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冒険者の話
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その冒険者はベテランの男だった。
だから、冒険者の中でも最も危険が多いと言われる森に足を踏み入れた。
未だ嘗てその森を制覇したものはおらず、希少な植物や魔物だっている。それらを一握りでも持ち帰れば一山の財産を築くことだってできる。
そんな淡い夢を見ていた。
地に扮する植物型の魔物。気がつけば口の中に足の半分が入っていた。
何体も何体も数える暇を与えず襲って来る猿のような魔物。気がつけば上半身に無数の噛み付かれた跡があった。
「死ぬ……のか」
朦朧とする意識の中で、男はそんなことを口にしていた。
眼前に死神が近づいているような気さえした。
けど、本当に近づいていたのは天使だったのだろう。
男は、眼が覚めると小さな小屋にいた。
無くなっていたはずの片足は元どおりになっていて、上半身の傷は塗り薬で治療されていた。
危険な森の奥で死にそうだった冒険者の男。
彼は、怪しげなガラスのビンを軽く振っている美少女に聞いた。
「俺は……おまえに救われたのか?」
男性が目を覚ましている、そのことに気がついた美しい少女がビンを机において、男に微笑んだ。
男の心が跳ねたのは、当然のことだった。
「救えたのなら、なによりです」
少女の答えにしばらく考え、男は安堵してまた眠りについた。
再び眼が覚めると、男は安全な街のそばで寝ていた。
まるで夢であったかのように。
しかし、彼の傷を癒していた塗り薬はまだ身体に付着していた。
治癒所にその塗り薬を男が見せると、『な、なんだこれは……! こんな成分見たこともない……これを調合した……? どんな技術だこれは!!!』と驚かれたのはまた別の話。
だから、冒険者の中でも最も危険が多いと言われる森に足を踏み入れた。
未だ嘗てその森を制覇したものはおらず、希少な植物や魔物だっている。それらを一握りでも持ち帰れば一山の財産を築くことだってできる。
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治癒所にその塗り薬を男が見せると、『な、なんだこれは……! こんな成分見たこともない……これを調合した……? どんな技術だこれは!!!』と驚かれたのはまた別の話。
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