上 下
14 / 16

旅立ちの前日②

しおりを挟む
僕はニマに身体を向けて挨拶する。

ニマのものすごい早さで動いていた口が止まる。

「ハル?ロイが担当しているあのハル?あなたがあのハルですか~?あれれ、わがままで巨大でビッグなお腹のおぼっちゃまじゃなかったの?」
「そういやハルに会うのは初めてだったな。それにしても一体どんなイメージをしていたんだよ」

「飲み仲間で集まる時、よくハルの話をするじゃない!しかしまあ私のスーパーな推理も完璧ではなかったということね。なんかショック~」
いやいや何でそうなる、とロイは苦笑いしている。

「あれそういえば!」

ニマは言葉を続ける。

「この人さっきの一件で、この裏路地の先で襲われてた人じゃない?」

僕たちが通って来た裏路地を指すニマ。

「そうだよニマ!あの時は本当に助かったよ、ありがとう。なあハル、俺たちが魔物に囲まれたあの時に駆けつけてくれたシールドレインはニマなんだ。ちゃんと感謝しておくんだぞ」

「そうなんですね。あの時は助けて下さり本当にありがとうございました、ニマさん」

僕は感謝の気持ちを込めてにっこりと微笑んだ。

「ど、どういたしまして・・・」

この時、ニマの頭の中ではものすごいスピードで情報の処理がなされていた。

(私はハルという人物について勘違いをしていた?いやいや私ともあろうものが勘違いをするはずがないわ。恐らく私のスーパーな推理が外れたのは・・・彼が変わったんだわ!私が間違えるわけないもの。そうに違いないわ!でも、何故彼は変わろうとしたのかしら?・・・一つしかないじゃない。私に会うためよ。ああ!なんて健気なんでしょう!その気持ちに応えてあげないのは失礼ね。それにしても、ルックスも悪くないしよくみるとイケメンね。ロイのこれまでの情報を整理すると、ハルは領主の息子だったわね。つまり・・・ぬふふ。領主の息子なら資産もたんまり。もしも結婚をすればあの白城は私のお城になるのね!ああ!なんて最上の玉の輿なのかしら・・・にひゃひゃひゃひゃひゃ)

ニマが何かを企んでいることは僕でも分かった。
そんなニマにロイが尋ねる。

「ニマ、どうした?食あたりか?」
「うるさい!まだ何も食べとらんわ!」

しおりを挟む

処理中です...