使える魔法はセーブとロードとリセットです。

ちさめす

文字の大きさ
上 下
5 / 16

窮地①

しおりを挟む
この町は円形に造られており、町中央は大きな丸型の噴水を中心とした広場になっている。
その広場のすぐ南側に位置した病院の入口からは広場全体を見渡せる為、病院から出た僕たちは広場の状況が一目で分かった。

火の手が上がっている建物も少なくは無く辺り一面を灰色の煙で覆っており、広場では悲痛な叫び声を上げながら人々が逃げ惑っている。
彼らの後ろには威嚇するように吠え唸りながら追いかける狼を多く確認出来る。

病院から出た僕はロイの先導を受けながら左回りに広場を走っていた。

「ハル、領主館は町の北側にあるがこの広場を突っ切るのは危険だ。あの裏路地を抜けるぞ」

広場を西側から出た僕たちはデットエンドという看板を出した居酒屋を横切り裏路地へ入る。

「思ったより状況は最悪だな」

走りながらロイが言った。

「この町にはゲートの恩恵で魔物は侵入出来ないはずなんだ」
「ゲートって?」

「町に入る時に城壁を見ただろう?あの城壁には魔除けの術式が作用してあるんだ。これまで一度だって破られたことは無かった」
「そのゲートってのはどうなると破られてしまうんだ?」

「直接城壁が攻撃されて壊されるか領主館で展開している包囲陣が崩されるとゲートの効果は失われてしまうらしい」

そう言ったロイは咄嗟に声を荒げた。

「もしかしたら、領主館も既に襲撃されているのか!」
「とにかく領主館へ急ごう」

僕たちは走り続けた。

突然、これから通るであろう少し先の裏路地にがれきが沢山降ってきた。
横の建物が崩れており2階の部分がむき出しとなっている。

そこから2匹の狼がこちらを見下ろしているのが見えた。
僕たちはがれきの手前で足を止める。

「ロイ、これってまずい状況じゃないか」
「ああ、まずい状況だ。ひとまず引き返すぞ!」

振り返ってまた走り出そうとするが、そこには別の狼がこちらを睨みつけていた。

「ロイ、これって非常にまずい状況じゃないか」
「ああ、非常にまずい状況だ」

額から汗が流れる。
下手に狼を刺激しないように身体を硬直させて視線だけで辺りを見回すが、これといった避難経路や打開策となるようなものは見つからなかった。

2階から僕たちを見下ろしていた2匹の狼は、がれきの山に飛び移りゆっくりと間合いを詰めてくる。

「万事休すか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

処理中です...