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1話 東京在住でゾンビパニック

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ゾンビ?を倒したのは20日目

親父がゾンビになった23日目

俺が強盗を殺したのは52日目

俺と親父はゾンビパニックの初動を風邪で気付かず。阿鼻叫喚の惨状を前に籠城を選んだ。


90日目(2030年5月)

「・・・東京で(約)3か月も生き残るなんてなぁ」

と言っても自宅マンションの籠城生活な上、幸運な事に火事の被害を受けなかったからだが・・・

ベランダから見る景色、向かい側は焼け朽ちた店や形は残っているが住めそうもない煤だらけのコンクリマンション。

ゴミ袋の口をきつく縛りを4階のバルコニーからなるべく遠くに投げ捨てる。下にいる”ゾンビ達”に当たろうがもう何とも思わない。

いや、もしも意識とか痛覚とか残ってらごめんな。

「・・・食糧計画どうするかな」

10日ごとに1日に食べる量を見直している。
今まで強盗を警戒して最低限動けるを基準にして食べる量を決めてきたが、救助も強盗も音沙汰が無い。

生存日数を伸ばすため、いつもより食べる量を減らすことにした。まずは10日分を選んで1日分ごとにビニール袋に振り分ける。
今日分の食料は机の上に、9日分はリュックに入れる。そして残りの食料はプラスチックの収納に入れてその上や側面に服を入れて隠し押し入れに戻した。

「次の10日分はリュックに入れてある(9日分食料とは別)ごま油かオリーブオイルどちらか開けてさらに粗食にするかな?」

油だけあってカロリーは高いだろうし、開封済みのは既に消費したから分かるが油を単体で飲むのは俺にはキツイは分かってるから固形食料があるうちに一緒に消費しといた方が良いだろう。最期の食事が調味料類というのは面白くない。

残りの備蓄はそこまで多くない。最終的には絶食の日も入れながらの消費になっていくだろう。

日本に生まれて17歳で餓死するかもしれない状況になるなんて思わなかった。

机の上に置いてある映画のDVDのパッケージを見る。
親父が好きだった後味の悪い映画

親父の最期の言葉はこの映画を見るたびに主人公に向けて呟く言葉だった。

「『あと10分だけ自殺を思いとどまれ』か」

映画の内容は、のどかな街に突然現れる凶悪無情なテロリスト達。阿鼻叫喚のなか主人公は恋人と一緒に街からの脱出を目指すが、唯一気づかれず残されたと思われた逃げ道も潰されている事を知り全てを諦めて恋人と薬を飲み心中する。エンドロールあとに救助隊が現れ恋人だけがタンカで運ばれるが結局病院で息を引き取る。という報いのない終わり方をする映画だ。

俺は母親は俺が小さい頃に病気で亡くなって、親父に育てられた。仕事と家事で忙しい中、親父は週に一回の親子での映画の時間を作った。母親が好きだったという歴史ものや実際のモデルがある映画の他に、たまにホラーだったり子供には難しくてつまらない映画の時もあったが良い時間の過ごし方だった。

「・・息子に自殺を許さず餓死に導くなんて趣味が悪いぞ親父」

苦笑しながら今後の事を考える。
動ける今の内に食料調達をしたいが、マンション4階内は親父と一緒に20日目で探索済みで、23日目にはゾンビ化寸前の残されたわずかな時間を親父は俺のためにと追加で食料調達してくれた。マンション内で食料が残っている事は余り期待出来ないだろう。

マンションから出ての食料調達もしくは拠点移動は・・・世田谷程の人の多い場所でないにしろ東京内なだけありゾンビが多すぎて無理。1カ月以上前に来た強盗がここに辿り着けたのは相当ゾンビの生態を知っていたか、ただ運が良かった知らないご近所さんだったんだろう。

ガシャァアン!!

「!?・・・」

突如のガラスが割られるような音がした。
俺は窓側から離れしゃがんだ。(ここ4階である事、バルコニーの壁で自分の姿は見えないだろうと思ったが念のため)

さっきごみを捨てた時に風が強いとかそんな事は感じなかった。ゾンビがガラスを割ったかと思ったがパニックからもう90日経ってる割れるガラスなんて割りつくしてるだろう。

という事は誰かがゾンビから逃げているか、音を立てゾンビをそこに集めているかだ。

「まずいな・・」

バルコニーにはSOSと書いた布を掲げている。
優先してこの部屋に来るかもしれないし、まだ生きている俺を見たら物資を持ってる思われるのは確実。

助けが来たと純粋に喜べるほどもうバカじゃない。

ゴゴォ!!ガシャァ!!ドォオオ!!!

連続して何かが破壊される音がする。
そして気のせいでなければ建物が揺れてる気がする。

「・・・・」

戦車や重機は・・無いな。自衛隊関連の施設なんて近くに無かったはずだしウヨウヨいるゾンビに乗り捨てられた車など道が機能してない所を工事で使うような重機がここまで進行出来るとは思えない。
一体・・日本でどんな武器を使ってるんだ?

押し入れに隠れるか、玄関かバルコニーから逃げるかだ。俺は状況確認のため慎重に窓に近づきながら横目ですぐ使えるよう置いてあった物資を確認した。リュックにロープそして竹刀。

ガァアアゴォオン!!!

窓とは反対側・・玄関側が壊れた。崩れた。吹き飛んだ。
粉塵が舞う中現れたのは化け物。

「ゾンビ・・か?」

ックソ!!なんだよこの2メートルは超えてそうで筋肉発達し過ぎなゾンビは!!
俺は巨大ゾンビから目を離さないながらも近くにある竹刀を握る。バルコニーから逃げるにはロープを結ぶ時間が必要・・・隙をついて玄関から脱出出来るか?床は無事か?

柔らかそうな目か口奥に突きだな。

こんなのに勝てるわけがないが、外だって普通のゾンビ達がいる。竹刀は壊れるか突き刺さるかするだろうから次の武器は玄関にあるはずの傘だな。

俺は足掻く!!

そんな決意は空しく俺は巨大ゾンビの動きの速さに反応が出来なかった。
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