婚約破棄された令嬢は森で静かに暮らしたい

しざくれ

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聖女(笑)の願い(笑)

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 聖女(笑)は勇者の元を訪れていた。それは秘かなる密談でもあった。勇者が望むものではなかった。しかし、多くの犠牲が出てしまっている状況で話し合いで解決するなら、と勇者は会うことにした。


「お久しぶりです! 勇者様!」
「……お久しぶりです」
「お元気そうでなによりです! 私もあなたに会うため元気でしたっ」
「元気そうでなにより? ……ふざけるな。今日もずっと戦いっぱなしだった。それに俺に会うために元気だったとはなんだよ。どれだけの人が死んでいると思っているんだ!」


 勇者が怒号をあげる。
 それに聖女が悲劇のヒロインぶって涙ぐむ。


「そんな、怒らないでください。私も巻き込まれただけなのです……。卑劣な魔女がいなければこんなことにはなりませんでした……」
「卑劣な魔女? ソフィアのことを言っているのか?」
「ええ! そうですとも。なぜ勇者様はあんな女のことを推すのですか! 家からも追放され、身分もなく、森に引きこもっているような、なんの役にも立たない女を……!」


 勇者は背筋を凍らせるほどの怒りを覚えた。心の底から湧き出る感情が身を身を満たして、ふつりと糸が切れたように聖女(笑)を見た。


「……役に立たない? 彼女はいるだけで癒してくれる存在だ。だれもが必要とする存在だ」
「ですが私のほうが役に立ちます! 家から選ばれた優秀な私なら……」
「優秀? 君が? 役に立つ? ……それは悪魔にとっての話か? もういい。ここで君を斬りたいが、密談でそんなことはできない。そんなことをする場ではない」


 勇者は後悔した。
 そもそも話が通じる相手ではない。時間の無駄だった。こんなことなら少しでも戦場の数を減らすために身体を使うべきだったのだ。


「では……では魔女を選ぶというのですね!? ……いいでしょう。後悔させてあげます。泣いて媚びても容赦はしませんから!」


 聖女はそう吐き捨ててその場を去った。
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