捻れて歪んで最後には

三浦イツキ

文字の大きさ
上 下
31 / 33
微睡みの朝

しおりを挟む
「クロエ」
「は、はい」

「彼女から申し出があってな。今日からアレクシアは正式に貴方に仕えることになった。貴方の安全を何よりも優先することを義務づけ、そのために私に背くことも許している。存分に頼ってやるといい」

 再度彼女を見上げてみると、小さなシワの刻まれた目元がこの上ない柔らかさで私を見つめていた。我が子を愛しく想う母親のような、あるいは聖母のような眼差し。私の何が彼女をこうさせるのだろう。

 もしかしたら同じ年頃の子どもがいたりして、と未だにどこかふわふわとした頭を泳がせていると、優しく手をとられる。

「よく頑張りましたね、クロエ様。これからは私が貴方をお守りいたしますわ」

 星を見つけたのかと見紛うほどに煌めいた瞳に惚れてしまった。本当に彼女は私を守ってくれるのだと思う。手練の魔術師なのか、剣の使い手なのか、はたまた暗器でも服の下に隠しているのかは知らない。
 何が彼女の強みなのかすら未だに知らないというのに、どうしてだろう、きっと頼りにして良い人間なのだと直感が告げていた。

「……はい、よろしくお願いします。アレクシアさん」

 彼女は薔薇の蕾が開くように笑った。

 そして上機嫌のままにどこからともなく取り出した櫛で私の髪を梳き、最後にもう一度顔を合わせ、手の甲に小さなキスを落として部屋から出て行った。後ほどお手製のハーブティーを届けてくれるらしい。

 私は大切な宝物を貰ったような心地でキスを落とされた方の手を、もう一方の手でそっと握りこんだ。

「お次は私の番ですね?」

 アレクシアさんが部屋から離れていくのを確認して、今度はディミトリさんがベッドの横へ跪いた。

 騎士団長でもあるらしい彼はおそらく常に防具を身に纏っているのだろう。服の下で微かに金属の擦れる音がした。

「あまりお話する機会はありませんでしたね。改めまして、ディミトリと申します。本日は少々お聞きしたいことがありまして、お答えづらいことだとは思うのですが、一言でもお言葉をいただければ」
「はい……?」

 私が答えられることなどあるだろうか。戸惑いつつも頷くと、ぱっと顔が明るくなった。彼の笑顔には太陽のような眩しさと強さがある気がする。

「旦那様との性交はどうでしたか。どれほど快感を覚えました?」
「はい……!?」

 まるで童話に出てくる王子様のような笑顔のまま放たれた言葉はあまりにも予想外で耳を疑ったものの、どうやら聞き間違いではないらしい。

 混乱しながらエリック様を見やるが、片眉をひょいと上げて返答を促すように視線を返すだけだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

傾国の聖女

恋愛
気がつくと、金髪碧眼の美形に押し倒されていた。 異世界トリップ、エロがメインの逆ハーレムです。直接的な性描写あるので苦手な方はご遠慮下さい(改題しました2023.08.15)

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

純潔の寵姫と傀儡の騎士

四葉 翠花
恋愛
侯爵家の養女であるステファニアは、国王の寵愛を一身に受ける第一寵姫でありながら、未だ男を知らない乙女のままだった。 世継ぎの王子を授かれば正妃になれると、他の寵姫たちや養家の思惑が絡み合う中、不能の国王にかわってステファニアの寝台に送り込まれたのは、かつて想いを寄せた初恋の相手だった。

慰み者の姫は新皇帝に溺愛される

苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。 皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。 ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。 早速、二人の初夜が始まった。

【完結】レスだった私が異世界で美形な夫達と甘い日々を過ごす事になるなんて思わなかった

むい
恋愛
魔法のある世界に転移した割に特に冒険も事件もバトルもない引きこもり型エロライフ。 ✳✳✳ 夫に愛されず女としても見てもらえず子供もなく、寂しい結婚生活を送っていた璃子は、ある日酷い目眩を覚え意識を失う。 目覚めた場所は小さな泉の辺り。 転移して若返った?!と思いきやなんだか微妙に違うような…。まるで自分に似せた入れ物に自分の意識が入ってるみたい。 何故ここにいるかも分からないまま初対面の男性に会って5分で求婚されあれよあれよと結婚する事に?! だいたいエロしかない異世界専業主婦ライフ。 本編完結済み。たまに番外編投稿します。

処理中です...