男はエルフが常識?男女比1:1000の世界で100歳エルフが未来を選ぶ

ひらだいら

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4話 施設長の寺田さん

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俺は今、施設の待合室で一人掛けソファに座りながら外を眺めている。

転生先は前世と同じ日本で時代も文明的には同じぐらいだった。

文明的にというのは100年前が平成後期で、100年後の今は令和初期みたいな感じだ。

危惧してた乱世に巻き込まれることは”まだ”なく、
恵まれた時代・国でまたも生まれ育つことが出来た。

100年あれば色々変わると思うかもしれないが、
意外に変化は少ない。

縄文時代なんて約1万年続いたとか伝わる時代がある位だ。
100年で目まぐるしく変わることもあれば、その切っ掛けもなく穏やかに時が流れることもあるんだろう。

ただ、そうだな・・・太陽光の力だけで走るソーラーカーが普通に走っていたりする。
確か、前世にもソーラーパネルで動く車があったような気がしたけれど、ものすごく高額でとても庶民が手を出せるような物じゃなかった。

それに、前世ではソラーパネルの廃棄問題が嘆かれていたような気がするが、
この世界だとそもそも問題とされている環境汚染を引き起こす有害物質を含まず製造出来ているようだ。
普通のゴミの分類で出せる。

もしかしたら名前が同じなだけで根本が違う製品のかもしれない。

まぁ、前世と全く同じかというとそうじゃない所もあるという事だ。
ッパ、と思い浮かばないけどどこか前世より劣化?してるところもあるんだろう。

社会不安とかは前世と比べると危機感が凄い。

医療費負担とか今が4割で、5割になるのではないかと危惧されている。
※男の場合は医療費負担0


リンリン
【施設長:寺田ガ来マス。】

腕時計が機械音声で待ち人を知らせてくれた。
アッ○ルウォッチみたいに色んな機能が備わっている。

とある機能のために殆どの男性が形は違ってもこの機器を身に着け、
女性は対になる機能を持つブレスレットやイヤリングにネックレスを付けていることが多い。

コンコンコンコン
「寺田です。」

「どうぞ」

「はい」

入ってきたのは寺田さんは、
この【男性保護施設クロノス】の施設長で40代後半の女性だ。

坊主に近い短髪で、頭の形が良いからかそれが似合っていて
溌剌(はつらつ)さとミステリアスな雰囲気を両方を醸し出している。

「大変お待たせいたしました。」

寺田さんはソファーに座らずに一入所者である俺に頭を下げた。

「いや、こちらが急な呼び出しをしたんだから気にしないで」

さっさ、と座ることを促す。

気持ち的には若いけど俺は100歳なのと、畏まり過ぎると不審がられるので今までの態度と変わらない感じで接する。
簡単に言うと相手は敬語なのに自分はため口だ。

寺田さんがソファに座ったので俺は早速話すことにした。

「少し、確認したいことがあってね。この前お見合いに興味無いかって聞いてたでしょ?」

「はい」

「この前は何の考えもなく断ったけど、どこからか圧力でもあったの?」

「いえ、何もご心配されることはありません。安心してください。」

寺田さんは驚くしぐさを見せず答えた。

「でも、寺田さんって野心が強いタイプじゃないでしょ?
握手会とかじゃなくていきなりのお見合いの話なんて変だよ。」

俺は20歳の時から施設にいるから何となく施設長の傾向が分かる。

「”ちゃんと話はしたんですけど、男性に断られてしまいました。”って事実が欲しかったんじゃない?」

寺田さんは【男性保護施設クロノス】の施設長を10年やってる。
前任者は少し野心が高かったのか男性を利用して出世しようとしていた。

そのせいなのか割とすぐ寺田さんに変更になった。

寺田さんが今まで自粛していた可能性は0じゃないけど、
前回お見合いの話を断ったらすぐ引き下がったし、
今も「そうなんです。上が無茶言って困ってるんです。」と言わず否定するあたり、
現状維持や男性に無駄な負担を増やしたくない考えを持っていると思われる。知らんけど。

「・・・・・・」

「俺、全然怒らないから言ってみてよ」

男に関する施設や組織は複数あり、それぞれ名が付けられている。
男性保護施設・センターの場合は男神や植物から名がとられる場合が多い。

俺が住んでる施設クロノスは、時の神様のクロノス神からきている。男性が快適な時間を過ごせますようにと願いを込めて施設名に選ばれたそうだ。

「・・・男性保護施設には関係のない事ですが、
近ごろ人手不足や増税に医療費負担増大の話などが国民の心を荒れさせています。」

なるほど・・・人手不足もあるのか、
あれかな?高い給料じゃないと誰もやりたがらないよ的な感じ?
それとも純粋に猫の手も借りたい状態なのか?

とりあえず頷いておく

「そこで、一部の者が男性にも動いてもらえるように声かけをべきではないかと声を上げまして」

ここの動いてもらうべきというのは握手会や施設見学などの奉仕活動の事だ。

外国の刑罰の代わりに課せられる社会奉仕活動とは違い。
れっきとした仕事で報酬が出る。

勿論、他の事で働いている男も職種・職場は限られるが少なくない。

ただ、ここでの話はおそらく施設員関係者での会議とかの話だろう。

「クロノスは皆様のおかげで奉仕活動には積極な方なので何も問題は無かったのですが・・・」

寺田さんは言いにくそうに

「とある人物が、『お見合いなどの実績は殆どない消極的だ』と試しに自分の娘を練習台にしろなどと言い出しまして」

「わぁ・・・それは大変だったね。」

とある人物というのは、寺田さんからしたら上の立場の人か厄介な人だったんだろう。

「いえ、建前があれば問題ありませんので安心してください。」

・・・・・・

「俺、これから婚活するかもしれないんだけど、関わらない場合はその人物は怒りそう?」

寺田さんは今までに見たこともないほど目を見開いた。
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