスター」

 左目の上から頬にかけて縦に大きな傷が走っている、渋めのイケメン。この冒険者ハンター協会ギルド協会長マスターさんだ。見たまま、元凄腕の冒険者らしい。

「コハク、ちょっとツラ貸しな。奥で菓子でも出してやる」

 チルちゃんをぷるんとつついたあと、私の背を押してカウンターの奥に案内してくれる。

 すれ違いざまに、チットちゃんをつついてた軽装中衛職のお兄さんの耳元で、コソッと呟くギルマス。

「メルビル。せっかくの技能スキルが泣くぜ? よく見てみな」

 チルちゃんの鑑定と、ギルマスのセリフからもわかる。メルビルさんは、偵察・遊撃手のレンジャーで、Lv1だけど【目利き】を持ってる。
 鑑定ほど詳細には解らなくても、判別は出来るみたい。

「おお、本当に妖精族だ。嬢ちゃんとの契約も安定してる。使役妖精テイムフェアリーか」

 まわりの冒険者たちもどよめいた。








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