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第6章 怨恨渦巻く陰謀編
105 水の大龍穴で食事会
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「さあ、夕食の用意ができました! ルシア様に喜んでもらえるように心を込めてお作りしました。どうぞ、お召し上がりください」
アクアがルシアを見つめながら挨拶をする。
テーブルにはサラダや鶏を焼いたもの、魚の蒸し焼きやパスタなど色とりどりの料理が所狭しと並べられている。好きなものをどんどん取って食べていいらしい。
とは言っても、ルシアの横にはアクアが座っていてルシアが食べたいものを取ってあげてるけど。これがやりたかったんだろうな。
「レン様、お好きなものをお取りしましょうか?」
僕の隣に座っているのは、クリスタ王女だ。
「いえいえ。王女様に取っていただく訳には参りません。僕がお取りします。王女様は何がお好きですか?」
次期女王のクリスタ王女に取ってもらうなんてまずいでしょ。
「レン様、よろしいでしょうか」
「はい。何でしょうか」
「私は大変ありがたいことに、明日からルシア様とレン様の旅に同行させていただきます」
「はい。承知しております」
「ルシア様がおっしゃられていました。私はレン様の妹弟子のようなものだと」
「ええ……。ルシアはそう言ってましたね。僕が教えられることはしっかりお教えします」
「ということはです。レン様は私にとってルシア様と同じく先生になります。ですから、私に遠慮なさるのは止めてください。私のことはクリスタとお呼びいただいて、敬語も必要ありません。指導される際に余計な壁は必要ないと思います」
「ですが、ネイスエルの王女様なのですよ? それに女性に年齢のことは申し上げにくいですが年上ですし……」
「私は人族の方々よりも遥かに長命な人魚です。4歳なんて年の差は、有って無いようなものです。それにネイスエルの王女と言われますが、どの国の王族であっても、龍族の方々とこのように接することを許される方なんて存在しません。レン様はそれだけ特別な方なのですよ」
「そうなのでしょうか……」
う~ん。ルシアやアクアが特別な存在と言うのは重々理解しているけど、僕が特別だと言われても実感が湧かないんだよな。
「レン殿、……いやレン様じゃな。妾たちにとってアクア様は神様も同然。そしてそのアクア様が敬愛するのがルシア様じゃ。そのお二人と気安く接する存在が特別ではないのなら、何を特別と言えばいいのじゃ? そもそもそなたはネイスエルの貴族ではないのじゃから、妾と君臣の関係にあるわけでもないのじゃ。クリスタの言う通りではないかえ」
女王様もクリスタ王女と同じ考えか。
「だから言ったでしょ。バランスが大事だって。あなたの魔力操作は人間界でトップクラス。ルシア様がクリスタに指導するように言われるのも当然よ。そしてそんな人から教わるクリスタの立場も考えなさいよ。敬って接して来られてもやりにくいじゃないの。立場が気になるのなら、人間界の肩書が必要な場とそうでない場を分けて考えることね」
……アクアの説明が心に響く。相手の立場を考えるか。大事なことだな。
「ありがとうアクア。よく分かったよ。そしてクリスタ。明日からの旅では僕の修行方法も説明するから頑張ろうね。あとは女王様。レン様は止めてください。流石に女王様からレン様と呼ばれるのは違和感がありすぎです。今まで通りでお願いします」
「……分かったのじゃ。元に戻すのじゃ」
ふう。これでOKかな。
「はい。それではレン様のお好きなものを教えてください。お取りしますので」
「ありがとう。といっても僕は嫌いなものが無いんだよね。色々と少しずつ食べてみたいな」
「はい! それではお取りしますね!」
クリスタから取ってもらった料理はどれもめちゃくちゃ美味しかった。アクアがメインで作ったそうだけど、女王様に習ってるだけあってプロの料理人顔負けの美味しさだ。
ちなみにクリスタは肉が嫌いなわけじゃないけど、野菜と魚が大好きってことだから僕が美味しそうなものを選んで取り分けた。
クリスタも手伝ってるときに味見はしたそうだけど、「すごく美味しいです!」って感動してたね。
ルシアは相変わらず黙々とバクバクと食べてる。すごく美味しそうに食べるもんだから、隣のアクアがうっとりとルシアを見ている。本当に好きなんだって分かるよ。
ウェンディたちもお行儀良く食べてるけど、食べてる量はものすごい。特にリアナがすごく食べてるね。僕の修行に付き合ってくれたからお腹が空いてたのかも。
最後にアクアとクリスタが一緒に作ったというフルーツタルトを食べた。
クリスタのデザートはものすごく美味しいね! クリスタのセンスが光る一品だと思うよ。
そうして食事会も終わり、女王様とクリスタは王宮へと戻っていった。
『アクアよ。今日の夕食には大変満足したぞ。お主の料理の腕は随分と上がったな』
「ありがとうございます!! また来ていただけるように新しい料理も覚えておきますので、是非お越しください!」
ルシアに会うために美味しい料理を作れるようになるのって効果的だよな。ルシアは美味しいものに目がないんだから。
「それと、ルシア様。今日は大浴場を花の香りで満たして、リラックスできるように整えております。是非、疲れを癒してください」
『おお、そうか。それは楽しみだな。レンよ。言葉に甘えて風呂に浸かるとしよう』
アクアたちに見送られて、ルシアと僕は神殿の奥の大浴場に向かった。
――それがあんな出来事になるとは気付いていなかった。
アクアがルシアを見つめながら挨拶をする。
テーブルにはサラダや鶏を焼いたもの、魚の蒸し焼きやパスタなど色とりどりの料理が所狭しと並べられている。好きなものをどんどん取って食べていいらしい。
とは言っても、ルシアの横にはアクアが座っていてルシアが食べたいものを取ってあげてるけど。これがやりたかったんだろうな。
「レン様、お好きなものをお取りしましょうか?」
僕の隣に座っているのは、クリスタ王女だ。
「いえいえ。王女様に取っていただく訳には参りません。僕がお取りします。王女様は何がお好きですか?」
次期女王のクリスタ王女に取ってもらうなんてまずいでしょ。
「レン様、よろしいでしょうか」
「はい。何でしょうか」
「私は大変ありがたいことに、明日からルシア様とレン様の旅に同行させていただきます」
「はい。承知しております」
「ルシア様がおっしゃられていました。私はレン様の妹弟子のようなものだと」
「ええ……。ルシアはそう言ってましたね。僕が教えられることはしっかりお教えします」
「ということはです。レン様は私にとってルシア様と同じく先生になります。ですから、私に遠慮なさるのは止めてください。私のことはクリスタとお呼びいただいて、敬語も必要ありません。指導される際に余計な壁は必要ないと思います」
「ですが、ネイスエルの王女様なのですよ? それに女性に年齢のことは申し上げにくいですが年上ですし……」
「私は人族の方々よりも遥かに長命な人魚です。4歳なんて年の差は、有って無いようなものです。それにネイスエルの王女と言われますが、どの国の王族であっても、龍族の方々とこのように接することを許される方なんて存在しません。レン様はそれだけ特別な方なのですよ」
「そうなのでしょうか……」
う~ん。ルシアやアクアが特別な存在と言うのは重々理解しているけど、僕が特別だと言われても実感が湧かないんだよな。
「レン殿、……いやレン様じゃな。妾たちにとってアクア様は神様も同然。そしてそのアクア様が敬愛するのがルシア様じゃ。そのお二人と気安く接する存在が特別ではないのなら、何を特別と言えばいいのじゃ? そもそもそなたはネイスエルの貴族ではないのじゃから、妾と君臣の関係にあるわけでもないのじゃ。クリスタの言う通りではないかえ」
女王様もクリスタ王女と同じ考えか。
「だから言ったでしょ。バランスが大事だって。あなたの魔力操作は人間界でトップクラス。ルシア様がクリスタに指導するように言われるのも当然よ。そしてそんな人から教わるクリスタの立場も考えなさいよ。敬って接して来られてもやりにくいじゃないの。立場が気になるのなら、人間界の肩書が必要な場とそうでない場を分けて考えることね」
……アクアの説明が心に響く。相手の立場を考えるか。大事なことだな。
「ありがとうアクア。よく分かったよ。そしてクリスタ。明日からの旅では僕の修行方法も説明するから頑張ろうね。あとは女王様。レン様は止めてください。流石に女王様からレン様と呼ばれるのは違和感がありすぎです。今まで通りでお願いします」
「……分かったのじゃ。元に戻すのじゃ」
ふう。これでOKかな。
「はい。それではレン様のお好きなものを教えてください。お取りしますので」
「ありがとう。といっても僕は嫌いなものが無いんだよね。色々と少しずつ食べてみたいな」
「はい! それではお取りしますね!」
クリスタから取ってもらった料理はどれもめちゃくちゃ美味しかった。アクアがメインで作ったそうだけど、女王様に習ってるだけあってプロの料理人顔負けの美味しさだ。
ちなみにクリスタは肉が嫌いなわけじゃないけど、野菜と魚が大好きってことだから僕が美味しそうなものを選んで取り分けた。
クリスタも手伝ってるときに味見はしたそうだけど、「すごく美味しいです!」って感動してたね。
ルシアは相変わらず黙々とバクバクと食べてる。すごく美味しそうに食べるもんだから、隣のアクアがうっとりとルシアを見ている。本当に好きなんだって分かるよ。
ウェンディたちもお行儀良く食べてるけど、食べてる量はものすごい。特にリアナがすごく食べてるね。僕の修行に付き合ってくれたからお腹が空いてたのかも。
最後にアクアとクリスタが一緒に作ったというフルーツタルトを食べた。
クリスタのデザートはものすごく美味しいね! クリスタのセンスが光る一品だと思うよ。
そうして食事会も終わり、女王様とクリスタは王宮へと戻っていった。
『アクアよ。今日の夕食には大変満足したぞ。お主の料理の腕は随分と上がったな』
「ありがとうございます!! また来ていただけるように新しい料理も覚えておきますので、是非お越しください!」
ルシアに会うために美味しい料理を作れるようになるのって効果的だよな。ルシアは美味しいものに目がないんだから。
「それと、ルシア様。今日は大浴場を花の香りで満たして、リラックスできるように整えております。是非、疲れを癒してください」
『おお、そうか。それは楽しみだな。レンよ。言葉に甘えて風呂に浸かるとしよう』
アクアたちに見送られて、ルシアと僕は神殿の奥の大浴場に向かった。
――それがあんな出来事になるとは気付いていなかった。
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