雨の境界

ちさめす

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雨の境界線

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(七月)

 雨の降る日、私は家を飛びだした。

 傘は持ってこなかったので着慣れた黒いシャツはすぐに肌に張りついた。

 私は全速力で走りながら空を見上げた。明るい青の空には、突如として現れた積乱雲がどす黒く漂っていた。

 雷がゴロゴロと鳴り風が吹き荒れる。この時だけは夏のうだるような暑さはなかった。

 家の裏側にある山に入ると、道は塗装された道路から一転して草木が生い茂る山道へと変わった。雨もひどくなり足場には水路ができている。ぬかるんだ地面に足を滑らせながらも咄嗟に手をつくことで転倒を避ける。

 そうして私は通い慣れたこの道をひたすらに駆け抜けた。

 ◇

 頂上に着いた。

 私は突風で吹き飛んでくる枝や葉を腕で防ぎながら目の前の景色を眺めた。

 そこには雲から豪雨が降り注いでいるこちら側の世界と、雲の切れ目から日が差す向こう側の世界とに分かれていた。

 幻想的なその光景に私は目を輝かせる。

「やっと見えた……やっと……雨の境界線……やっと見えたよ!」

 私は振り向いてそう叫んだ。やっと見つけたと教えるように。

 だけど、周りには誰もいなかった。

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