使える魔法はセーブとロードとリセットです。

ちさめす

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窮地①

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この町は円形に造られており、町中央は大きな丸型の噴水を中心とした広場になっている。
その広場のすぐ南側に位置した病院の入口からは広場全体を見渡せる為、病院から出た僕たちは広場の状況が一目で分かった。

火の手が上がっている建物も少なくは無く辺り一面を灰色の煙で覆っており、広場では悲痛な叫び声を上げながら人々が逃げ惑っている。
彼らの後ろには威嚇するように吠え唸りながら追いかける狼を多く確認出来る。

病院から出た僕はロイの先導を受けながら左回りに広場を走っていた。

「ハル、領主館は町の北側にあるがこの広場を突っ切るのは危険だ。あの裏路地を抜けるぞ」

広場を西側から出た僕たちはデットエンドという看板を出した居酒屋を横切り裏路地へ入る。

「思ったより状況は最悪だな」

走りながらロイが言った。

「この町にはゲートの恩恵で魔物は侵入出来ないはずなんだ」
「ゲートって?」

「町に入る時に城壁を見ただろう?あの城壁には魔除けの術式が作用してあるんだ。これまで一度だって破られたことは無かった」
「そのゲートってのはどうなると破られてしまうんだ?」

「直接城壁が攻撃されて壊されるか領主館で展開している包囲陣が崩されるとゲートの効果は失われてしまうらしい」

そう言ったロイは咄嗟に声を荒げた。

「もしかしたら、領主館も既に襲撃されているのか!」
「とにかく領主館へ急ごう」

僕たちは走り続けた。

突然、これから通るであろう少し先の裏路地にがれきが沢山降ってきた。
横の建物が崩れており2階の部分がむき出しとなっている。

そこから2匹の狼がこちらを見下ろしているのが見えた。
僕たちはがれきの手前で足を止める。

「ロイ、これってまずい状況じゃないか」
「ああ、まずい状況だ。ひとまず引き返すぞ!」

振り返ってまた走り出そうとするが、そこには別の狼がこちらを睨みつけていた。

「ロイ、これって非常にまずい状況じゃないか」
「ああ、非常にまずい状況だ」

額から汗が流れる。
下手に狼を刺激しないように身体を硬直させて視線だけで辺りを見回すが、これといった避難経路や打開策となるようなものは見つからなかった。

2階から僕たちを見下ろしていた2匹の狼は、がれきの山に飛び移りゆっくりと間合いを詰めてくる。

「万事休すか」
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