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暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?
ごぉ。『水深数㎝ほどの水溜まりに波打つ波紋が盛り上がり、その頂点が、私めがけて伸びてくる』──ブロブに遭遇、ひとりで、どうにかなるのかな?
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⛲
浅い、水深数㎝ほどの水溜まりに波打つ波紋が盛り上がり、その頂点が、私めがけて伸びてくる。
「わにゃにゃにゃ……!」
なんとか避けて、通路の先へ逃げる。
私は、アレフのように素早く動けないし、エドカーのように攻撃を禦ぐ盾も持っていない。
クリスのように魔物を追い払う聖なる光も灯せないし、キャロラインのように魔法攻撃も出来ない。
ハッキリ言って、出来る事は殆どない。
このブロブ(流動性不定形魔生物)は、今のところ強烈な酸を吐き出したり、炎や氷を飛ばしたりしないだけ、いい方だ。
もしかしたら毒を持っているかもしれないけど、触って確かめたりする気はないし。
たいていは、その液体っぽいゼリー状の身に、獲物を呑み込んで閉じ込め、少しづつ溶かして吸収するのである。
要は、捕まらなければいいのだけど、こう見えて以外に動きは早い。
ふるふるし出したら、要注意。
慎重に、後退りしながら、ブロブの動きを観察していると、
──ジュッ
私のポンチョの右端が蒸発する。
「え? 嘘でしょう」
振り返った右後ろに、もっと大きな、それこそ犬や豚なんかも丸呑み出来そうなブロブが二体、ふるふるしていた。
「ど、どこから……」
天井、壁、床。あちこちの岩肌の隙間から、染み出した液体が纏まり盛り上がって、何体ものブロブになっていく。
最初の一体は水溜まりだと思ったくらい、無色に近い透明なものだけど、ポンチョを蒸発させた右後ろのは、赤黒かった。強酸である。
天井から滴って来たやつは黄色っぽくて、ゾウリムシとかアメーバのように彼らの内臓が見える。ペーズリー模様みたい。
そして、溶かしかけの何かの骨も見えた。
私の事も同じようにしようとしてるのだろう。
確か、黄色いのは、体液に触れると、手足が痺れるんだったかな…… やだな。
触らないように攻撃するにしても、霧状に噴き出してくるんだよね、近寄れない。いや、近寄りたくない。
「うう…… アレフぅ、キャルぅ」
この場にいない、魔法で攻撃出来る2人の名を、呪文のように唱える。勿論、なんの効果もないし、彼らが助けに現れるわけでもない。
それでも、祈りのように、名を呼ばずにはいられなかった。
有効な攻撃手段を持たない私を、パーティのお荷物として、解約した彼ら。
今日は、わざわざ、拠点にしてる街の近くの森に行くと言ったのを、おバカな私は、不思議に思わなかった。
冒険に慣れてない初心者や、冒険者登録をアルバイト感覚で行って、小遣い稼ぎに薬草採りや初級の魔物退治を請け負う、殆ど一般人の若者などが行くような場所である。
そこに、比較的攻略難易度が低いダンジョンがあると、私のために行くと、クリスは言った。
──攻撃手段を持たない私のために
おかしいと、思うべきだったのだ。
浅い、水深数㎝ほどの水溜まりに波打つ波紋が盛り上がり、その頂点が、私めがけて伸びてくる。
「わにゃにゃにゃ……!」
なんとか避けて、通路の先へ逃げる。
私は、アレフのように素早く動けないし、エドカーのように攻撃を禦ぐ盾も持っていない。
クリスのように魔物を追い払う聖なる光も灯せないし、キャロラインのように魔法攻撃も出来ない。
ハッキリ言って、出来る事は殆どない。
このブロブ(流動性不定形魔生物)は、今のところ強烈な酸を吐き出したり、炎や氷を飛ばしたりしないだけ、いい方だ。
もしかしたら毒を持っているかもしれないけど、触って確かめたりする気はないし。
たいていは、その液体っぽいゼリー状の身に、獲物を呑み込んで閉じ込め、少しづつ溶かして吸収するのである。
要は、捕まらなければいいのだけど、こう見えて以外に動きは早い。
ふるふるし出したら、要注意。
慎重に、後退りしながら、ブロブの動きを観察していると、
──ジュッ
私のポンチョの右端が蒸発する。
「え? 嘘でしょう」
振り返った右後ろに、もっと大きな、それこそ犬や豚なんかも丸呑み出来そうなブロブが二体、ふるふるしていた。
「ど、どこから……」
天井、壁、床。あちこちの岩肌の隙間から、染み出した液体が纏まり盛り上がって、何体ものブロブになっていく。
最初の一体は水溜まりだと思ったくらい、無色に近い透明なものだけど、ポンチョを蒸発させた右後ろのは、赤黒かった。強酸である。
天井から滴って来たやつは黄色っぽくて、ゾウリムシとかアメーバのように彼らの内臓が見える。ペーズリー模様みたい。
そして、溶かしかけの何かの骨も見えた。
私の事も同じようにしようとしてるのだろう。
確か、黄色いのは、体液に触れると、手足が痺れるんだったかな…… やだな。
触らないように攻撃するにしても、霧状に噴き出してくるんだよね、近寄れない。いや、近寄りたくない。
「うう…… アレフぅ、キャルぅ」
この場にいない、魔法で攻撃出来る2人の名を、呪文のように唱える。勿論、なんの効果もないし、彼らが助けに現れるわけでもない。
それでも、祈りのように、名を呼ばずにはいられなかった。
有効な攻撃手段を持たない私を、パーティのお荷物として、解約した彼ら。
今日は、わざわざ、拠点にしてる街の近くの森に行くと言ったのを、おバカな私は、不思議に思わなかった。
冒険に慣れてない初心者や、冒険者登録をアルバイト感覚で行って、小遣い稼ぎに薬草採りや初級の魔物退治を請け負う、殆ど一般人の若者などが行くような場所である。
そこに、比較的攻略難易度が低いダンジョンがあると、私のために行くと、クリスは言った。
──攻撃手段を持たない私のために
おかしいと、思うべきだったのだ。
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