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暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?

しい。『とりあえず、真ん中の太い通りを進む』──まわりを気にしながら、ビクビクと

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     🔦

 とりあえず、まわりを気にしながら、真ん中の太い通りを進む。

 湿ってんな~。

 ピチョン

 背後で、天井からしたたしずくが時折路面を打つ音が響き、とってもビックリする。

 ナニかがいるような気がして、ビクビクする。

 おかしいな、私って、こんなに臆病だったっけ?

 響くのは、地を踏む私の靴音と、時折滴る水の音だけ。

「……そうか」

 いつもは、アレフやクリス、エトガーとキャロラインがいて、みんなで歩くから、例え無言でも怖くなかったんだ。

 ジワジワと『光灯る魔女のワンド』の光が届く範囲が狭くなってくる。もうすぐ消えるのかな?

 軽く振れば、再び明るくなる。

 と、目の端でナニかが動いた気がした。

 じっと見るけど、水溜まりがあるだけで、とくになにもない。

 ふるん

 ん? 今、水溜まりの位置が変わった?

 光源(ワンド)を動かしてるから、影が変わってそう見えただけかな。

 よせばいいのに。とにかく人間って、知識欲強いんだよね。なにかよくわからないものがそこにあると、不安で仕方ない。
 なんでもないものだと確認したくなるのだ。

「ほ、ほら、ただの水溜ま……り……?」

 その岩肌を染み出した水の溜まったもの……にしか見えなかったただの水溜まりのハズが、水面の波紋からにゅうっと盛り上がる。

「うっそ! ブロブ(流動性不定形生物)!?」

 ぷるぷるとか、ぶよぶよ、ネバネバなどの擬音を意味する異国の言葉で、スライムとかジェリーとかが有名代表的なモンスターだが、アメーバなどの単細胞生物、クラゲ、魔族や邪妖精の宿った粘土質の魔法生物なんかも、その分類に含まれる事がある。

 これは、そんな上級な魔法生物ではなく、スライムか、瘴気に汚染した水霊のようだ。

 だけど、単純な魔物だけに、私にとっては、タチが悪い。

 特殊能力や強力な攻撃手段を持っていない単純な魔生物だけに、生命力だけはやたらある。
 そして、そのたいていが、物理攻撃が効きにくいのだ。

 全く効かない訳ではないだろうが、その生命力の強さから、再生力の方が上回っているだけ。
 つまり、火力が強大で有効な攻撃を、再生スピードが追いつかないほどに連続して叩き込まないとならないのである。

 キャロラインの得意な火焔魔法のような……

 そして、私には、そんな能力スキルはなかった。





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