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暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?
なな。『街の外に出る時も、アレフとクリスで顔パスです』──毎回ギルドカードも市民徽章も不要です
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🛂
街の外に出る時も、アレフとクリスが、いわゆる「顔」で、毎回ギルドカードとか市民徽章を見せなくても通過できるようになってしまってる。いいのかな。
「アレフさま、今日も討伐ですか」
「いや、ちょっとした試しなんだ。近場だから、すぐに帰るよ」
──試しってなんだろう? 新しい装備品の点検とかかな?
門番もそう思ったのだろう、にこやかに頷いて、街の外へ出るゲートへ私達5人を通してくれた。
❈❈❈❈❈❈❈
森までの街道で、行商人や朝早くから農牧地へ出てる農民とすれ違う。
クリスは、新しく産まれた家畜や季節ごとの収穫への祝福を祈りに行く事も多く、農民と顔見知りなので、みんな気さくに声をかけてくれる。
クリスもにこやかに片手を挙げて応えてる。
農牧地を抜けて草原へ。すぐ向こうに森が見えている。
広葉樹が多く『宵風の森』と呼ばれる森で、昼間はそこそこ光が射して明るいが、宵の口になると、真っ暗になる直前に生温かい風が吹き、完全に陽が落ちると様相は一転、魔物が闊歩する魔の森と変わるのである。
なぜか、魔物は草原へは殆ど出て来ない。
この森を縄張りにしている種族に限るけど。
草原や街道には、少ないけれどそれなりに、動植物が魔物化したモノや、人を襲う野生動物、商人を狙う盗賊なんかも出る事もある。
でも、神様からのギフト『英雄』を持っているアレフと一緒に行動していると、そういうのに出会った事はない。
彼らと出会って2年間、一度もである。
神様からの祝福って、凄いね。
森に入ってからも、木蔭で小さなジェリーとか、節足動物や巨蜂なんかもこちらを覗っていたけど、近寄っては来ない。
アレフさまさまだね。
背後の森の入口や街道が見えなくなった辺りに、巨岩が立っていて、遠目にはただの岩。
近寄ってみると、ぱっと見、何かの石碑のようにも見える。
一部の、磨かれた鏡面のような部分に古代文字が書かれていて、メンバーでは、魔導師や賢者を目指しているキャロラインと、教養の高いアレフ、神殿や王立図書館によく行ってお勉強してるクリスが、全文ではないものの少し読める。
──私? もちろん、読めませんよ。
上流階級の人達の仲間にいるけど、ただの田舎娘だもん。
「解錠せよ」
アレフが、つるつるになった部分の、ある古代文字を指でゆっくりなぞりながら、呪文を唱えると、岩の表面に水面の波紋のようなエフェクトがかかり、アレフの腕が岩に沈んでいく。
ダンジョンへの入口が開いたのだ。
そのままアレフが振り返り促すと、まずは大盾を構えたエドガーが、岩に突進──ぶつかることなく溶けるように中へすり抜けていく。
続けて、一旦振り返って私と目を合わせ、岩に背から倒れ込むように凭れ、そのまま呑み込まれるようにクリスが、更に、ローブの裾を摘まんでお上品にキャロラインが敷居を跨ぐようにひょいと、同様にゲートを潜っていく。
「コハク。行くよ」
魔力がない私のために、アレフが手を差し出してくれる。
まるで舞踏会でパートナーに預けるかのように、そっと、金属板のついたグローブに、私の右手を乗せた。
街の外に出る時も、アレフとクリスが、いわゆる「顔」で、毎回ギルドカードとか市民徽章を見せなくても通過できるようになってしまってる。いいのかな。
「アレフさま、今日も討伐ですか」
「いや、ちょっとした試しなんだ。近場だから、すぐに帰るよ」
──試しってなんだろう? 新しい装備品の点検とかかな?
門番もそう思ったのだろう、にこやかに頷いて、街の外へ出るゲートへ私達5人を通してくれた。
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森までの街道で、行商人や朝早くから農牧地へ出てる農民とすれ違う。
クリスは、新しく産まれた家畜や季節ごとの収穫への祝福を祈りに行く事も多く、農民と顔見知りなので、みんな気さくに声をかけてくれる。
クリスもにこやかに片手を挙げて応えてる。
農牧地を抜けて草原へ。すぐ向こうに森が見えている。
広葉樹が多く『宵風の森』と呼ばれる森で、昼間はそこそこ光が射して明るいが、宵の口になると、真っ暗になる直前に生温かい風が吹き、完全に陽が落ちると様相は一転、魔物が闊歩する魔の森と変わるのである。
なぜか、魔物は草原へは殆ど出て来ない。
この森を縄張りにしている種族に限るけど。
草原や街道には、少ないけれどそれなりに、動植物が魔物化したモノや、人を襲う野生動物、商人を狙う盗賊なんかも出る事もある。
でも、神様からのギフト『英雄』を持っているアレフと一緒に行動していると、そういうのに出会った事はない。
彼らと出会って2年間、一度もである。
神様からの祝福って、凄いね。
森に入ってからも、木蔭で小さなジェリーとか、節足動物や巨蜂なんかもこちらを覗っていたけど、近寄っては来ない。
アレフさまさまだね。
背後の森の入口や街道が見えなくなった辺りに、巨岩が立っていて、遠目にはただの岩。
近寄ってみると、ぱっと見、何かの石碑のようにも見える。
一部の、磨かれた鏡面のような部分に古代文字が書かれていて、メンバーでは、魔導師や賢者を目指しているキャロラインと、教養の高いアレフ、神殿や王立図書館によく行ってお勉強してるクリスが、全文ではないものの少し読める。
──私? もちろん、読めませんよ。
上流階級の人達の仲間にいるけど、ただの田舎娘だもん。
「解錠せよ」
アレフが、つるつるになった部分の、ある古代文字を指でゆっくりなぞりながら、呪文を唱えると、岩の表面に水面の波紋のようなエフェクトがかかり、アレフの腕が岩に沈んでいく。
ダンジョンへの入口が開いたのだ。
そのままアレフが振り返り促すと、まずは大盾を構えたエドガーが、岩に突進──ぶつかることなく溶けるように中へすり抜けていく。
続けて、一旦振り返って私と目を合わせ、岩に背から倒れ込むように凭れ、そのまま呑み込まれるようにクリスが、更に、ローブの裾を摘まんでお上品にキャロラインが敷居を跨ぐようにひょいと、同様にゲートを潜っていく。
「コハク。行くよ」
魔力がない私のために、アレフが手を差し出してくれる。
まるで舞踏会でパートナーに預けるかのように、そっと、金属板のついたグローブに、私の右手を乗せた。
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