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暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?

ろく。『今日は、特別メニューです』──宵風の森の奥、若いダンションに潜ります

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     🏞️

「コハク。今日は、特別メニューです。
 この近くの、宵風の森へ行きますよ」

 クリスが、上位貴族でも珍しい、深い緑の眼を細め、優しげに、私の背を押して促す。

 クリスとアレフは、上位貴族らしい綺麗な金髪と緑の眼をしていて、その顔立ちも、神殿にある神々を模した彫刻のように、整った顔をしている。
 王族には、古代の神々の血が入っているという、お伽話を信じたくなるほどだ。

「宵風の森って、初心者向けなんじゃないの?
 あ、何かの依頼?」
「ええ。森の奥に、比較的攻略難易度の低い、若いダンジョンがあるでしょう? そこへ潜ります。
 ……貴女のためですよ」
「わたし? 私のためって?」
「行けば判ります」

 普通の冒険者達なら、寝袋や現地で調達できない保存の利く食料、傷に塗る脂膏ワセリン体力回復薬スタミナポーションなんかを用意してから、装備品の最終点検の後、出発するものだけど、私達は、いつでもすぐに行ける。

 私のいちご型ポーチと、アレフのマジックザックに、そういった必需品は常備してあるからだ。

 一度冒険が終わると、協会ギルドに報告した後に、買い換えの必要な小道具や消耗品などは、買い足しておく習慣になっている。
 アレフのマジックザックと私のポーチは、中味が劣化しないから、依頼達成後のお金が潤沢にある時に、先に補填しておくのだ。

 魔物退治なんかの緊急招集があった時に、いち早く対応して、忘れ物などをしないためでもある。

 依頼に合わせて、その時その時の必要品がある時もあるけれど、たいていは、備えからまかなえている。

「いつもの荷物だけで大丈夫ですよ、幼いダンジョンですからね」

 優しいお兄さんのように微笑むクリス。実際4歳年上だけど。

「何かいいもの、落ちるドロップするかしらね~」

 キャロラインも鼻歌混じりにご機嫌だ。
 いつもの彼女なら、難易度の低いダンジョンなんて、面倒くさがりそうなのに、なにかいい話でも聞いたのかしら……

 アレフとエドガーは、先に協会ギルドの外に出ている。
 みんな、やる気満々だなぁ。

 お天気もいいし、いいことあるといいな。

 まさか、あんなものに取り囲まれる事になるとは思わなかったけど。

 この時はまだ、いつもの通りの、みんなで仲良くダンション踏破になると信じていた──






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