教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

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第6章 怨恨渦巻く陰謀編

98 解呪①

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 アマンダさんを捕らえて宰相様に引き渡した僕たちはルシアの別荘に戻ってきていた。

「ふぅ~。無事に捕まえられてよかったよ。あとは宰相様たちにお任せしたけど、アマンダさんは質問に答えてくれるのかな。……そういえばルシアもいくつか疑問があるみたいだったけど、それって何が気になってるの?」

 僕はルシアの疑問が気になって尋ねてみた。

『そうだな。いくつがあるのだが、まずはアマンダはなぜ呪術が使えるのかということだ。呪術はオスカーグラム大陸の一部の者にしか伝承していない。それをなぜ使えるのかというのが一つ。そして王女を狙うのにもっともらしい妬みの感情をぶつけておったが、果たして呪いをかけるほどの恨みに昇華されるものなのか? また、呪術に必要な触媒を自分で用意できるものなのか? 以前も言ったが王女も人魚。精神耐性が強い人魚に呪いをかけるためには、質の高い触媒を継続的に集める必要がある。それを一人でできるとは思えないな』
「ルシア! それって……」
『ああ。やはり単独犯ではあるまい。少なくとも協力者がいる。もしかしたらそいつこそが黒幕かも知れんな』

 そうなのか……。協力者がいるとしたら、アマンダさんを捕まえたら終わりって訳にはいかないな。
 あのとき触媒として持っていたのは人間の頭蓋骨だった。そしてルシアの話だと人魚に使う触媒にはある程度の質と量が必要。ということは、アマンダさんは戦いに向いてるとは言えないから、それを調達してた誰かがいるってことか。

『レンよ。ここから先はベルスたちの仕事だ。我々はもう一つの約束を守るために明日9時に王宮に行くまで。それで我々のやれることは終わりだ』

 アマンダさんを引き渡したあとに宰相様と話をして、当初の予定と同じように、明日、王宮に行く約束をしたんだよね。

「ルシア、もう一つの約束というのはクリスタ王女の……」
『呪いを解くことだ』

 僕たちは明日に備えて休むことにした。クリスタ王女の呪いを解くために。



 翌朝の9時、王宮に着いた僕たちは、門のところで出迎えてくれた警備隊の人に案内されて謁見の間へと通された。
 この部屋に来るのは2回目だけど、あのときルシアが王宮を壊してなくて本当に良かったよ……。

「ルシア様、レン殿、昨晩は本当に助かったのじゃ。この国を代表して、またクリスタの母として、心からお礼を申し上げたい。本当にありがとうございました」

 女王様がルシアと僕の顔を見つめて頭を下げる。周りに控えられている宰相様を始めとして、警備隊長のガレオス伯爵たちも一斉に頭を下げる。最初に来たときとは全然違う対応に少しビックリするよ。

 女王様の横で頭を下げられていたクリスタ王女が前に出てくる。

「ルシア様、レン様、昨晩の話は女王と宰相より聞きました。本当にありがとうございます」

 改めて王女様からお礼を述べられる。

『犯人は捕まえたが、まだ肝心のお主の呪いが解けておらぬ。礼を言うのならそのあとでないとスッキリせんな』

 ルシアが少し微笑んで王女様に答える。ルシアが解呪を始めるかも知れないな。その前に一つだけ聞いておこう。

「1つだけお聞きしたいんですが、アマンダさんはどうなったのでしょうか?」

 するとガレオス伯爵が前に出てきた。

「そのお尋ねには某がお答えしましょう」

 ガレオス伯爵は警備隊長だったよね。こういう担当は伯爵なんだろうな。だからこの場に呼ばれてるんだろうし。

「貴殿たちの活躍によりアマンダは捕縛され、現在は牢獄にて尋問中でございます。
 今のところ協力した者などについては確認出来ておりません。しかし、呪術を使える理由は判明しました。
 父親がアステロ=ブロンテス神聖国の者であり、呪術を継承する集落の住民でした。アマンダは父親から呪術を学んだことを自慢するかのように供述しております」

 なるほど。ルシアの話と一致するね。アステロ=ブロンテス神聖国はオスカーグラム大陸にある宗教国家だ。

 父親が神聖国にいるという呪術を受け継ぐ一部の者に該当するのなら、アマンダさんが習っていてもおかしくはないね。

「姉君のクレアレインは今から約10年前に当時成人したばかりのアマンダを連れてきたのじゃ。それまでは父親が育てていたのじゃが、病気で亡くなったためネイスエルに連れてきたと説明しておった。ということは、16年間は父親の元にいたのじゃろう。呪術を習っていても何ら不思議ではないのじゃ」

 そうなるよね。本人の供述とクレアレインさんの説明が正しいのであれば、呪術を使える理由はこれで分かったね。あとは協力者が不明というのが問題か。

「状況を教えていただきありがとうございます」

 とりあえず僕が知りたいことは聞けたな。

『協力者の存在についてはそちらの調査に任せるとして、王女の呪いについて説明をさせてもらいたい』

 ルシアがそう述べると、全員がルシアの方を注目して話を聞く。

『呪いを解くためには解呪の魔法を使う必要があることは以前説明したな。――しかし我は解呪の魔法を使うつもりはない』

 えっ? 一体何を言い出すの?

 この場にいるみんながルシアの発言に疑問を浮かべて、話の続きを待つのであった。
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