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暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?

じゅういち。『外殻の硬い魔物を鉄の棒で殴ったら、両手が痺れました』──こと戦闘に関しては、一般人なみです

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 外殻の硬い昆虫系の魔物を センチピート 、先に槌頭のついた鉄の棒で殴ったら、両手が痺れました。(62/65)
 普通は片手で使うんだけどね。

 この鉄製槌杖アイアンメイスは、腕力のない私でも、殴りつけたら叩き潰せると、アレフが買ってくれたものだ。
 けど、今まで殆ど使ったことがなかった。

 戦闘中に、私の出番はなかったから。




 エドガーが、身長の7割方隠れる大盾でみんなを守り、隙あれば槍斧でハルバード 突いたり斬ったりし。

 アレフが自身に能力値ステータスUPの補助魔法をかけたり、敵を攪乱するのに攻撃魔法を叩き込んで、怯んだ隙に素早くロングソードで薙ぎ払ったり。

 キャロラインは、学んだ魔法を試すのが嬉しいらしくて、単体へ火球を投げつけたり、氷の槍をぶっ刺したり。
 細かいザコが群がったときには、全方位に火の矢ファイアアローを飛ばしたり。

 みんな大活躍で、私のやる事は殆どなかった。

 それでも、クリスの神聖魔法のレベルが低くて、まだ回復魔法が使えなかった頃は、私の、お祖母さんの形見『癒しの夜光石のヒーリングルミナスストーンロッド』が大活躍だった。

 今では回復魔法も使えるようになって、戦闘中も(聖職者は刃物を振りかざすことを禁じられているから)鋼の鎚鉾メイスで、詠唱中の無防備なキャロラインや貧弱な私に向かってくる魔物を、殴って追い払ってくれている。
 ちなみに、鎚鉾メイスの鎚頭部のデザインは、私のとお揃いデス。

 この状況から見るにどうやら、クリスの言った、私のためのダンジョン潜行や、アレフの言う試しとは、私も戦闘に参加して、経験値を積めるかって事なのだろう。

 まあ、出会ってから2年、お料理技能スキル以外、みんなLv1のまんまだもんね……


「コハク、もっと、外殻の薄い所や、関節なんかを狙ってください。貴女の力では、外殻は破れませんよ」
「う、うん、頑張る」

 見かねたクリスからのアドバイスが飛んでくる。

「全く。2年間、なにをしていたのだ。ホレ、押さえててやるから、頭を強打して脳振盪させてみろ。動かなくなれば、お前でもやれるだろう?」

 いつもはあまり絡んでこないエドガーも、槍斧のハルバード 先で大百足センチピートの頭のすぐ後ろの関節を刺して、押さえてくれた。

 クワガタみたいな大きな顎をガチガチ鳴らしながら、威嚇してくる大百足。

「あっ、バカかっ」

 頭を狙って、槌杖メイスを振りかざしたとき、槍斧から逃れたい大百足が、長い身体をくねらせそり返し、波打ちながら槍斧の長い柄に巻きついていく。

「きゃん」

 ジタバタする大百足の跳ねた身体に弾かれて槌杖メイスは飛んでいき、キャロラインの足元に。
 私はお腹を強く打たれて吹っ飛び、岩壁に激突するところを、アレフに抱き留められる。
 勢いがあったため、私を抱き込むようにして受け止めたアレフごと、壁に打ちつけ、ずるずると床に崩れた。(51/65)
 アレフには特にダメージはなく、私を受け止めたせいでバランスを保てなくて、一旦体勢を崩しただけのようだ。

「ん、もう! 危ないわね、武器を手放すんじゃないわよ」

 ちょっとだけ怒るキャロラインが、得意の全方位型火の矢ファイアアローを放ち、周りにいた蛞蝓スラッグやジェリーはすべて蒸発する。

 呆れたエドガーが、大百足に槍斧を振るって、戦闘は終了した。




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