教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

文字の大きさ
上 下
129 / 131
第7章 土の大龍穴編

125 シルスの工房

しおりを挟む
 氷竜を討伐したあと、ルシアにファイアーストームの使い方を教えてもらった。この魔法は広範囲に高威力の攻撃ができるのがとても便利だ。魔力貯蔵量が多くなったらクイーンサンドワームも燃やし尽くせるかも知れないな。

 そして今は魔法の訓練を終えて、シルスさんの住居に向かって飛んで帰っているところだ。

 それにしてもルシアはすごかった。あの魔力の扱い方はすごすぎた。でも、全然本気で戦ってる様子じゃなかったから、ルシアにとっては何でもないことなんだろう。
 今までの修行で僕が戦ってるときに、ルシアは空中に浮かんで見てるだけだったけど、ルシアが少しでも手を出したら全く僕の修行にならないね。それにルシアが見てるところで戦うのはとんでもなく安全な環境だってことがよく分かったよ。ルシアに感謝だね。

「ルシア、修行を付けてくれてありがとうね」
『ふん。今さらお礼を言われることでもないわ。我は教えるのが好きであるし、お主は覚えるのが早いからこちらも面白い。これからもどんどん課題を叩きこんでいくゆえ、楽しみにしていろ』
「うん。分かったよ。まずはルシアの背中が見えるところを目指して見るよ」
『フハハハハ! その意気だ! 背中が見えたら、早く追いついて来い!』

 よし! 気合いを入れて頑張らなくちゃ!

 僕は改めて今の状況に感謝して、修行に打ち込むことを決意した。



「お~い! ルシア様とレンにいちゃ~ん!」

 シルスさんの住居の上空に着くと、下でカノアくんが手を振って待っているようだ。

「じいちゃんがルシア様たちが帰って来そうって言うから外に出てみたら、遠くの空から飛んで来てたから待ってたんだ。レンにいちゃん、こんなに早く氷竜を倒したの?」
「うん。と言っても僕は倒せなかったから、ルシアが倒したんだけどね」
「やっぱりルシア様はすごいや! でも氷竜と戦えるレンにいちゃんもすごいよ!」
「ありがとう。僕も氷竜を倒せるくらい強くなれるように頑張るよ」

 出迎えてくれたカノアくんと一緒に、シルスさんが作業をしている工房に向かった。

「自宅はこんなに広い工房につながってたんだね!」

 自宅から入って奥の方に行くと、かなりの広さの工房があり、シルスさんが家具を作っていた。今、作っているのはベッドのようだ。

『シルスよ。氷竜の魔石を取ってきたぞ。これならどうだ』

 ルシアは収納空間から魔石を取り出し、目の前にある机に置いた。

「ガハハハッ! 間違いなく氷竜の魔石ですな! こんなにも早く取ってこられるとは高ランクハンターどもが腰を抜かしますぞ。これなら期待以上の物を作れそうですな!」

 シルスさんが氷竜の魔石を手にとって、光に照らしたり、魔力を流したりしていじっている。シルスさんは魔道具作りも出来そうだな。

「ところでルシア。ルシアがシルスさんに依頼しているものってなんなの?」

 ルシアが何を作ってもらうのか聞いていないんだよね。特殊個体の魔石が必要なものって一体なんなのだろう。

『うん? 言っておらんかったか? 我がシルスに製作を依頼しておるのはログハウスだ。いつも泊まっているログハウスがあるだろう? あれを更に快適に過ごせるように改良した最高のログハウスだ』
「ログハウスを作ってもらってたの!? 魔石って空調とかに使うためにいるってこと?」
『その通りだ。常時、最適な温度、湿度に調整された空間。広い浴槽が付いた風呂場。多数の機能がついたトイレ。そのほかにも快適に過ごせる工夫が盛りだくさんのログハウスなのだ』

 今のログハウスもすごく快適だと思うんだけど、それよりすごいログハウスってどんなのだろう? 僕までワクワクした気持ちになってきたよ!

「それではルシア様。儂はこの魔石を使って仕上げに入りますぞ。1週間もあれば完成させてみせます。昼食はそこにシチューを作っておりますので、ご自由にどうぞ。それではカノア、仕上げにかかるぞ!」
「はい!」

 シルスさんとカノアくんはそのまま部屋の奥に移動すると、シルスさんが徐に床を触った。あ! 床が開いたぞ! どうやら地下に下りる階段があるみたいだ。2人がその階段を下りて行くと、床は元の状態に戻った。

「この工房って地下もあるんだね!」
『ああ。シルスが土魔法で作った地下室があるのだ。重要な物なんかはそこで作ってることが多いな。普通ならログハウスは大きいゆえ、この部屋か屋外で作るのだろうが、完成したら我が収納空間に入れるから地下で作っても大丈夫だと伝えていたのだ。ふむ。シルスは作業に没頭すると全てを遮断して製作に集中するからな。1週間は地下から出てこないだろう。このシチューを食べたあとはお主の修行の時間にしよう。さあ、いただくとしよう』

 そう言うとルシアは熱々のシチューを深い皿にたっぷり入れて美味しそうに食べ始めた。

 ルシアはマイペースだな。それじゃあ僕もシチューをいただいて気合いを入れて修行しますかね。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

終了し強制力の無くなった乙女ゲームの世界の悪役令嬢のその後…

クロノス
恋愛
私はよくある異世界に転生した元日本人で社会人だった。仕事の帰り道によくあるトラック事故にて呆気なく死んでしまった/(-_-)\ まさかの転生先が前世で何度もプレーする程大好きだった乙女ゲームの中の悪役令嬢になっていた。 私の前世の推しである悪役令嬢になるなんて~ 攻略対象者?ヒロイン?知りません! って思ってたらヒロインめちゃくちゃウザイし攻略対象者もめちゃくちゃウザイ… 強制力やっぱりあるし( ・᷄ὢ・᷅ ) 強制力あっても何とか逞しく乗り切ろうとする悪役令嬢に転生した私の物語 女神の愛し子の私に冤罪って… って何故かどんどん話のスケールがでかくなってませんか!? ゆるふわ設定です! 頭をラフにしてお読み下さい(*^^*)

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...