婚約破棄された令嬢は森で静かに暮らしたい

しざくれ

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第一王子の話

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 結局、魔女のところへ向かうのは第一王子となった。
 第二王子と違って、第一王子のルシュンは頭脳も良く多方面での器用さを兼ね備えた男だ。
 だが武力方面では頭角を見せることができず、森には万騎士が同伴することになった。


「すまないな、足手まといで」
「気にしないでください。全然足手まといなんかじゃないっすよ」


 万騎士は王子を庇うように、王子は庇われるように行動していた。
 それは魔女の住まう家屋に辿り着くまで、崩されることはなく続いた。


「今回はいない……」
「え?」
「あ、いえ、なんでもないっす」


 万騎士は美しい景色を見て、以前来た時に会ったがいないことに気づいた。黒く大きな――ドラゴンだ。
 代わりに家屋の扉が開くと黒い髪の整った男が現れた。


「なんだ貴様らは」


 男の存在に、万騎士は気配と彼が内包する莫大な魔力を見て『ドラゴン』であることに気づく。
 万騎士はルシュンに耳打ちをして、ドラゴンであることを伝える。


「突然の来訪謝罪する。だが聞いてくれ、私は王国の第一位王位継承権を持つルシュンと」
「面倒な肩書はいらん。要件を言え」
「……君に通さなければいけないのか?」
「はっ、人如きが尋ねるか」


 ドラゴンが指をポキポキと鳴らす。それは言うまでもなく戦闘態勢に入っていることを示している。
 一滴の汗がルシュンと背後にいる万騎士の額から流れた。


「国の面子もある……魔女に直接話させてくれないか」
「面子なぞ我の前では構う必要もあるまい」
「……」


 ドラゴンと第一王子の視線が交差する。


 そんな時。


「ドラゴンさんドラゴンさん、水汲みまだです……か? ってあれ。なにやってるんですか、どなたですか」


 若干の警戒心を持った魔女が扉を開き、半身だけ出した状態で第一王子や万騎士の到来を確認した。
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