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00:僕はガイコツでした
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ある晴れた秋の日の朝、朝日が昇り街を照らし始めるころに、僕は死んだ。
僕の命をつなぐ機会が狂ったように鳴り響く中、看護師と医師がせわしなく動き、何とか僕の命をつなごうと動き回るのを感じながら、意識が遠のいていった。
前の日の深夜、僕を診に来た医師が難しい顔をしていたのを見て、僕はもうダメかなと思った。
医師が部屋の外に出て、遠くに住む父の携帯に電話しているのが聞こえてきた。家族全員で今から来るらしい。車で8時間はかかる距離にいるので、着くのは明日の朝だろう。僕はそこまで持つだろうか。
毎日僕を看ている母は今は借りているウィークリーマンションに戻って休んでいる。何度電話してもかからないらしい。多分、寝ているから気づいていないのだろう。入院してから9か月、毎日僕の面倒を見ているのだからもう疲れているはずだ。ゆっくり休んでほしい。
僕は入院してからずっとICUにいて様々な点滴や機械につながれていたけれど、最近やっと人工呼吸器だけは外せるようになったし、流動食も食べられるようになった。病気で全身の臓器がやられて排泄もできなかったけれど、少しずつできるようになってきていた。
なのに……なのに、この間受けた検査で脳に何か大きな塊があるのが見つかった。何かはわからない。何か腫瘍かもしれないし、血管が詰まっているのかもしれない。調べたいが、調べようにも僕はガイコツだから、体力も気力もなくて、原因を取り除くのも、まして調べることもできないのだ。
その塊が破裂した。
頭の中で何か広がるような感覚がし、だんだん全身がだるくなって、目の前が真っ黒になった。
僕が最期に見たのは、せわしなく動き回る看護師や医師、祈る母。
そしてなぜか、まだ病院にいない義理の母や二人の妹、泣きながら飛行機を待つ姉に、涙をこらえて運転をする父の姿だった。
――ごめんね。
声に出せない思いを抱えながら、ついに僕は黒い闇の中に取り込まれてしまった。
40歳、良く晴れた朝日の昇るときのことだった。
僕の命をつなぐ機会が狂ったように鳴り響く中、看護師と医師がせわしなく動き、何とか僕の命をつなごうと動き回るのを感じながら、意識が遠のいていった。
前の日の深夜、僕を診に来た医師が難しい顔をしていたのを見て、僕はもうダメかなと思った。
医師が部屋の外に出て、遠くに住む父の携帯に電話しているのが聞こえてきた。家族全員で今から来るらしい。車で8時間はかかる距離にいるので、着くのは明日の朝だろう。僕はそこまで持つだろうか。
毎日僕を看ている母は今は借りているウィークリーマンションに戻って休んでいる。何度電話してもかからないらしい。多分、寝ているから気づいていないのだろう。入院してから9か月、毎日僕の面倒を見ているのだからもう疲れているはずだ。ゆっくり休んでほしい。
僕は入院してからずっとICUにいて様々な点滴や機械につながれていたけれど、最近やっと人工呼吸器だけは外せるようになったし、流動食も食べられるようになった。病気で全身の臓器がやられて排泄もできなかったけれど、少しずつできるようになってきていた。
なのに……なのに、この間受けた検査で脳に何か大きな塊があるのが見つかった。何かはわからない。何か腫瘍かもしれないし、血管が詰まっているのかもしれない。調べたいが、調べようにも僕はガイコツだから、体力も気力もなくて、原因を取り除くのも、まして調べることもできないのだ。
その塊が破裂した。
頭の中で何か広がるような感覚がし、だんだん全身がだるくなって、目の前が真っ黒になった。
僕が最期に見たのは、せわしなく動き回る看護師や医師、祈る母。
そしてなぜか、まだ病院にいない義理の母や二人の妹、泣きながら飛行機を待つ姉に、涙をこらえて運転をする父の姿だった。
――ごめんね。
声に出せない思いを抱えながら、ついに僕は黒い闇の中に取り込まれてしまった。
40歳、良く晴れた朝日の昇るときのことだった。
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