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旅立ちの前日③

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お待たせしました。と店員がパフェと紅茶を持ってきた。
振り向くと店員の横には同じ服装の男が立っていた。

「ようニマ。さっきはありがとう。ニマのおかげでほんと助かったよ。それとこれはサービスだ」

男はテーブルに超特大のパフェを置いた。

「店主~~~!分かってるねえあんたああ!」

目を輝かせたニマはパフェを食べ始めた。

店員は僕とロイの前に紅茶を置いた。

「お代もまけておくよ」
「ありがとう店主~!」

「いやいや感謝するのはこっちだよ。さっきの魔物の大群に町はぼろぼろにされただろう?この店も魔物に襲われそうになったんだけど、ニマが助けに来てくれたんだ。おかげでうちの店は被害がなくて今もこうやって店をやれてんだ。これぐらいどうってことないよ」

店主は広場の方を見た。

僕も同じように広場の方を見ると、崩れた建物や道の片隅にあるがれきの山に目に止まった。

「この町に魔物が侵入するなんて初めてだよ。まったくこの先どうなることやら」

店主がそう言った後、別の席のお客が呼びかけたのを聞き、店員がそちらに向かった。
店主もゆっくりしていきなと言い残し店の中へ戻っていった。

「しかしまあ、今回の件ニマの活躍が大きかったのは確かだ」

ロイは紅茶を飲みながら超特大のパフェを半分程食べていたニマを褒めた。

「シールドレインとして当然のことをしたまでだよ」

口元にクリームをたくさん付けたまま微笑むニマに、僕はもう一度ありがとうと伝えた。

「いえいえハル様。どういたしまして」
「ハル様だって?」

そう言ったニマは、ロイの言葉を無視して、紅茶のカップに添えた僕の手の上にそっと両手を置いてきた。

「もしもまたハル様が襲われそうになれば急いで駆けつけますから、どうぞご安心くださいましてよ」
「え?ニマさん?えっとあ、ありがとうございます」

急なニマのアプローチにたじろぎながらも僕は感謝した。

そんなキラキラと目を輝かせて僕を見つめるニマに、ロイは紅茶を飲みながら穏やかに諭した。

「駆けつける前にまずはお口を拭かないとね」

すごい形相でロイを睨むニマ。
そんな2人を見て僕は笑った。

「ほんとロイは空気読めないわね!」

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